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忌野清志郎さんの『世界中の人に自慢したいよ』(1996年)
「きみとふたり 暮らせるのなら 他に何もいらない」から始まる名曲ですね。純粋な喜びと親密さが真っすぐ表現されている歌詞にグッと来たので、少しだけ。(個人的な解釈も多大に含んでいますが、ご容赦ください。)
ぼくは ぼくは自慢したいよ きみのこと 僕ときみのことを
まず何よりも、曲名にもなっている箇所周辺の歌詞が本当に素敵なんですよね。「きみと日々を暮らし、一緒に幸せになること」を待ち望んでいる心情が熱情的に歌い上げられて、かなり終盤の方に本フレーズが登場します。
欠点とか変な癖とかそういうものもたぶんあるんだろうけど、丸ごとひっくるめてかけがえのない、きみという存在と出会い、そして、そんなきみと恋人になり、おたがいに想い合えているこの僕の幸せを、もう世界中に自慢したいくらいに、きみのことを愛おしく思っているよ、っていう。
「自慢したいよ」というのは、たぶん何も、本当に人に自慢したり、SNSとかで恋人のことを見せびらかしたりすることを意味していないと思うんですよね。世界中に自慢したいくらいだよ、という比喩で。本当に大切なものって、他の人からどう見えるか/言われるかに関係なく自分にとっては絶対的に大切だから、むしろ他人による評価対象のステージに乗せたくない、と思うことさえありませんか。不要なやっかみを招いたり、否定されて悲しくなったりするかもしれないし。
あと、「みんなに 町中の人に もっと自慢したいよ」の「町中」というのも何だか良いですね。みんなに、の後に何が来るのかなと思ったら、「町」なんだっていう。規模が予想よりも随分小さくて、可愛いなと。
たとえ空が落ちてきても ふたりの力で 受け止められるさ
「愛し合っているなら 他に何もいらない」の後の、この箇所。これもまたいいですよね。僕が守ってあげるからね、とかじゃなくて、きみと僕なら二人で力を合わせて乗り越えていけるに違いないよね、大丈夫だよといった感じで。おたがいを信頼し合っている親密な関係が見えてくるような。
あと「空が落ちてきても」というのは、リアルに想像するとかなり絶望的な状況のように思える比喩ですが、言葉の組み合わせが素敵だなと感じます。『JUMP』でも「夜が落ちてくる その前に」というフレーズがあって、清志郎さんのお気に入りの語感だったのかなと思ったりもしました。
ぼくとふたり 暮らしておくれよ きっと幸福になろう
これもまた…。
必ず幸せにするよ、とか幸せになれるよ、ではなくて、きっと幸せになろうよ、なんですよね。きみと、大好きなきみと過ごす僕の生活は、まだ先のことだから断言はしないでおくけれども、たぶん幸せになれると思うんだ、なろうよ、という。心がギュッとなりますね。
ちなみに、矢野顕子さんとの『ひとつだけ』も大好きです。
忌野清志郎さん、ありがとう。