6. 私が増えていく
私が増えていく
熱帯夜のパーティー帰り
灯りを消された台所の隅のような道端で
私は豪華な夕食後の
台拭きになる
すれ違いざま視線を投げた無表情な女性の
瞳の奥へ
飽食の香りに疲れ
人でしおれた私が
こっそり
少し前の優雅な私は
誰かの中で微笑んだまま
私が他人の記憶の中でどんどん増えていく
私自身さえ知らぬ間に
あちらでもこちらでも
数えきれないさまざまな私が
誰かの中に忍び込み
現れては消え年もとらず気侭に生き
消してしまいたい瞬間よ
残しておきたい時の陰で
せめて小さくなっていてはくれないか
私が愛せるようになるまで