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森本梢子先生の『デカワンコ』を読んでみた。

 森本梢子先生の『デカワンコ』を読んでみた。

 『デカワンコ』は、『YOU』(集英社)で2008年8号から連載されているらしいが、単行本の第12巻(「YOU2013年1月号・2月号掲載」まで収録)で休載になっているそうだ。

 『デカワンコ』第2巻のカバー4コマに「さよならピーポロ君」という4コマ漫画があった。

 ピーポロ君が、小学校の校庭で子供たちに「正義のポリスマン体操」を指導する絵があり、パトカーの拡声器で「止まらんと撃つぞ」と繰り返しても、体操を続けたピーポロ君が「わいせつ物陳列罪」で逮捕され連行されるという内容の漫画だった。

 「おまわりさんといかのおすし」の広報用4コマ漫画に使用すれば、効果的ではないだろうか。

 『デカワンコ』第2巻の第16話にはピーポロ君(「ぴーぽろ君」?)の「犯罪抑止警戒運動月間」ポスターがある。

『デカワンコ』第2巻第16話ピーポロ君(「ぴーぽろ君」?)の「犯罪抑止警戒運動月間」ポスター

 わかりにくいが、ピーポロ君の姿だ。「ピーポロ君」で検索しても「ピーポくん」しか出てこないので、実際に森本梢子先生の作品として存在することを示すために、モザイクをかけて引用させていただいた。

 このポスターには「※この漫画の中での公式マスコット『ぽろっと出してるぴーぽろ君』。」という注意書きがある。

 ネットで見つけたデカワンコの漫画カバー(『デカワンコ』第1巻のカバーから引用されているようだ)の画像 には、カラーのぴーぽろ君の絵の下に「〈ピー●くん〉マスコットといってもなんせ警視庁のですから実物はこのくらい強そうだと思います。目は笑ってないしアゴは割れていると思います。ただ、微妙に小さくて大人の腰ぐらいの背丈なのでそれほど強くないかも知れません。」というコメントを書いておられるようだ。

 森本梢子先生は、明らかに、ピーポ君を皮肉っているようだ。

 あだち充先生の『みゆき』やドラマの『探偵物語』や『TRICK』より、おまわりさんによる犯罪の抑止に効果がありそうだ。ぜひ、ネットで無料公開して、おまわりさん犯罪の抑止活動をしていただきたいものである。

 現状最終巻?の『デカワンコ』第12巻には

 「昔はな出張先の警察署の独身寮の空き部屋とか道場なんかにゴロ寝したもんだ!」(定年間近の富士登警部補の言葉)という名吹きだしがある。

 この言葉の裏には、出張旅費の申請書と受領書にポンポン判子を押す例の手法が隠されていると言って良いだろう。

 森本梢子先生は、出張旅費を裏金にするスキームを簡潔に述べているのである。

 そら、休載になるよ。

 森本梢子先生にも文芸の哲学的基礎があるようだ。

 森本梢子先生が批判するピーポくんについて調べると、警視庁のサイトの

によると、ピーポくんというのは、

都民と警視庁のきずなを強めるため「親しまれ、信頼される警視庁」をテーマに、警視庁のシンボルマスコットとして昭和62年4月17日に誕生しました。
名前は、人々の「ピープル」と、警察の「ポリス」の頭文字をとり、都民と警視庁のかけ橋になることを願って「ピーポくん」と名づけられました。

ということらしい。

 しかし、「名前は、人々の『ピープル』と、警察の『ポリス』の頭文字をとり、都民と警視庁のかけ橋になることを願って『ピーポくん』と名づけられました。」と言うのだが・・・

 単純に人々(people)と警察(police)を繋げたと言うことだが、people(国民)とpolice(警察)と考えると、国民皆警察という語の主要部分を構成するパーツになり、「皆」を省略して英訳した形になっている。

 これは、「警察精神」を英訳してpolice mind(ポリス・マインド)と広報(宣伝)する手法に似ている。

 そして何より、怖いのは、イラストのピーポくんの頭の男性器を思わせるアンテナに、何やら電波を受信している様な妙な光が描かれていることだ。

 ピーポくんの名前と容姿には「国民」が「警察」の発する何か(電波?)を受信してコントロールされている姿(国民皆警察)を暗示しているように見えるのだが、気のせいだろうか?

 もし、ピーポくんが暗示する物が「国民皆警察」であるとすると、森本梢子先生の「ぴーぽろ君」は、夏目漱石の警察批判を「ぴーぽろ君」というキャラクターで表現し切っていると言っても過言ではないだろう。

 私は、森本梢子先生の『デカワンコ』に維新の志士の如き烈しい精神を垣間見た気がした。


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