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イタリア映画祭 2024 まだ明日がある (原題:C'è ancora domani)

今年の映画祭で一番の注目作だったこちらの作品。様々な作品で俳優として活躍するパオラ・コルテッレージの初監督作品。主演もしています。

共演はヴァレリオ・マスタンドレア。この人の作品もこれまでたくさん観ています。好きな俳優の一人。

すでにイタリアや機上でこの作品を観たイタリア人たちから「事前情報なしで観た方が良いよ」と言われていたので、最小限の情報のみで鑑賞に臨みました。

感想を書くにあたってはネタバレせざるを得ないので、この作品を何らかの形でこれから観ようとしている人はこの後は読まないことをお勧めします。


(ここよりネタバレあり)

時代設定の上から仕方がないのですが、前半は結構苦しいなと思うシーンがありました。マスタンドレアが上手すぎるのだと思いますが、この旦那はキッツいです。娘が母親に「どうして逃げようとしないの?」というのも理解できます。

夫には娘一人と息子二人を育てるには不十分な稼ぎしかないらしく、「半地下」のような、外からの埃が天窓から入ってくるような住まいで暮らしています。服も繕いながら着て、子供たちに持たせるお弁当もスライスしたパンを数切れだけ。寝たきりの舅の世話もしていて、その舅も決してやさしくはない。

生活の足しに彼女自身が4つもの単発仕事をハシゴしながら掛け持ちしているのにも関わらず、夫は彼女を無能者扱い。

そして、夫はキレると彼女に対して暴力までふるいます。

コンプライアンス時代の現代から見るととんでもない環境です。

彼女にとって希望の端切れのようなものもいくつか示されますが、マイナスがあまりにも大きすぎる。

映画の後半。

そんな、夫や世の中に「何もできない人」扱いされている彼女が「何かはできる」ことを行動で示します。

意外な大胆な行動。ひょんなことから味方になったアメリカ人の助けを借りてびっくりするようなことをします。

そして、ラスト。

しっかり観客を裏切ります。

そう来たか、という感じ。

タイトル通りのセリフが出てきますが、これも、そういうことだったか、と。

冷静に考え直すと、ラストシーンのあとどうなるのか疑問は残ります。それでどうなる?すぐには解決しないよね?という思いはあります。

それでも、とにもかくにも、自分の行動がもたらす「大きな希望」があること自体が救いになる、ということなのでしょう。

今の日本ではこんな環境に置かれることはそうそうないとは思うものの、彼女(たち)の「大きな希望」に見合う社会になっているのか?というと、まだだなぁと思うところもあります。

男性が観るとどう感じるのか、も気になるところです。


今年は劇場で結局6本の映画を観ました(オンラインでもまだ観るかもしれません)。この作品、事前の期待が高すぎたこともあり、終わってみたら今年のナンバーワンとはなりませんでした。でも、とても話題になったというのは、わかる気がします。

ちょうどイタリア語のレッスンで女性の歴史のテーマの部分を勉強していたところだったので、すごくシンクロした内容だったのは面白かったです。
マンマが強い、女性が強い、と言われるイタリアですが、女性の立場が確立されたのってまだ最近なのですよね。

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