シェア
豚汁といえば三日目なのである。 一日目の豚汁はまだ愛想が足りない。初対面だからと、なんだかやけにすましている。ただ、それも考えてもみれば仕方のないことで、ぐつぐつぐつぐつ長いこと煮込まれていたかと思えば、いきなりフタを開けられて、見知らぬお父さんお母さん娘息子が覗き込んでいるのである。誰だって緊張する。 それが二日目になると、とたんに顔を綻ばせる。チョロい。玉ねぎと人参と里芋の、甘い香りがする。脂ぎっていた表面がちょっとだけぐずついて、とろんとした顔つきになる。「好
わたしはいま、24歳である。 そこから30の年を重ねると54歳で、わたしは普段、このへんの年齢層の方々と接することが多い。それは先生であったり、お客様であったりする。 40の年を重ねると64歳。これは、ちょうどわたしの両親の歳に近い。――と書いて、新年早々ぎくっとなる。60前後といえば、世間一般、もう孫がいてもいい年ごろなのに、孫どころか義理の息子・娘の影も見えてこない。悪いことをしているとは思う。 さておき、上には上がいる。 わたしの祖母である。もう90歳
「さわってもいいですか?」 今日も今日とて、ビビリな我が家の犬は、子どもの一声にあられもなく逃げ惑う。 うちの犬はなんとも言えない顔立ちである。 角度次第ではなかなかイケメンだったり、天使のようだったりするが、口がでかい。狼さながらである。 そして、ビビリな彼は、常に「ケッケッケッケッ」と大口開けてせわしない呼吸をしながら歩く。 これがけっこうな迫力なのだった。チワワなぞ向こうから歩いてこようものなら、相手のほうからビビって避けてくる。いや、ビビってる