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表現プロレス


この人には敵わないけれど、この人とはずっとお手合わせ願いたいと思う。


表現という舞台にあがり、互いに自分の型を持ち、キャラクターがあり、勝ち負けよりも戦い方や生き様を魅せていくということで、私はこの人と、同じようにリングに上がっていたいと思う。


アイデアとか思いつきとかが泉だ。


とめどなく溢れているし、枯渇しない。


だから立ち止まれないし、抱えきれない。


大事に作り上げた精密なガラス細工を、躊躇なく空に放り投げるような文章を書く。


くまさんはそれを刹那と言った。


私はそれをスクラップアンドビルドだと思っている。人から新鮮でも彼女には老朽なものがたくさんあるのだろう。


今回彼女が本を作った。


届いた時から不穏。説明もなくそれは梱包されてミシンで縫い付けられていた。

これ、開封していいの?とあやしもさんに聞いた。


なりたがらないにも程がある


中には25人だけの読者に向けて、彼女が書いた作品がポストカード大の紙に印刷されていた。


投げやりに見えたり、ぽんこつに見えたり、薄暗く汚れたアスファルトから、嫌な匂いがたちのぼるような情景が浮かび上がる時も


結局はほだされて、諦められなくて、どうしたって愛してしまうような短編が収められている。


その絶妙なバランスは計算ではなくて生き様だ。


この人はきちんと計量しなくても、野生の勘で、自分の道のりで、人を唸らせる文章を作る。


本当に憎たらしくて、本当に困る。


絵も描けるのに文章も書けるとか、毎回言うけど勘弁してほしい。


彼女に惹きつけられて、彼女を傷つけて離れていく人の気持ちが私にはわかりすぎる。


わかりすぎるから、絶対に私はこの興行を見届けたい。彼女の表現プロレスに私も食らいついていきたいと思うのだ。


散々嫉妬している。飽きるほどに。


わざわざ嫉妬して、がっかりするために2500円払ったとも言える。


ということは、ただ彼女の本は素晴らしかったということだ。


こだわり抜いた紙質、装丁、イラスト、文章。


世界で25人しか手にしていない。データは捨てられた。


とんだ酔狂作家である。


彼女の表現はこれからも続いていく。


今、私が手にしているものはそのかけらで


また、新たなきらめきを濁りを創造するだろう。


何回も嫉妬して、マットにひれ伏すことになろうと、私もやはり書き続けたい。


私は私のやり方があると、彼女の表現は私を鼓舞するものでもある。


本、ありがとう。私もまた作るよ。私のスタイルで、何度もリングに上がるよ。


#note
#微熱さんへ

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おだんご
お気持ちありがたく頂戴するタイプです。簡単に嬉しくなって調子に乗って頑張るタイプです。お金は大切にするタイプです。