イタリア映画祭 2024 別の世界 (原題:Un mondo a parte)
アントニオ・アルバネーゼ主演のコメディ…なのかな。思ったほどコメディ一色ではなかったです。
相手役の ヴィルジニア・ラッファエーレは、つい先日観た "Tre di Troppo" の妻(お母さん)役の俳優。
コメディなのですが、社会問題もまじめに扱っていて、ただのコメディとは感じませんでした。
アルバネーゼは、やっぱり味のある役を演じていました。環境になじめない最初のうちの滑稽さ、なじんできてからの言動。
社会問題の部分は、過疎地における小学校の存続の問題。学校がなくなると人がいなくなり、町が消えてしまう…という事態。実際にイタリアの地方でも起きている問題なのでは。
教師がいくつもの学校を掛け持ちで仕事をしていたり、その街に必ずしも住んでいなくて時間をかけて通勤していたり。
この作品の舞台になっているアブルッツォ州の村でも生徒数が少なくなって廃校の危機に陥ります。なんとか生徒数を確保するための奮闘が面白いのですが、解決策にも社会問題が絡んできます。
エンディングのタイトルバックで、生徒役の子供たちが実際にその地方の子供たちであること、ウクライナ人生徒役とその母親役の数人が本物のウクライナ人であることも披露されました。
山間の町なので、冬は雪に覆われて生活も大変そうな町。
「山がなせるワザさ」
このセリフが何度も出てきます。イタリア語聞き取りたかったけれど、聞き取れませんでした。
こんなことを言いながら、不便さとつきあっている、そんなことを描いていたようです。
ラストで季節が夏になり、景色が一変します。素晴らしい緑に囲まれた世界。でも途中で「都会から週末の観光に来る人にはわからない」みたいなセリフもありました。
美しい自然や小さな町も守りたい、でも現実的な決断が必要なこともある、その間での難しい決断が、実際にあちこちでされているのかもしれません。
重くなり過ぎずにそういったことを描いているのが良かったです。