《神話-12》ヘーラクレース
こんにちは。
Ayaです。
今日はギリシア神話最大の英雄・ヘーラクレースについてとりあげます。
12の試練
へーラーの狂気によって妻子を殺してしまったヘーラクレースは贖罪のため、ミュケーナイ王エリュステウスに仕えることとなります。
実はこのふたりは親戚にあたり、本当はヘーラクレースがミュケーナイ王になるはずでした。しかし、ヘーラーがヘーラクレースの誕生を妨げたため、エリュステウスが先に誕生し、ミュケーナイ王位を継承することになりました。こんな経緯もあるので、エリュステウスはヘーラクレースを警戒し、次々に難題を与えていきます。(ヘーラクレースの誕生についてはこちらをご覧ください)
(1)ネメアーの獅子
最初の試練。この獅子は強靭な皮を持っていて、矢では全くダメージを受けませんでした。そこでヘーラクレースは洞窟に追い込み、その中で三日間かけて絞め殺しました。
ヘーラクレースはこの獅子の強靭な皮に注目して加工し、鎧を作りました。この鎧はヘーラクレースを象徴するものとなります。
(2)エルネーのヒュドラー
この退治では甥が助っ人として参加します。
ヒュドラーとは9つの頭をもつ蛇の怪物で、触れただけで死んでしまう猛毒を持っていました。さらに頭を切ると、ふたつに分かれて蘇生してしまうため、退治は難航しました。そこで、ヘーラクレースは甥に頭を切ったあと火をつけさせ、連携プレイで成功させました。
甥との連携プレイで退治をしたため、功業にカウントされず、ひとつ追加となってしまいます。
ヘーラクレースはヒュドラーの毒に注目し、矢に塗って使うようになりますが、後々問題となります。
(3)ケリュネイアの鹿
ケリュネイアの鹿はアルテミスの神獣で、5頭のうち4頭はアルテミスの戦車をひいていました。残り1頭は足が早すぎてアルテミスでも捕らえることが出来なかったのです。ヘーラクレースはこの1頭を追いかけることとなります。アルテミスが殺すのを禁じていたため、ひたすら追いかけ続け、1年後やっと捕まえました。エリュステウスに見せたあとは、アルテミスに捧げられ、他の4頭と同じように彼女の戦車をひくようになりました。
(5)エリュマントスの猪
この猪は人喰いの怪物でしたが、あっさり捕まえることができました。
問題はそのあとです。協力してくれたケンタウロス族(半人半馬の種族。遊牧民を象徴していると考えられる)のもとで歓待をうけていたのですが、酒に酔った彼らのケンカに巻き込まれてしまいました。そのとき、ヘーラクレースは毒矢を射ったのですが、その矢がケイロンに当たってしまいます。ケイロンはアスクレーピオスやデュオニュソスを育てた賢者で、不死身を与えられていました。そのため死なず、猛毒に苦しめられることとなってしまいます。
ケイロンから『同じように不死身で苦しんでいる者を解放してくれれば私は死ねる』と言われたヘーラクレースは、人類に火を与えたプロメテウスを解放します。こうしてケイロンは苦しみから解放され、ゼウスは彼の功績を讃えて射手座にしました。(またプロメテウスから予言を聞き出すことに成功しました。詳しくは第4話をご覧ください)
(5)アウゲイアースの家畜小屋
エリース王アウゲイアースは3000頭の牛を飼っていましたが、家畜小屋は全く掃除していませんでした。
ヘーラクレースがアウゲイアースのもとを訪れると、アウゲイアースは不可能だろうと思い、『もし1日で家畜小屋を掃除したら牛の1割をやろう』と約束してしまいました。
ヘーラクレースはこの約束に俄然気合いをいれ、二つの川の流れを変えて一気に水を流して、掃除したということにしました。
アウゲイアースは激怒し、約束の報酬は払われませんでしたし、エリュステウスにも『報酬を目的としたものは功業に数えない』と言われてしまい、無駄骨になってしまいました。
(6)ステュムパーロスの烏
ステュムパーロスの烏はアレスの愛するカラスでしたが、鳴き声と羽音、フンが問題となっていました。ヘーラクレースもあまりの量に無理と感じましたが、ペパイストス特製のガラガラで驚かせ、脅しに2、3羽射ると、退散しました。
(7)クレタの暴れ牛
クレタ島には美しい牛がいました。実は神罰で遣わされた牛で、王妃はこの牛に恋して、怪物ミノタウロスを産んでしまいます。(この話が前回・前々回にとりあげたテセウスとアリアドネーの物語に繋がります)目的を果たした神はこの牛を暴れ牛にしてしまいました。
ヘーラクレースが捕まえようとすると、すぐ大人しくなり、生捕りに成功しました。
(8)ディオメーデスの人喰い馬
トラーキア王ディオメーデスは人喰い馬を飼っていて、旅人をエサとしてあたえていました。
このころには、ヘーラクレースの功業も知られており、彼を慕う人々が付き従っていました。そのなかに、アプデーロスという少年もいました。
さて、ヘーラクレース一行がたどり着くと、ディオメーデスはエサがやってきたと馬小屋に送り込みます。一行はすぐ反撃を開始し、人喰い馬だけでなく、他の馬たちも略奪しました。ディオメーデス王が馬たちを取り戻そうと追ってくると、ヘーラクレースはアプデーロスを見張りに残して防戦しました。
防戦から戻ってくると、アプデーロスがいません。人喰い馬に襲われてしまったのです。へーラクレースは悲しみ、ディオメーデス王を捕らえると、人喰い馬にエサとしてあたえました。人喰い馬は飼い主とは分からず、ディオメーデス王は喰われてしまいました。ヘーラクレースはさらに街を築き、死んだアプデーロスにちなんで名前をつけました。
(9)アマゾンの女王の腰帯
エリュステウスの娘の望みを叶えるためのものです。
アマゾンとは男性を追い出し、女性が政治を行っている国です。子作りの時期になると、男性を入国させて子どもを産み、男の子は捨てて、女の子だけを育てるという徹底ぶりでした。彼女たちは武装しており強かったので、ヘーラクレース一行も難しいのではないかと考えていました。
アマゾンに入国すると、女王ヒッポリューテと謁見し、事情を説明しました。するとヒッポリューテはヘーラクレースの強靭な肉体に一目惚れし、子作りに協力してくれれば、腰帯をくれると約束してくれました。ヘーラクレース一行は予想と違い、歓待されてひと段落しました。
しかし、いつもどおりへーラーは気に入りません。そこで、へーラーはヒッポリューテに変身し、アマゾンの女性たちを『ヘーラクレース一行はこの国を乗っ取ろうとしている!』と煽ります。アマゾンの女性たちには怒って、ヘーラクレース一行を襲撃しました。
ヒッポリューテは否定しましたが、ヘーラクレースは騙されたと判断、ヒッポリューテを殺害しました。
こうして帯を手に入れましたが、冷静さを取り戻したヘーラクレースはヒッポリューテが嘘を言っているようには見えなかった、話をきけばよかったと後悔しました。
(10)ゲーリュオンの牛
ゲーリュオンという人物が飼っている牛でしたが、世界の果てで飼っていたため、常人には辿り着けない場所でした。
ヘーラクレースはアフリカに上陸しましたが、あまりの暑さに怒り、太陽を射おうとします。太陽神ヘリオスは怯え、黄金の盃を貸し与えてくれたので、それで海を渡ることができました。
目的の牛を奪い、帰り道でジブラルタル海峡を渡ったとき、岬を作りました。この岬は『ヘラクレスの柱』と呼ばれています。
(11)ペスペリデスの黄金の林檎
ペスペリデスは世界の果てで黄金の林檎の木を守っている娘たちです。
助けたプロメテウスから『ペスペリデスはアトラスの娘たちなのだからアトラスに取りに行かせればよい』との助言を受けました。アトラスはプロメテウスの兄で、ゼウスとの戦いに敗れた後、黄金の林檎の木のそばで、天空を支え続ける刑を受けている神です。
ヘーラクレースはたどり着くと、アトラスに『天空を支える役目を代わるので、黄金の林檎を取ってきてくれないか』と交渉しました。アトラスはすこしでも変わってくれると喜び、黄金の林檎を取ってきてくれました。
(12)地獄の番犬ケルベロス
ケルベロスは地獄の番犬で、3つの頭を持つ怪物でした。
飼い主であるハーデスと交渉し、傷つけないという約束で生捕りにしました。この帰り道で、イスに縛り付けられていたテセウスらを助けました(前回をご覧ください)
明るい場所に引き出されたケルベロスはびっくりし、ヨダレを垂らしました。このヨダレがトリカブトとなりました、
エリュステウスはやっとヘーラクレースを認め、ヘーラクレースの贖罪の旅は終わりました。
ヒュラースとニンフたち
この12の功業の間にも、ヘーラクレースはアルゴス号の冒険に参加していました。このときはヒュラースという美青年の恋人をつれていました。
ヘーラクレースはヒュラースに水汲みに行かせましたが、ヒュラースの美貌に惹かれたニンフたちに泉に引き込まれてしまいました。
ヘーラクレースはヒュラースの姿を探しましたがどうしても見つからず、アルゴス号の冒険から離脱しました。
このエピソードは男性同士の精神的な愛から、男女の肉体的な愛への移り変わりだと考えられます。なんどか述べていますが、古代ギリシアでは男性同士の愛は精神的なもので、男女の愛は肉体的なものと考えられていました。
また泉に引きずり込むということで、ニンフたちにも『ファム・ファタール』というイメージもつきました。
英雄の最期
試練を乗り越え、新しい妻デーイアネイラとこどもを連れて帰路についていたヘーラクレース。
あるところで、流れの早い川を渡らなくてはならなくなりました。二人を担いで渡るのは難しくて困っていたところ、ケンタウロス族のネッソスがデーイアネイラを運ぶと申し出ます。この申し出を受けて、川を渡っていると、先に対岸についたネッソスがデーイアネイラを犯そうとしていました。
これをみたヘーラクレースはネッソスを毒矢で射ります。矢が当たったネッソスは息絶える直前、デーイアネイラに『自分の血は媚薬になるので、ヘーラクレースの愛を取り戻したければ、衣服に浸して身につけさせてください』と言い残しました。デーイアネイラはこの言葉を信じて、ネッソスの血を採取していました。
それから数年後、ヘーラクレースは捕虜としてイオレーという美女を連れてきました。デーイアネイラはイオレーに愛が移ると考え、ヘーラクレースの衣服に例の媚薬をつけました。
ヘーラクレースが衣服を身につけると、ヒュドラーの毒が作用し、皮膚が爛れて激痛が走りました。かつてのケイロンと同じ状態となったのです。これを聞いたデーイアネイラは罪の意識で自殺してしまいました。
激痛に襲われながらも不死身のため死ねない、もはや生きながら火葬するしかないとヘーラクレースは考えました。祭壇を準備させ、自分の弓を譲った人物に火をつけてもらいました。
ヘーラクレースの魂が昇っていくと、ゼウスによってオリュンポスに迎えられました。いままで迫害してきたへーラーも彼を認め、自分の娘へーべーと結婚させました。こうして彼は神となったのです。
神となったあとのエピソードは伝えられていないので、平和に過ごしているようです。
我が国の神話の英雄・ヤマトタケルも、過労死して白鳥に変身したといわれているので、英雄も大変ですね‥。
最近Twitterと化していて記事の感覚が戻らず、長くなってしまいました汗
次回は『エロスとプシュケー』を取り上げます。