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短歌連作「連綿なる夢幻の仮面」
「ペルソナ5」によせて
ももいろの麻酔の向こう真実はおぼろげ前世の前世みたいに
思い出をカメラロールに保存してぼくらすべてを忘れてゆこう
反逆が燃えるあなたの双眸に宿る秘密をすべて知りたい
成人に近づく春にコンビニの喫煙所また閉鎖になった
広告の散りばめられた駅前でポケストップを回す指先
水曜二限古典の授業教師から而(これ)は卍(まんじ)のことだと習う
運命の分かれ道たる航走波この航海に錨を降ろせ
「ヒロイン」は悲劇の女ではなくて悲劇を掴みにいく人のこと
額のなか微笑たたえる青年は廃物美術(ジャンク・アート)と呼ばれておりぬ
瞳めの奥で真実(まこと)が燃えている 君に宿る記憶をすべて聞かせて
石櫃で目を閉じている死化粧は母より母の顔をしている
やりなおすことのできないものもあるビッグ・バンは星が死ぬときの音
君は屋根裏の散歩者探偵に暴かれるもの裁かれるもの
こめかみを打ち抜く弾丸正義なら君が下さずともここにある
灰色のパノラマ写真あざやかな火花と共に嘘が飛び散る
石床に転がる注射針すべて君を欺くための回想
君のハイヒールの先に口づけて逆転劇の緞帳が開く
あの夜の赤色灯に照らされた拳の熱を忘れたくない
リビングの三面鏡に増えていく顔の数だけ憎しみがある
どこまでも僕らを非対称にする合わせ鏡を壊せずにいる
僕たちの正義は違うゼブラゾーン振り返らずにさっさと歩け
ひとびとの怠惰は変わることがない帝の首を挿げ替えたとて
白鯨の骨が頭上を飛ぶころに僕のからだは透明になる
かじかんだ指を合わせる指がない予報外れの大雪の朝
どの街のネオンも赤くつやめいて僕らは晴れて都市の亡霊
地下室のふかいとこまで会いに来てくれたあなたをたいせつと呼ぶ
神々の盤上にして僕たちはともに無様な歩兵(ポーン)であった
共犯も絆だったね赤信号ふたりいっしょに駆けて渡ろう
夜色のロングコートを翻し君は絶望さえも盗んだ
きみボルト春の坂道駆けてゆくブリーチの髪軋ませながら
丸窓のはるかに見えるジオラマに明日も光が降ることでしょう
花びらがピルエットのごとくさらりさらり自画像の色を勝手に決める
ブレーキの踏み方知らぬ青春をままごとなんて言わないでくれ
手を合わせ母の墓前でくちずさむカレーを煮込むときのあの歌
亡き父の今期決算来年度予算資料にいるガッチャマン
シャボン玉屋根まで飛んで壊れない夢想を君としてみたかった
キオスクでジャンプ立ち読むなにごとも等しく終わるこちら亀有