《神話-14》ギリシア神話の悲恋
こんにちは。
Ayaです。
今日はギリシア神話の悲恋を取り上げます。
エーコー
エーコーはニンフのひとりで、おしゃべりで明るい性格でした。
エーコーたちニンフと、ゼウスが戯れていたとき(今でいうキャバクラか)、へーラーがいつものように浮気調査にやってきます。
ゼウスとその相手たちを逃すため、ヘーラーに声をかけ、取り止めのない話をするエーコー。当然バレており、怒ったへーラーはエーコーに呪いをかけます。それは相手の話を繰り返すことしかできないという呪いでした。
この呪いのため、明るかったエーコーは別人のようになってしまいました。
ナルキッソス
そんなとき、絶世の美男子・ナルキッソスがやってきます。ナルキッソスに恋したエーコーでしたが、相手の言葉を繰り返すことしかできないので、声もかけられません。勇気を出してナルキッソスの言葉を繰り返したが、ナルキッソスに気持ち悪がられたとも言われています。エーコーは悲しみのあまり姿を消し、声だけの存在となってしまいました。いわゆる『こだま』となってしまったのです。
さて、ナルキッソス。彼が生まれたとき、予言者テイレシアースは
『己を知らないままであれば、長生きできるであろう』
と予言しました。その通りの運命を辿ることになります。
美しく成長したナルキッソスですが、エーコー以外の女性たちにも冷たくあたり、彼女たちの恨みを買います。彼女たちは復讐の女神ネメシスに自分たちと同じ苦しみを味わうよう願いました。彼の傲慢な態度を見ていたネメシスは彼女たちの願いを叶えてやることにしました。
ナルキッソスは狩りの途中で水を飲もうと、水面を覗き込みます。この瞬間、水に移った自分の姿に恋してしまったのです。
ナルキッソスは水面から離れることができずにそのまま衰弱死してしまったとも、口づけをしようとして水死したともいわれています。彼が亡くなったあと水仙が咲いていたので、水仙を『ナルシス』と呼ぶようになりました。
話は変わりまして、古代ギリシアでは、1日のサイクルはこのように回ると考えられていました。
曙の女神・エオースが朝を告げ、太陽神・ヘリオスの馬車が走り抜け、月の女神セレネーが銀の馬車で夜空を駆けるといったぐあいです。
この三柱の神々は兄妹神にあたり、それぞれエピソードが伝わっていますが、今日はセレネーとエオースについて取り上げます。
エンデュミオン
いつもどおり月の女神セレネーが銀の馬車で夜空を駆けていると、羊飼いのエンデュミオンを見つけました。
眠るエンデュミオンの姿に恋したセレネーは最初寝姿を見ているだけで我慢していましたが、我慢できなくなり、彼の夢の中に入ってしまいました。エンデュミオンも美しい女神に恋をして、ふたりは両思いとなりました。
両思いとなったふたりでしたが、問題がありました。それはエンデュミオンが人間であること。人間は老い、そして死から免れません。セレネーがゼウスに相談すると、『永遠の眠り』について美貌を保つか、普通の人間として死ぬかという選択肢が与えられました。エンデュミオンは前者を選び、『永遠の眠り』につくことになりました。
セレネーは眠り続けているエンデュミオンのもとを毎夜訪れて彼を愛撫し、50人ものこどもたちを出産しました。しかし、いつまでも彼が目を覚ますことはありません。月が寂しげな光を放っているのは、このためなのかもしれません。
エオースの恋
一方、曙の女神・エオースは奔放な性格でした。これは内縁の夫アレスを寝取られたアフロディーテの嫌がらせで、年がら年中恋をする多情な性格になってしまったのです。
ある朝、いつもどおりエオースが朝のパトロールをしていると、ティトノスという美青年を見つけました。この美青年に恋をしたエオースは、早速彼を連れ去ります。
姉妹神・セレネーとエンデュミオンの悲恋を見ていたエオースは、同じ轍を踏まず、ティトノスと楽しく過ごそうと画策します。ゼウスにお願いして、ティトノスを不死にしてもらったのです。
こうして楽しく過ごしていたエオースとティトノスでしたが、ある日ティトノスに異変が起こります。白髪やシワが急に増えてしまったのです。
ゼウスがティトノスに与えたは不死であって、『不老』ではなかったのです。エオースは失敗に気が付きましたが、神の言葉は取り消せません。ヨボヨボの老人になったティトノスに、もともと多情なエオースは愛想を尽かし、彼をセミに変えてしまいました。
恋多きエオースの次の相手は、ケファロスという既婚の男性でした。ティトノスと同じように彼を連れ去ったエオースでしたが、ケファロスは妻を裏切ることになるからと彼女の誘惑を退けました。
エオースはこれに怒り、「きっと後悔する」といって、彼を返しました。すると彼女の呪いのためか、ケファロスは事故で最愛の妻を殺してしまったのです。
他にもギリシア神話にはたくさんの悲恋がありますが、今回はこれで以上とします。
エーコーは『やまびこ』、ナルキッソスは『自己愛』の意味で、我々現代人にも知られていますね。心理学ではギリシア神話のエピソードから学名を付けられていることが多いようです。
アルテミスの回で述べた通り、セレネーはローマ神話ではアルテミスと同一視される存在ですが、エンデュミオンのエピソードは有名ですね。月光は『純潔』の象徴であるとともに、『寂しさ』の意味もあるのかもしれません。
エオースはとてもわがままですが、神様らしいともいえるのかもしれません。彼女に好かれたが故に人生を狂わされた二人の男性には同情を禁じ得ませんが。いわゆる『ファム・ファタール』なのかも。
今回取り上げられなかったヘリオスについては、次回取り上げます。