はじめての3Pは人生で1番最高に興奮した


大学3年の頃、当時働いていた居酒屋の店長と
営業中に下ネタ話になることがよくあった。

店長は大柄、坊主、髭というイカつい風貌で、
どう見てもプロレスラーだった。

でも打たれ弱い。めっちゃへこみやすい。
そんなところが可愛いなぁとは思ったけど欲情の対象外であった。

だって働いている店の店長だし。
わたしはそういうのを職場に持ち込まないタイプだった。
サークルにはめっちゃ持ち込んだくせに)

しかも店長はセフレだか彼女だかがいっぱいいた。
わたしの知り合いもその中に2人くらいいてびっくりしたものだった。

手近なところ、食い過ぎだろ!!
(わたしに言えることではない)

だけどだからこそ、
そういう関係にならないからこそ、
下ネタを話せた。


店長はいつも突然自分の性癖の話をしてきたりするが、
それが特段いやらしくなく、セクハラと思うこともなく、

「マジっすか!!」

みたいな感じのテンションで受け取れて、いつも楽しかった。


ある日も暇すぎて営業中に店長とわたしとで酒を飲み始め、
下ネタ系の話になった。

「なんかネタ無いのー??」

その日に限ってわたしに話を振られた。

今なら、誰にも言ったことのないことを、
店長になら、話せる気がした。


わたしはエロいことを想像する時、
 今までずっと男側の立場で想像していた
ことに気づいたんです』


それを聞いた店長は驚くでもなく、

「それは女の子を抱きたいってこと?」
と興味津々で聞いてきた。

「うーん、たぶんそうなのかな?と思うんですけど…」

はじめてのカミングアウトに内心ドキドキしていた。
店長が普通の反応で助かった。

店長になら引かれないとは思っていたけれど、
こんなに普通に扱ってくれると嬉しさすら感じる。


「へぇー!じゃあ今日、試してみる??」

「今日!?!?」

早速が過ぎる。まだ心の準備ができていない。

できていないが逆に心の準備とやらができない方がいいのかもしれない。
あまりに緊張してしまうから、
明日とか言われたら一日中生きた心地がしないだろう。

「今日。このあと女の子呼ぶわ」

結局お客さんも来ないし、お店は閉店することになった。


わたしは一旦帰ることになった。
突然の展開に心はまだ追いついていなかったが、
判断力はまだ残っていたのでいつもより念入りにシャワーを浴びた。

温かいお湯を浴びても生きた心地がしない。
手が震えていた。

断ることなんて考えもしなかった。
だって、こんなこと、もう一生ないかもしれないのだ。


緊張しながらお店に戻った。
5分の道のりがやけに遠く感じた。
心なしが早歩きになり、ただそれだけなのに息が上がった。


お店の入り口で店長に呼びかけてもなんの反応もない。
勝手に入って店長の部屋に進むと、
もう割と前菜的部分がおっぱじまっていた。


はじめて会う女の子、すでに全裸である。


この子と、このあと…


思考回路はショート寸前であった。
人生でこの時より緊張したことは他に無いと思う。


店長はわたしに気づくと手を止めた。

「じゃ、ベニカちゃん、どうぞ!」

どうぞってなんだよ!!!!

と思いつつありがたくいただくことにする。


しかし、なんかもうちょっと会話とかさぁ…
いや、逆にその方が緊張するかしら??


いきなりのメインディッシュである。
いやパート的には前菜なんだけど(ややこしい)

全裸女子
    VS
着衣のわたし

………え、何から始めるんだっけ????


えーっとまずキス、キスして…
そんで…
えーっと…

とりあえず肌表面に手を動かしてみる。

これでよかったっけ??

いつも自分がされる時は偉そうに採点していたが、
いざ自分がやるとなったら全然勝手がわからない。

とにかくソフトにソフトにを心掛けたが、
これでいいのかわからない。


しかも店長に見られている。

店長ー!!!!


恥ずかしいけどなんかもうそれどころではなく、
どうやって先に進めるか、そればかりを考えていた。


今まで馬鹿にしてきた童貞の人たち、ごめん。
わたしだって童貞だった。

心臓の鼓動が手に足に顔にまで跳ねる。
あまりに挙動不審。
やることはわかっているが、緊張感がそれに勝る。


とにかくとにかく頭で何かを考えながら。

これでいいのか?これでいいのか?
反応を見て、
これでいいのか?
たぶんよさそう?
ほんとに?
わからんけど、いいの??


そろそろいいのかな?

何がそろそろなのか、
何がいいのかもわからないが、
完全になんとなくの流れで
指を入れてみる。



あったかいなぁと思った。



入れたはいいが、動かし方もわからない。



ねぇほんと、童貞の方々、
今まで馬鹿にしてすみませんでした。


全然わかんない!

同じ女だからイケるやろ!とか思ってたけど、
もうほんと、全然わかんない!


自分の入れた力が、
どのくらい相手に伝わっているかがわからない。

優しくしているつもりだけど、
優しく伝わっているのかがわからない。

これでいいんだっけ?
反応見るけど全然わかんない。
ねぇこれめっちゃ難しい。
これどうするんだっけ???

疑問だらけの頭で一応一通りのことをこなして、こなして、こなして…


あれ、このあとどうするんだっけ???



あ、わたし服を着ているから、脱がないと!
脱いだとして…



あれ、わたし、ちんこが無いんですけど。



あれ、無かったっけ?
え…???
え、このあとどうしよう…?


わたし、自分のちんこを入れる気満々だったんだ。


びっくりした。
股間にそれがないことに。

あまりにも自然に無かったから、びっくりした。
あれ、いつから無いんだっけ?


無い、そうだわたしにはちんこが無かったのだ。


そりゃそうでしょ?
20年くらい生きてきて、ずっと無かったでしょ??


でもその時、本当に驚いた。
そして打ちのめされた。

あ、本当に無いんだ…。


これから先も生えてくることが無いことを嫌というほど実感した。
どう頑張っても。


何だかずっとそこにある気がしていた。
だけど無かった。

そこにはずっと無かったということを、その時初めて実感した。



服が、脱げなかった。

わたしの体にちんこがないところを、
その子に見られたくなかった。

わたしの体が女であるということを、
その子だけには知られたくなかった。



どれくらい呆然としていたのか、
女の子がわたしに気を遣ってくれていた。
だけどそのあとも長く呆然としすぎていたのか、
いつのまにか店長とおっぱじまってしまっていた。

わたしのフリーズがとけた頃には
まぁまぁいい感じにクライマックスが近かったので、
来た時と同じくこっそり帰った。



無かった、わたしには無かった。

あまりにも当然のことなのに、
とてつもない衝撃を得ながら帰宅した。


あの夜の寒さ、匂いは今でも思い出せる。


どこかにあると思っていた。
でもどこにもないことを知った。
どうしようもない、どうにもできない。

その夜は眠れず、気づいたら朝になっていた。



女の子とは後日会った時にめちゃくちゃ動揺してしまい、
相当にからかわれた。

今まで童貞を笑っていた報いだと思った。
わたしはあの時『自分が今まで笑っていた童貞』そのものだった。


何が何だかわからなくて、
わからないままなんとなく一通りのことはこなしたけれど。
こなしたけど、こなせたかどうかはわからない。


次のシフトに入った時、店長はびっくりするほど普通だった。
なにも無かったかのように。
だけど『本当になにも無かったのかも知れない』と思うことはできなかった。



性別の欄に丸をつける時、
それまではずっと男・女の間の点に丸をつけたいと思っていたのだけれど、
この日から女に丸をつけるのに抵抗が無くなったような気がする。


自覚したのか、諦めたのか、
どういう気持ちなのかはまだわかっていないし、
きっとこれからもわからない気がする。


あの夜何かが大きく変わったような、
そうでもないような。


今までの人生で1番最高に興奮したセッ久(未遂)だった。




※生えないことがもうわかったので、その時から現在に至るまで女性と同衾しては無いです
わたしは別に『女性として、女性と同衾したい』ってわけじゃ無いみたいなのでな!

※自分の心情に正直に書いたらちょっと意味不明になってしまったんですが、まぁいいか


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アヤメベニカ
本を買って読んで語彙を増やしたり、楽しいことをしようと思っています!それでまたネタを増やして記事を書きますね!!!