本気でサンタさんを信じていたわたしが、今、サンタさんにお願いしたいこと
わたしはサンタさんを、本気で信じていた。
純粋な気持ちで、無邪気にクリスマスを待っていたあの頃。
サンタさんってどんな人なんだろう?
どうやってお家の中に入ってくるんだろう?
気になることがたくさんたくさんあって、質問をいっぱい詰めたお手紙を、クリスマスの前日に机に置いて寝たこともある。
枕元に置かれていたわたし宛のプレゼントとお手紙の返事。
質問には答えてもらえなかったけど、”Merry Christmas Ayame !”と筆記体で書かれていたその文字に、「サンタさんが本当に来たんだ!」と興奮したこと、今でも覚えている。
そんなわたしが、なんとなくサンタさんが両親だと気づき始めたのは、小学3年生くらいの頃。
同じくサンタさんがいると信じて疑わない友だちと、どうやってサンタさんがお家の中に入ってくるのかの真相を探るために、寝ずにこっそり起きて待っていよう、という作戦を立てた。
結局わたしはサンタさんが来るまで起きていられず、朝起きればいつも通り枕元にプレゼントが置かれていたから作戦失敗だったのだけれど。でも、次の日の教室で友だちから言われた「サンタさん、お父さんやったで!お父さんがプレゼント置いてるの見たもん!」の言葉があまりにも衝撃的だった。
その時に感じたのは、”裏切られた”でも”夢が壊れた”でもなく、”毎年子供のためにサンタさんやらなきゃいけない大人って大変なんだな”というなぜか親目線のよく分からない感想だった。
サンタさんの正体を知ってしまった。でも、それを両親に伝えてはいけない気がした。
だからわたしはずっとずっと、サンタさんを信じているふりをした。
毎年クリスマスになると枕元に置かれるサンタさんからのプレゼント。
目が覚めて一番にプレゼントを見て、両親のもとに持っていく。
「見て!サンタさんからプレゼントもらってん!!!!」
でも、本当は知っていたんだ。
それは、お父さんが忙しい合間をぬって、たくさんのお店を回って、わたしのために用意してくれたプレゼントであるということを。
***
わたしが上京して実家を出るまで、わたしの元には毎年サンタさんが来た。
いつも12月中旬になるとお父さんから尋ねられる。
「今年はプレゼント何欲しい?サンタさんから聞いといてって言われてんねん」
『特に欲しいもんないから、サンタさんに今年はいらんよって伝えといて』
子供なりに気を使って、そんな言葉を返してみても。
クリスマスの日には必ず枕元に、ネックレスだったり、カバンだったり、腕時計だったり。”お父サンタさん”がわたしのために選んでくれたプレゼントが置いてあった。
お父さんは、今でも自分がサンタさんであることを断固として認めない。
わたしが旅に出るときにいつも使っているお気に入りのマンハッタンポーテージの黒のリュックは、上京する前の年にクリスマスプレゼントでもらったもの。
そのリュックを背負っているわたしを見たお父さんが「お!そのリュック使ってるやん!」って言うもんだから、『そうそう!これ、お父ちゃんからもらったやつな!めっちゃ使ってるで!』って何の気なしに答えた。
するとお父さんは真面目な顔をしてこう言った。
「ちがう。それはお父ちゃんが買ったやつちゃう。サンタさんや」
思わず笑いながら、『そうやった。これ、お父ちゃんじゃなくてサンタさんからもらったやつやったわ!』って答えたけれど、その徹底ぶりに、お父さんの底知れぬ愛を感じた。
お父さんは、全部覚えている。どれが、サンタさんとしてプレゼントしたもので、どれがお父さんとしてプレゼントしたものなのか。
***
上京して一人暮らしをして、さすがにもうサンタさんは来なくなってしまったけれど。
でも、もし、わたしにまたサンタさんが来るならば、一体何をお願いするだろう。
そうだな。
家族みんなが健康で幸せであって欲しい。
これかな。
モノなんて要らない。わたしの大好きで大切な家族が、笑顔で幸せであれば、それ以上は何も望まない。
ねえ、サンタさん。
これからも、みんなが幸せでありますように。
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