「カフェ」という言葉が浸透して久しいが、私は「喫茶店」の響きの方が断然好きだ。両者が指す意味は、ほぼ同じかもしれない。でも、私の中では全く別な存在だ。
喫茶店について、勝手に決めた定義がある。家族で経営していて、モーニングを提供する。メニューにはマスター自慢のカレーライスがあるのが好ましい。ナポリタンもあれば最高だ。テーブルにはシュガーポットが常設され、コーヒーを頼むと、銀の容器に入ったミルクが出てくる。プラスチック製の小さな容器に入った「ミルク風味の油」ではなく、ちゃんとしたミルクだ。
喫茶とは、元々は鎌倉時代に中国から伝わった「茶をたしなむ作法」を指すらしい。由来を聞くと、なんとも古めかしいが、フランスをイメージした店舗展開から名称を付けたのであろう昨今のカフェが指すものは、私が喫茶店に求めるところをあまり満たしてはくれない。
「パン屋=ブーランジェリー」「ケーキ屋=パティスリー」「ジャム=コンフィチュール」。このほかにも既存の呼び名をフランス語に置き換える風潮は強まっている。すべてを指すわけではないが、「フランス語にすれば、グレードが上がるような幻想を抱いているのでは」と思ってしまうのは、年寄りの冷や水だろうか。
「すてきな日本」を「クールジャパン」と銘打って目指していることこそ、まさに「お寒い日本」を象徴しているように思うのも、私だけでしょうか。
北海道新聞 朝の食卓 2020年10月20日掲載
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アヤコフスキー@札幌。ディレクター・デザイナー。Salon de Ayakovskyやってます。クロエとモワレの下僕。なるようになる。リトルプレス「北海道と京都とその界隈」で連載中
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