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私が看取り士になったわけ    

心友になった彼女のこと②

私が看取り士になったのは、
きっと・・自分が救われたかったから。

彼女はなぜ、身内でもない、友人でもなかった私に最期を託したのだろう?その答えが知りたくて、私は看取り士にたどり着いた。


彼女と会う半年くらい前、
ヘルパーとして関わっていた彼女のお母さんが亡くなった知らせを受け、施設までお別れに行った。
本当に、ご両親の介護を一人でよく頑張っていた。
春から海外赴任が決まったと聞き、これでやっと自分の人生を自由に生きられるねって、心から彼女にエールを送った。

それからその春をすぎた頃・・ 彼女から突然電話があった。

彼女にかける言葉がなかった。
神様はいないのか。


彼女は、淡々と自分の今の状況を話してくれたあと、
お願いがあると言った。

「今はまだこうして動けるし、仕事もなんとか行けている。
でも、いずれまた入院になり、いつか動けなくなる。
そうなったとき、身の回りのことを頼める人が誰もいない。
家政婦さんみたいな付き添いの人を頼めばいいのかもしれないけど、
最期にそれもなんか悲しい。。
できれば、加藤さん(前姓)に
私の最期まで身の回りのことをお願いしたい・・」

彼女からそう告げられた。

このときの私の立場は、ただのヘルパーステーションの雇われ管理者。
元々、彼女との出逢いは、彼女のご両親のヘルパーとして関わったことが始まりだった。

これは仕事としての依頼?
それとも個人的に??

その時の私は、はっきりと彼女にYESと応えることはできなかった。

私が管理者をするヘルパーステーションは介護保険で高齢者を対象としている。もちろん末期癌は介護保険でも対象とはなる。
しかし、うちのヘルパーステーションで仕事として受けることは叶わなかった。

彼女から連絡がきたら、どう応えよう・・
どう断ろう・・答えがでないまま、何日かが過ぎていった。

そして、ついに彼女からの運命の電話。
私は事務所で一人、いつものように残業していた。

「今、病院にいるんだけど、今日は定期受診で検査が長引いてしまって、こんな時間にごめんなさい。
実はもうこのまま入院しなければいけないと言われてしまって・・
でも、家はそのままだし、入院の準備もなにもしてきてないから一度家に戻りたいと頼んだけど、誰かの付き添いがないとダメだと言われてしまって、本当にこんな時間に申し訳ないけど今から病院まで来てもらえませんか?」

そんな内容だったと思う。

どうしようーーー・・?? ヤバい!断らなきゃいけない・・

でも私の口はもう勝手に喋っていた。
「わかりました!今事務所にいるのですぐに片づけて病院に行きますね!」

車で走りながら頭の中はぐるぐるしてたけど、でもとにかく病院に向かうしかなかった。
もう乗り掛かった舟!!!
私に何ができるのかはわからなかったけど、彼女のところに向かうしかなかった。

そして、その日から私たちは心友になった。

友達として関わるなら誰に文句を言われることはない。
仕事もちゃんとやって、自分の時間を彼女に注ぐことを決めた。

こうして、私は毎日のように残業していたのを定時で切り上げ、彼女の病院に通う毎日となった。


2017年を迎えた元旦。
年末にいろんな人の手を借りて、彼女を緩和病棟のある病院に転院させることができた。
元旦の日の彼女からのリクエストは、マックのテリヤキバーガーセット。
彼女と一緒に食べた。美味しかった。
全く食欲がなかった彼女はペロリと半分以上もたいらげた。

そのあと、元旦でも私はヘルパーの仕事に行かなくてはならなかった。
そんな私に彼女がこう言った。

「あやちゃん、私が雇ってあげるから、もうどこにも行かないで私専属のヘルパーになればいいじゃん! 月100万くらいでどう(笑)」
と冗談のように彼女は笑って私に言った。

「おーーーいいね!考えとくわ(笑)」
そう応えるのが精一杯で、私は病室を後にした。


彼女といろんなことを話した。
彼女とたくさん泣いて、笑って、泣いた。


「あやちゃんは、たくさんの人を助けてあげることができる人だよ。
だから、私の分までがんばってね!」

「私も、もっともっと仕事がしたかったな~」

彼女はそう言って笑った。


それから数日後、彼女は静かにお空に旅立っていった。


私が看取り士になったのは、
ほぼ成り行きで、一人の人生の最期に立ち会ってしまったことが怖くなったから。

「あやちゃんは、たくさんの人を助けてあげることが出来る人だよ」

彼女はそう言ってくれたけど、
私には、目の前にいる彼女を助けることはできなかった。

死を前にしたとき・・
本当に無力だった。

彼女は延命治療はしないと決め、緩和病棟に移ったあとも本当の親友にさえも会おうとはせず、誰とも面会をしなかった。

特に親しかった昔からの友人でも、身内でもない私が、
彼女を病室で一人見送った。

彼女が目の前からいなくなったあと、自分のしたことが急に怖くなった。
私のしたことは、本当に正しかったのか??
彼女はなぜ、私を選んだのか?
命ってなんだろう
・・・

その答えを探して私は『看取り士』に辿り着きました。
彼女の最期の願いは叶えてあげられなかったけど、
もし、また彼女のような人と出逢っても、今度は迷わず抱きしめてあげられるような人になりたい。

そんな思いで『ふわり縁』をつくりました。

ふわ~り ふわ~り 風にのって
素敵なご縁がありますように。。





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