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人は自分のためだけには頑張れない

私はいつも自分のことばかり考えている、という自覚がある。

そんな私が、会社のメンバーが体調不良でその日の面談予定どうしようか?となったとき、たまたまその時間が空いていたので「面談代わります」と申し出た。
会社としての損失を防ぎ、カスタマーさんに迷惑をかけないために当然のことで、これまでもそうしてきた。
いつものことではある、が、そのとき、あることに気づいた。

なんかちょっと、いつもよりやる気出てる感じするわ。

なぜか?

その仕事の意味付けが変わったからだ。

ひとつは、その仕事を引き受けること自体が、大げさに言うと「人助け」となるから。
体調の悪いメンバーが無理に面談をしないで済むし、予定を確保してくれていたカスタマーさんもその時間を無駄にしないで済む。
私がその時間の面談を行うことで、2人の人を救う。(大げさ)

このことは、脳科学的にも説明ができる。
利他行動によって、脳の報酬系が刺激されるのだ。

人の脳には、前頭前野内側部という自分の行動を評価する部位があります。この部位が、「よくやった!」「すばらしい!」などと自分の行動を評価すると、たとえ他人からほめられなくても、大きな快感を得られるのです。

中野信子. 新版 科学がつきとめた「運のいい人」. サンマーク出版, 2023, 129p


もうひとつは、その面談目的が「私」のためだけじゃなく「私たち」のためになるから。
一旦は面談をリスケにすることもできるが、次は再調整できないかもしれない、というリスクが伴う。
私が代わりに面談を実施できれば、体調不良のメンバーの面談数は減っても、会社全体での確保はされるので、会社としての機会損失にはならない。
自分の行動が会社に貢献しているとわかりやすく感じられる。

ところで、京都大学の藤井聡教授は、「他人に配慮できる人は運がよい」ということを著作の中で述べられています。(中略)
ここでいう配慮範囲とは、現在の自分を原点にして人間関係と時間を軸にしたもの。(中略)
自分のことばかり考え、目先の損得にしか関心がない人は、配慮範囲の狭い人です。一方、自分のことばかりでなく、家族や友人、そして他人や社会全体の将来についてまで考えられる人は、配慮範囲が広い人です。
研究の結果、配慮範囲の狭い人はある程度までは効率よく成果を上げられるものの、目先のことにとらわれて協力的な人間関係を築けないため、総合的にみてみると幸福感の得られない損失が多い人生になる、というのです。
逆に、配慮範囲の広い利他的な志向をもつ人は、よい人間関係を持続的に築けるため、自分の周囲に盤石なネットワークをつくることができ、それが運のよさにつながるといいます。

中野信子. 新版 科学がつきとめた「運のいい人」. サンマーク出版, 2023, 130p


私の例はたいしたことではないが、「全体の中の私」という感覚は、利他的で幸福度の高い人生につながるのだろう。
これは最近、仏教や禅、ヨガ哲学などを勉強していても同じように大切だと説かれていて、不変の真理なのだと感じる。
自分と他者と分けて考えない、もはや自分とか無い。自分の利益のみではなく社会のためにできることをせよ。

自分の所属しているコミュニティや、社会全体、遠い国のこと、未来の子供たちの時間、、、広い範囲で関心を持つことは、それだけで自分への執着が減る。
長く広く大きな全体の中の一部分をたまたま今、生かされている自分という存在。
そう思うと、本当に自分なんて小さいし何もできなくて当然で、意気込む必要も卑下する必要もない。
周りの人に、今日できる精いっぱいの貢献をしよう。

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