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#31 転機

三学期になってすぐに行われた席替えで近くになったのはあの子の仲間の一人、千春。といってもほとんどが彼女のとりまきなのだから誰が傍に座ろうと同じことだとあきらめていた。話しかけたところでばか丁寧な敬語で対応されるのが関の山。

ところが千春はまるで前からの友人だったかのように、自然に普通に話しかけてくるのだ。誰に対しても媚びずにはっきり物を言う彼女と知らぬ間に意気投合し、お互いの家を行き来しあうほどの仲良しになった。「私と仲良くしてたら千春もあの子にいじめられるんじゃないの?」と尋ねたがどこ吹く風。「平気だよ。私が誰と話そうとあの子の許可が必要な訳じゃないもん」

そんなある日、千春から忠告を受けた。

「卯月はさ、悪くもないのにすぐ謝る。よくないよそれ。もっと堂々としてなよ。すぐにぺこぺこするからみんな面白がっておちょくってやろうと思っちゃうんだよ。みんな卯月が嫌いなんじゃなくて、卯月でストレス発散してる感じがする、反論しないから」

『波風立てないようにさっさと謝って話を終わりにしなさいよ!』という母の主張と正反対の意見を投げかけられた私は青天の霹靂。そして思ったのだ。私はこれまで母から学びとれることが何もなかったけれど、いい友達に巡り合えば変われるかも知れないんだって。こんな風に私を思って意見してくれる彼女を大切にしようと思った。

そしてこの日から少しずつ私は変わっていった。13歳、真冬の頃の話だ。


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