AYAME便りVol.5 編集後記
皆様こんにちは!いつもご視聴いただきありがとうございます。
関東はようやく梅雨入りです。天気も音色も曇りがちな季節がやってきました。高い湿度によって、木が膨張し糸巻きが回らなかったり、弦も弓もたわんで発音が難しくなったりと奏者としても悩ましい季節ですが、梅雨は農作物が育つ恵みの雨。いっぱい降ってぐんぐん育ちますように。けれども大雨の被害は出ませんように!
さて、「AYAME便りVol. 5」は今回はフルートとヴィオラ・ダ・ガンバの二重奏です。ガンバ奏者で作曲家のエルンスト・クリスティアン・ヘッセによる作品を採り上げました。ヘッセは、ガンバの黄金時代を彩るM. マレや A. フォルクレにパリにて奏法を学んだ後、ドイツのダルムシュタットを本拠地にガンバ奏者として活躍していました。彼のようにレベルの高いガンバ奏者は、フランス国外では当時ごく僅かだったそうです。
「ヘッセ」と聞くと、古楽ファンやガンバファンの方々の中に、エルンストの息子の一人ルートヴィヒ・クリスティアン・ヘッセ(1716-1772)を思い浮かべた方がいらっしゃるかもしれません。実は編集担当の私自身、リハーサルするまで息子の作品とばかり思っていました・・・(笑)息子ルートヴィヒは父エルンストにガンバの指導を受け、当時C. F. アーベル、J. B. フォルクレと並んで3本の指に入る最高レベルの奏者となりました。ベルリン宮廷のフリードリッヒ大王の下、C. P. E. バッハ(AYAME便りVol. 3の作曲家)らと共に仕え、ガンバ衰退期にも関わらず長い間その地位を獲得し続けていたことは特筆に値します。
現代において父は息子の影の立役者に回されがちですが、今回はAYAME dayoriの主役になっていただきます。
この曲のタイトルには「フルートと通奏低音のためのソナタ」と書かれています。しかしこの通奏低音はガンバのために書かれたのではないかと考えられています。その理由の1つは、時々ではありますが重音が出てくること(今回の動画にはありませんが1楽章には3度の重音の連なりがあります)。2つ目は、通奏低音は通常、ガンバやチェロ等の低音の弦楽器と共にチェンバロやリュート等の楽器が和音を補って演奏するのですが、この曲に関しては、和音を補わなくてもハーモニーが聴こえる作りとなっていることです。
E. ヘッセの作品群はオペラ1曲に器楽曲3曲と僅かです。今回初めてその作品と向き合ってみて、巧みな和声進行が見られることや、和音楽器を入れなくても成り立つ音選びの工夫などから、とても真摯に書かれたという印象を持ちました。心地よく親しみやすい旋律の奥には色々なアイディアが隠されていて、録音した後もう一度噛みしめたい思いでした。今回の配信で彼の作品の良さが少しでも伝われば嬉しいです。
AYAMEアンサンブル・バロック
折原麻美
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