オリンピック・マンボ
朝、ラジオを聴いていたらマンボがどうのと聞こえてきた。音楽の話ではなく、耳を傾けると新型コロナウイルス関連のニュースだった。
コロナと向き合ったこの1年以上の間、「3密」「濃厚接触」「ステイホーム」「オーバーシュート」と、注意喚起や感染防止を訴えるさまざまな言葉が生み出された。
新たな言葉が、マンボと聞き違えた「まん防」。正式名称は「まん延防止等重点措置」だ。何でもかんでも短縮し、「言いやすさ」「覚えやすさ」を演出するかのような言語感覚には正直うんざりする。本来は明るく陽気なラテン音楽の「マンボ」との対比が、打開策が見えないコロナの現状への腹立たしさも助長する。
ある日の新聞紙面で「東京五輪マラソンのテスト大会開催」と「まん防要請」の記事が隣り合わせで載った。仮に無観客になったとしても、世界各国の選手や関係者の往来が必要となる五輪を進める一方で、地域の人の往来などを制限する二つの記事を眺めるうちに「オリンピックマンボ」という造語が脳裏に浮かんだ。
歌手美空ひばりさんの大ヒット曲「お祭りマンボ」は、人々が祭りに浮かれたその隙に、泥棒に入られたり火事が起きたりし、最後にはいくら泣いても、後の祭りと締めくくられる。コロナ感染者が再び急拡大する中、雨が降ろうが、やりが降ろうが、朝から晩までオリンピックの神輿を担いている人たち。「オリンピアの祭典が、後の祭りにならなければよいですね」と申し上げるのは、厳しすぎるでしょうか。
北海道新聞 朝の食卓 2021年5月13日掲載
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アヤコフスキー@札幌。ディレクター・デザイナー。Salon de Ayakovskyやってます。クロエとモワレの下僕。なるようになる。リトルプレス「北海道と京都とその界隈」で連載中
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