『三十年後』 星一 新潮社
星新一の父親星一が大正七年に出版したSF。星新一が約半分の長さにちぢめ、星新一の次女が監修している。
舞台は『三十年後』であるから、大正三十七年、つまり昭和二十三年。
星一自身は昭和二十六年まで生きていたから、その違いをどう思ったか。『三十年後』としたが、自らの想像した未来を描いた小説であって、その年数はどうでもよかったのかもしれない。令和三年の今、ようやくそれらしいものが登場し始めていたり、まだ当分かかりそうなものすら登場する。『人民は弱し 官吏は強し』によれば星一は発明王エジソンに自ら望んで直接会ったそうだから、元々そういうことを考える素養は持っていたのだろう。
主人公は嶋浦太郎、小道具は薬である。
星一が実業(薬業)で成功したのは大正三年に始まった第一次世界大戦でヨーロッパから薬品が輸入しにくくなり、国内生産への需要が高まったこと、モルヒネ精製国産化に成功したことという。
いま、コロナ禍で、ワクチンの国産化が叫ばれている。
大正七年は1918年、103年前のことだ。
この三十年後はいったいどうなっているだろう。
私は見るのか?
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