4cm×15cm
中学2年生の頃、非常階段で告白してくれたS君と付き合うことになった。
S君は隣のクラスの男子だった。
隣のクラスの仲のいい友達に会いに行っていたら、
その隣の席のS君とも何かと話すようになり、
坊主頭の感触が楽しくていつも触らせてもらっていた。
ある日、階段に呼び出された時はきっと告白されるんだなって思ったし、
ドラマみたいな漫画みたいなシチュエーションに浮かれてオッケーした。
わたしもS君のことは好きだった。
S君がエロいと言う噂も、
惚れっぽくてすぐ告白すると言う噂もあったが、
わたしも惚れっぽくてすぐ告白するし
エロかったので何の問題もなかった。
ピッタリやんけオイ。
付き合うとはいってもそこは中学2年生。
部活でいい成績を収めているS君は毎日忙しく、
お互い携帯も持っていなかった。
こっそりと家電の子機を持って電話したことが数回。
学校で会話をしていると驚くほど冷やかされるので、
誰にも邪魔されずに会話できるのがありがたかった。
早く携帯を持ちたいなと思っていた。
その日の子機での電話も、
愛を囁いたり他愛もない話をしたりで、
気づけば長時間になっていた。
エロ大魔王と呼ばれていたS君、
知識だけはたっぷりと蓄えたわたし。
中学2年生。
アレやソレやに興味のあるお年頃…。
お互いに経験が無く、でも知識はあり、
「初めてはきっとお互いと…」
なんて言いながら…。
気づけば!
下ネタ知識大交換会へ!!!!?
当時は今みたいに検索すればエロが出てくる時代では無く!
いや検索したら出てきたとは思うけど今みたいに溢れてはいなかった。
あと画像のダウンロードに死ぬほど時間がかかっていたので、
エロが見れてもきっとテキストがほとんどの時代だったはずである。
当時エロ漫画やAVを見たことはあったが(あるんかい)、
知識を蓄えたとは言っても実際のところは何もわかっていなかった。
そんな折、S君が突然の告白をした。
「俺のってでかいらしい」
「よくでかいって言われるんだ」
「え…そう…なんだ…」
わたしは驚いて相槌を打つことしかできなかった。
だってまだ何も見たことがないのだ。
標準がわからないのだ。
なのにでかいと言われても!
さらに、もしかすると自分の初めての相手となるかもしれない人に「でかい」って言われると…
「え、痛そうやし入らんかったらどうしよ…」
うっかり入れる前提で考えていたら口に出してしまった。
この女、ノリノリである。
するとS君もノリノリで、
「大丈夫やろ、子供産んだりするし。拳入ったりするらしいよ」
中2でこの性癖である。とっても将来が心配である。
当時のわたしも、
『いや出産はどう考えてもその棒状のものが入った後の話やん』
と心の中で突っ込んだりしていた。
そしてS君は、
「俺のは、15センチくらいあって、直径が4センチくらい」
と言った。
4センチ×15センチ…???
言われた直後から想像するが、全然ピンとこない。
えーっと手のひらの大きさが…どのくらいだっけ?
まず10センチがこのくらい…?
とすると15センチはこのくらい…?
4センチ…1センチがこのくらいだからその4倍として…このくらい…?
うーん…????
全然ピンとこん!!!!!!
今すぐ!!!!!!
今すぐに定規を見たい!!!!!!!!!!!!!
その後もなんとなく会話は続いていたが、
全然会話に集中できなかった。
わたしは定規を欲してたまらなかった。
しかし時刻は深夜、家族にバレないように別室で電話をしていたため、
定規を取りに行きながら話すと電話しているのがバレてしまうのである!
早く!早く定規が欲しい!!!!!
いつもは切りたくない電話も、
その日ばかりは切りたかった。
ぜんっぜん会話に集中できない。
早く定規に会いたかった。
会って、その大きさを示して欲しかった。
初めての生々しい男性の情報を
早く検証したくてたまらなかった。
いつもは自分から切らない電話も、
「ごめん、眠たくなってきちゃった」
と言い、切り上げることにした。
子機を元の場所にしまい、ダッシュで自室への階段を駆け上がる。
学校用のバッグから筆箱を取り出し、定規を探す。
あった…!!!!!
すぐさま目盛りを凝視する。
これが4センチ…
そしてこれが15センチ…。
しばらく定規を見つめてしまっていた。
4センチはこのくらい、15センチはこのくらい…。
指で輪を作って4センチを測ったり、
自分の手のひらで15センチがどこまでかを検証したり、
いらないノートに4センチと15センチの線を引いてみたりした。
このくらいかぁ…
4センチ、15センチ…。
この日からしばらくの間は授業中でも定規を使うときに4センチ、15センチのことを考えてしまっていた。
それからもS君とは仲良くしていたのだが、ある日
「部活の大会があるからそれに専念したい」
と振られることとなった。
お互いに嫌い合って別れたわけじゃないので辛かったが、
お互いに気が多いのですぐに時間が解決してくれた。
結局、4センチ×15センチの実物の目視は叶わなかった。
それから…
初体験の時も、
それ以降も、
事あるごとに「今のはこれくらいだったな」と記憶を頼りに手で再現し、
定規で測ってしまう癖がついてしまった。
だからといってどうということはないのだけれども。
わたしの中でS君のサイズが、
幻のちんこ基準値となってしまった。
※S君は初出演です。
※タイトルを「幻のちんこ基準値」にしようと思ったけどさすがにやめた