葛藤に一雫(ショートショート)
優等生なんて。
なんも優れてない。
等しく人を見ていない。
なんなら生きてるか怪しい。
よくいうよ。
また、あんたそんなこと言ってんの。
あんたが入りたがったんでしょ。
優等生のカテゴライズに。
そこにハマるように自分を作ったのはあんたよ。
あの子より褒められたい。
あの子より勉強ができると言われたい。
綺麗な板書を褒められて、得意げにして。
学級委員を任されて、選ばれたらはにかみながら
引き受けて。
あんた、自分で自分になったのよ。
いいこだね。
すごいね。
頭がいいね。
お母さんが嬉しそうだったんだもの。
お父さんの機嫌がよくなるんだもの。
それで。
だから?
なんであんたは嬉しくないの。
なんであんたは機嫌が悪いの。
なんでだろう。
あたしは、そうじゃないって気が狂いそう。
いいこじゃない。
すごくない。
頭なんてそのうちバレる。
あんたさ、周りはみんなバカだと思っているけど
あんたが1番卑しくて不平等でバカだよね。
そこまでいうの?
言うわね。本当だもの。
いつまで取り繕うつもり?
いつまで笑えるの?
いつまで、期待に応えられる?
そろそろ、無理かな。
私、もう少しできるつもりだったけど。
お父さん、がっかりするよね。
お母さん、悲しむよね。
そうね。そうかもしれない。
それで。
だから?
あんたが、少しずつ自分の形を変えていくことを
止めるようなことはしないはずよ。
あんたは、もうはみ出ているの。
もう、優等生のカテゴライズには戻れないのよ。
頑張っても?
頑張り方変えたら?
ええ。無理よ。
知ってる?
何を。
お父さんとお母さんの気持ち。
私がいい子なら嬉しい?
バカか。
私ができが良ければ自慢?
バカやろう。
あんたが、あんたであればそれでいいの。
出来の良さより。
健やかであるかより。
幸せであるかより。
あんたがあんたで生きていることだけで光。
ひょえ。
あんたもバカだけど
その親だから、さらにバカよ。
ひょえ。
欲を言えばよ。
あんたがムスッとしてるより
笑っていたら、嬉しいかもね。
でも、取り繕いや愛想は逆に悲しくさせるわ。
だから、あんたはもうあんたになればいい。
ねえ、かなり乱暴よね、失礼だわ!
もちろんよ、だってあたしもあんたよ。
あたしってかなり嫌なやつね。
やだ、今更?
だけど、あんたとあたしでこの体
乗りこなしていこうじゃないの。
結構、楽しくなるはずよ。
お気持ちありがたく頂戴するタイプです。簡単に嬉しくなって調子に乗って頑張るタイプです。お金は大切にするタイプです。