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つらいのは、患者と接することじゃない
今の職場に来て、看護の仕事を初めて辛いと思うことが増えた。
精神科に転職したと言うと、「患者さんと接するの大変でしょ」とよく言われるのだけど、そういうわけじゃない。むしろ、私は精神科の患者さんと接するのは苦ではない(暴力的な患者さんを、怖いと思うことはあるけれど)。
私が最もつらいと思うのは、まわりのスタッフと一緒に働くこと。
なんで?同じ看護師なのに?って思うかもしれない。そう、同じ看護師だからこそ、つらいんだ。
精神科の雰囲気って特殊。本来、患者と医療従事者って対等なはずなんだけど、ここは患者の立場が遥かに下であることが多い。
自分の意思を示せない、感情が表に出ない。日常生活のほとんどを自分で行うことができない。そんな人が数多くいるこの現場で、いつしか看護師は「上から目線」で接することが多くなってしまったみたいだ。
その雰囲気が出来上がった理由は、精神科の歴史にもある。
精神疾患を抱えた患者たちは、ずっと虐げられてきた。
家で閉じ込められ(私宅監置と言う)、精神科病院ができると無理やり入院させられ、その環境は劣悪だったそうだ。
畳に雑魚寝は当たり前、鍵のかかる部屋に閉じ込められるのも当たり前。薬をどんどん投与されて、人間らしさをどんどん失っていく…。
私も人から聞いた話だから、現場を目の当たりにしたわけじゃない。
でも、そんな歴史はそんなに前のことではないそうだ。実際、そういった環境の中で働いていた人が、まだ現場にいたりもするくらいだから、その頃の影響はまだ色濃く残っているんだろう。
それを「当然」として現場で働いてきた人たちの意識の中に、「患者への敬意」とか「ホスピタリティ」なんてあったもんじゃない。だから私は、現場で働くことがつらくなってしまったんだ。
こんな看護師と一緒にしないでほしい。私は患者と接することに、プライドを持っているのに、って。
仕事がつらいならやめればいいのに、っていう人もいるけれど、どんなにつらくても、今のところ私はやめる気になれない。
私がやめたら、そういう現場の問題を提起する人がいなくなってしまうから。
問題意識を感じる人がいなくなってしまったら、そこにいる患者さんを救うことができなくなってしまうから。
私がここに留まっている理由は、ただそれだけなんだ。
私のつらさは、患者さん自身も抱えているつらさ…のはず。
つらい。けど、逃げ出したくない。逃げ出せない人たちのために。