《神話-13》エロスとプシュケー
こんにちは。
Ayaです。
すでに脇役として登場している愛の神エロスと、その妻プシュケーについてとりあげます。
エロス
エロスの出生については2つの説があります。
アフロディーテとアレスの息子という説と、カオス(混沌)から最初に生まれた神という説です。
一般的には前者のほうが有名ですが、私的には後者を推していきたいと思います。後者の説だとアフロディーテの養子ということになりますが、『愛(エロス)があったので、生物が創造された』と解釈できるので、ロマンチックに感じませんか←
話がずれてしまい、申し訳ありません。どちらにせよ、美と愛欲の女神であるアフロディーテとともに描かれることの多い神です。
当初は青年の姿で描かれていたエロスですが、時代が下るにつれて少年、幼児化していきます。キリスト教美術が広がると、幼児に翼が生えた姿は天使とにており、混同されてしまうことがたびたびありました。見分ける基準として、『愛の矢』が重要になってきます。
『愛の矢』とは、『黄金の矢』と『鉛の矢』の2種類があり、それぞれ目の前の相手に恋に落ちる・毛嫌いするという効果を持つものです。アポロンとダフネーのエピソードでも取り上げたように、神でさえこの魔力に勝てないので、ゼウスの雷鳴より恐れられていました。
今回取り上げるエピソードは、エロス自身がその『愛の矢』の魔力に囚われてしまったというところから始まります。
プシュケー
ある国に美しい3人の王女たちがいました。特に末のプシュケーは抜きん出て美しく、美の女神アフロディーテより美しいと噂さされるほどでした。この噂を聞きつけたアフロディーテは怒り、エロスに縁談が来なくように『鉛の矢』で射ってこいと命じます。
エロスはアフロディーテの命令を実行しようと、プシュケーの寝所に忍び込みます。しかし、彼女の美しい寝顔に見惚れ、誤って『黄金の矢』でケガをしてしまいます。
エロスがプシュケーに恋におちた瞬間でした。
恋に落ちたエロスは、縁談の男たちに嫉妬して、とりあえず『鉛の矢』で射って立ち去りました。
上の2人の姉たちが嫁ぎましたが、縁談が山ほど来ていたプシュケーは一向に決まりません。心配した両親はプシュケーを連れて神託を伺います。
神託は『プシュケーの相手は人間ではない。山の頂に捧げよ』という内容で、どう見ても生贄に捧げられるというものでした。プシュケーは恐ろしくても神託に従うことにきめました。
山の頂に置き去りにされたプシュケーは、西風ゼピュロスに連れられて、豪華な新居に案内されます。そこでは『私があなたの夫だ。あなたの望み通りの生活を保証する。だが、私の姿を絶対に見てはならない』との声が聞こえました。最初は怯えていたプシュケーですが、大切に扱われ、次第に心を許していきます。
その正体は勿論エロスであり、夜中プシュケーを訪れて、プシュケーが目覚める前に帰っていったのです。
しばらくすると、プシュケーは自分が無事でいることを親族に知らせたいと思うようになりました。姿のない夫をどうにか説得して、2人の姉たちを連れてきてもらいました。
2人の姉たちは生贄になったと思っていたプシュケーが生きていたことに驚いたのと同時に、自分たちより豪華な生活を送っていることに嫉妬しました。プシュケーが『夫の姿をまだ見てない』と知ると、心配しているふりをしながら、『姿を見せないのは、怪物だからだ。太らせて食べようとしているんだ』と、寝所で姿を確認して、怪物だったら殺すように唆しました。
姉たちの脅しをすっかり信じてしまったプシュケーは、寝所で眠っているエロスの姿を見てしまいます。目を覚ましたエロスは自分を信じていなかったプシュケーに怒り、立ち去ってしまいます。
エロスが立ち去った瞬間、新居は消え去り、プシュケーはまたも山の頂に取り残されてしまいました。プシュケーはエロスを求めて旅に出る決意を固めます。
アフロディーテの試練
一方、アフロディーテは激怒しました。プシューケーは自分と美しさを競っただけでなく、大事な息子エロスを誘惑したと解釈したのです。アフロディーテは自分とのキスを懸賞にしてまで、ちなまこになってプシュケーを探しました。
プシュケーは誤解を解いてエロスに会わせてもらおうとアフロディーテのもとに出頭します。
アフロディーテから激しい折檻をうけたプシュケーでしたが、エロスに会わせてくれと譲りません。そこでアフロディーテはプシュケーに試練を与えます。
(1)神殿の大量の穀物を種類ごとに分ける。
(2)危険なところにいる羊から羊毛をとってくる。
前回紹介したヘーラクレースだったら棍棒でなんとかするでしょうが、プシュケーの場合はエロースがなんとかしてくれました。勿論アフロディーテに見張られているので直接助けるのではなく、動物たちを使ってですが。
アフロディーテもエロスの介入があるとわかっているので、3つ目の試練には『冥界に行って、冥界の女王ペルセフォネーから《美の秘薬》をもらってくる』にしました。
プシュケーは死ななければ冥界に行けないと絶望しましたが、なんとかエロスは死ななくとも冥界に行ける方法を教えます。それは伝令神ヘルメスの秘儀を受けて冥界に連れて行ってもらうというもので、いわば冥界ツアーです。このツアーに参加して、プシュケーはなんとか冥界に辿り着きました。
プシュケーからいままでの経緯を聞いたペルセフォネー。実はアプロディーテとアドニスの愛を争った過去があり、アプロディーテをよく思っていませんでした。プシュケーの話を聞いて同情したふりをしながら、箱に《眠り》を詰めて、プシュケーに『絶対に開けてはならない』と命じて渡しました。
冥界から戻ったプシュケーはやっとエロスに会えると心踊らせました。しかし、湖面に映った自分の容姿を見て、アプロディーテの試練のせいで老けこんでしまったと気がつきます。この容姿ではエロスに会えたとしても幻滅されてしまうかもしれないと考え、ペルセフォネーからもらった《美の秘薬》が入った箱を覗いてしまいました。
プシュケーが眠りから目が覚めると、エロスがいました。キスでプシュケーを目覚めさせたのです。2人は再会に感動し、抱き合います。
アフロディーテはまだ納得していなかったのですが、他の神々の説得を受けて二人の結婚を認めました。ゼウスの許可を得てプシュケーは神に列せされ、2人の間にはウォルプタース(喜び)という女神が生まれました。
エロスとプシュケーのエピソードは以上です。プシュケーは『魂』という意味で、この物語は『魂は愛を求める』という解釈がされます。2人の間にウォルプタース(喜び)が生まれたのは、『愛と魂が揃わなければ、喜びは生まれない』という意味だとされています。
ちなみに夫エロスが幼児化しているので、プシュケーも幼く描かれることがあります。
とても可愛いですね。
次回は《無駄話》を更新する予定です。
《追記》
2023年に開催予定のルーブル美術館展は愛がテーマです。
本稿のトップ画面に使ったブグローの『アモルとプシュケー』が展示される予定です。楽しみです。
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