大型犬と暮らす

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 全くひどい話だ。
世のラブラドールの飼い主や、ラブの愛好家はきっと呆れるに違いない。
 何の知識や経験もなく、一目惚れでラブラドールを飼い始めたのは2019年の正月明け、その時ジョンはまだ2カ月の子犬だった。

  近所のスーパーマーケットの駐車場で、わんにゃんフェスタという催事があった。
山梨県にあるペットショップが大移動しての販売会、大型テントに子犬や子猫の入れられたケージやサークルが所狭しと並んでいた。
 そのうちの一つに私の目は釘付けになった。黒い毛並みとつぶらな瞳、手を差し出すと夢中で甘噛みしたりなめまわしたり。
 予算は完全にオーバーだったが、この愛くるしい黒ラブパピーをどうやって手に入れるか、そのことで頭がいっぱいになった。
 
 東京にいたころから、次男は犬を飼うことを懇願していたが、狭いマンション暮らしで、しかも動物の毛にアレルギーがあったから、広い庭付きの家に引っ越したらねと約束していた。
 移住してその条件が揃ったわけだが、主人も含めた話し合いでは、厳しい寒さの中でも完全に外飼い出来る犬をと。そう、私たちは番犬を探していたのだ。
 外飼い出来るかとの問いに、「ラブは特に人好きな犬種で、室内飼いが適しています。けれどかなり頑張ってしつけないと、家の中はめちゃめちゃにされてしまうでしょう」
もしもペットショップの人がこんな風に答えてくれたら、さすがの私も躊躇したかもしれない。
 寒さに強いから外飼いも可能という返事を鵜呑みにした私は、渋る主人を拝み倒す形で、その愛らしい子犬を手に入れたのだ。

 ジョンを迎えた年の春に、古民家カフェをオープンする計画があった。
それまで住んでいた古民家は完全にカフェ(レストラン)スペースにするため、敷地内に急ピッチで建ててもらった小さい家に、春には移動する予定でいた。
 最初のうちこそ、ジョンは古民家の玄関の中を柵で囲って寝起きさせていたが、家を移るタイミングで、当初の計画どおり外の犬小屋で飼うつもりでいた。
 ところがジョンと接するほどに、外で過ごさせることが不憫でならなくなった。
かといって、新築の家の中で放し飼いにする勇気はどうしても持てなかった。
 古民家に作った木の柵やホットカーペットのコードは何度も噛み砕かれたし、ネットには「ラブは破壊魔」という情報があふれていた。
 結局新築の家のダイニングルーム脇にサンルームを設置し、そこがジョンの居場所になった。
 サンルームが完成するまでの2、3日、外の犬小屋で寝かせたのだが、その時のことを思いかえすと、今でも胸が苦しくなる。ジョンはどんなに寂しく不安で心細い思いをしたのだろうと。
(大型犬と暮らす2に続く)

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