中小企業必見👀業務改善助成金💴
これまで業務改善の手法を中心にお伝えしてきましたが、今回は資金面でサポートが受けられる「業務改善助成金」制度を紹介します。厚生労働省が提供するこの制度は、一定の要件を満たせば、業務改善費用の一部を助成してもらえるお得な制度です。中小企業の皆様にとって、知っておいて損はない情報だと思いますので、ぜひご確認ください。
制度概要
「業務改善助成金」制度は、生産性向上と賃金引上げに取り組む中小企業・小規模事業者を支援するものです。具体的には以下のような取り組みが対象となります。
生産性向上のための設備の導入
業務改善のためのコンサルティング
人材育成のための研修
これらを実施し、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、設備投資などの費用の一部が支給されます。事業場内最低賃金の引き上げ額・賃金を引き上げる労働者の人数・事業場規模によって、助成上限額は異なります。
▼公式サイト
公式サイトの説明は少し読みづらいかもしれません。制度の全体像を把握するには、公式の解説動画がおすすめです。視覚的にわかりやすく説明されているので、まずはこちらをご覧になってから公式サイトを読むと理解しやすいです。
利用の注意点
「業務改善助成金」制度利用にあたって、特に注意が必要な5点をお伝えします。
対象事業者の条件:事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差が50円以内の企業が対象です。賃金水準が低い企業ほど助成率が高く、恩恵を受けやすい制度設計になっています。
賃金引上げ計画の順序:まず賃金引上げ計画を立て、その後に申請を行うのが原則です。賃金引上げ後の申請では対象外となる可能性があるので注意しましょう。
設備投資のタイミング:交付決定通知を受け取る前に設備の納品や経費の支出を行うと、助成金を受けられません。必ず交付決定後に実施しましょう。
事業完了期限:事業完了は、原則として交付決定の属する年度の1月31日までです。やむを得ない事由がある場合は、3月31日まで延長できる可能性がありますが、事前に所轄労働局長の承認が必要です。
実績報告と状況報告の義務:事業完了後は速やかに実績報告を行う必要があります。また、状況報告は以下a,bのいずれか遅い日から1か月以内に行う必要があります。 a) 賃金額を引き上げてから実績報告手続きを行った日の前日 b) 賃金額を引き上げてから6か月を経過した日。これらの報告を怠ると、助成金の返還を求められる可能性があります。
これらの点に留意することで、スムーズな申請と確実な助成金受給が可能になります。
活用事例
ホワイトカラー業種の事例5選
厚生労働省のHPでは、業務改善助成金を活用した事例を「生産性向上のヒント集」としてまとめ、公開しています。
このnoteの読者の方はホワイトカラーの方が多いと思いますので、ホワイトカラー業種の事例を5つピックアップして紹介します。
保険代理業:マニュアル作成ソフト導入により、社内の保険事務スキルが統一化され、若手従業員の作業時間が25~50%短縮した(令和2年3月版P.25)
行政書士・社会保険労務士業:顧客データ管理のクラウド化と給与計算システムの導入により、顧客のデータ管理・給与計算作業が30%短縮した(平成30年3月版P.9)
コンサルティング業:クライアント情報や進捗状況等の情報共有システムの導入により、情報の擦り合わせに係る業務負担が軽減され、情報の擦り合わせに要していた月5時間の作業時間が削減された(令和6年3月版P.43)
情報通信業:ウェブサイトのメール配信システム導入・デザイン変更により、会員へのメール配信作業が60分から30分に短縮、問い合わせ対応時間の減少、非接触型スキャナーの導入により、資料読込みのための裁断作業(1冊1.5時間)が不要になった(平成30年3月版P.16)
情報通信業:プロジェクト管理ツールと映像編集ソフトの導入により、情報共有の一元化と複数人の並行作業が可能になり、確認や制作に要する時間が短縮した(令和2年3月版P.26)
このように、プロジェクト管理ツールやクラウド型情報管理システムなどのITツールも設備投資の助成対象となっています。
ITツール導入の事例3選
さらに、賃金引き上げに向けた取組事例の紹介サイト(業務改善助成金を利用していない事例も含まれます)においては、業務改善助成金を活用した事業者のインタビュー記事が公開されています。
ブルーカラー業種の事例が多いですが、ホワイトカラー業種においても参考になるITツール導入の事例を3つピックアップして紹介します。
園芸用品販売業:筆耕ソフトの導入で立札作成の効率化、ショベルローダーの導入で土運搬作業の大幅短縮を実現。作業負担軽減と商品管理向上により、正社員とパート従業員の賃金を3%引き上げることができた。(CASE STUDY 20)
造園・公共工事業:顧客管理システムの電子化により、顧客情報の検索・確認作業を迅速化。紙媒体での管理から電子へ移行したことで、顧客の要望確認や契約につながる作業を効率化できた。時給制従業員の賃金を60円引き上げ、定期昇給も実現した。(CASE STUDY 25)
ハラスメント外部通報窓口受託サービス業:Web会議システムの導入により、法律事務所との連携がスムーズになり、顧客との打ち合わせ回数も減少。業務効率化を実現し、正社員の基本給を9%(時給換算で100円)引き上げることができた。(CASE STUDY 36)
幅広い業種での活用例が紹介されており、助成金の用途の幅広さ、各事業者が自社の状況に合わせた創意工夫を行っている様子が窺えます。
これらの事例を参考にすることで、自社の業務改善の方向性を具体的にイメージできるのではないでしょうか。
重要なのは、単に設備を導入するだけでなく、それをどのように活用して生産性向上や賃金引き上げにつなげるかという視点です。自社の課題を明確にし、それを解決するための最適な投資を考えることが、この助成金を有効活用するカギとなります。
活用事業者のインタビュー動画
厚生労働省東京労働局では、この制度を活用した事業者として、陶磁器の型を作る機械と電気釜を購入した陶器製造販売業者と、調理機器類の設備投資を行った飲食店のインタビュー動画を公開しています。
この動画では、両事業者が助成金活用後の具体的な成果を語っています。印象的なのは、陶器製造販売業者が「やって良かった」と強調し、飲食店経営者が「チャレンジのきっかけになる」と述べている点です。業務改善と賃金引き上げの効果が見て取れ、中小企業経営者の皆様にとって励みとなる内容なのではないかと思います。
おわりに
制度の詳細や申請方法については、必ず最新の情報を公式サイトで確認するようにしてください。制度の内容は年度によって変更される可能性があるため、常に最新の情報に基づいて計画を立てることが重要です。
この制度を活用することで、従業員の賃金引き上げと企業の成長の好循環を生み出すチャンスが広がりそうですね。ぜひ、業務改善助成金の活用を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
この記事が皆様の業務改善の一助となれば幸いです。
ご覧いただきありがとうございました。