『百人一首を自分なりにアレンジしてみた。』No.6 中納言家持
かささぎの 渡せる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける
中納言家持(第六番)
(現代語訳)
七夕の日、牽牛と織姫を逢わせるために、かささぎが翼を連ねて渡したという橋ーー天の川にちらばる霜のようにさえざえとした星の群れの白さを見ていると、夜もふけたのだなあと感じてしまうよ。
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「こどもたちよ、なぜ、私たちが高い木の上に家を作るか知っているか?」
父さんカササギが、そのこどもたちに問うた。
「わからないよ、父さん」
「わからないな」
「わからないね」
こどもたちは、巣の中で一斉に声を上げた。
「そうだろうとも」
父さんカササギは当然のごとく言った。
「これは本能であり、本能でない」
父さんカササギは、こどもたちにとっては少し難しいことを言う。
「どういうこと?」
「わからないな」
「わからないね」
こどもたちは、先ほどと同じようにくちをそろえて言う。
「人間の、中国という国では、年に一度、私たちのもっともっと高い所に住む織姫と彦星をつなぐ役割を私たちが担っていたという話がある」
「織姫?」
「彦星?」
「人間なのだから、歩いて会いに行けばいいじゃない」
こどもたちが考え始めた。
「そう。そうなのだが、二人の間には、天の川という星々の川があって、そこを渡らなければ二人は会えないのだ。私たちが橋渡しとなって二人を出合わせる必要がある」
「だから高い所に住むの?」
一羽のこどもカササギが問うた。
「もしその時になって、星々があるようなもっと高い所に行くことになっても、怖がらないようにね」
父さんカササギは、こどもたちに『高いところは怖くない』と、ちゃんと教育しなければと思っていた。
「ぼくたちは、父さんくらい大きくなれば飛べるんだ。高い所なんかこわくないよ」
「そうだね」
「そうだな」
父さんカササギは畳みかける。
「それはどうだろうか。星々は、本当に、気が遠くなるくらい高い所にあるんだよ」
こどもたちはそれを聞いて、少し怖いと思った。
父さんカササギが言うのだから、本当に本当に高いところなのだろう。
「話し込んでいるうちに、夜も更けてしまったようだね。今日はもうおやすみ」
「はい、父さん」
「おやすみ父さん」
「おやすみ」