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中国・広州「天河スマートシティ」の夜

なんで中国のコンビニに日本語があるんだろう…不思議だよね。

天河スマートシティの夜って、なんだかジグソーパズルみたい。

ぜんぶが計算されてるようにきっちりしていて、まるで数学の方程式を覗いてるみたいに無駄がないんだよね。

ビルのガラスには、どこか冷たい光が反射してる。滑らかに磨かれた舗道は整然と並んでいて、街灯の明かりまでもが規則正しくリズムを刻んでる。

そのせいか、木々の影まで寸分違わず“ぴしっ”と形作られてる気がするんだ。思わず、「誰かが定規で線を引いてるのかな?」って考えちゃうくらい。

夜の空気はちょっとだけ寒っぽくて、コツコツと靴底が石畳に触れる音が静かに響く。

まるで絵画みたいに広がる街並みに、あたしはぽつんと立ってる。

いつもの散歩の道なのに、今日に限ってすごく整いすぎて見えるのはなぜだろう?

この街の秩序が完璧すぎるのかもしれない。きらびやかで綺麗なんだけど、どこか非現実的な感じがして、今にもゲームのステージから抜け出せなくなりそう。

遠くを走る車さえも、決められたテンポに合わせて流れてくみたい。

タウンバス

なのに、あたしはふと立ち止まりそうになった。

なんでだろう?

耳を澄ませば、駅のホームから「次の電車は〜」なんてアナウンスが聞こえてきそうな気さえする。あるいは、どこかで自動ドアが開く「シュッ」って音が微かに鳴るんじゃないかって。

──そんなわけ、ないよね。

でも心の奥底で、なにかが小さく震えたみたい。

街の端っこに立ったまま、遠くのビルの灯りを見つめる。夜の都会が形作るシルエットに、あたしはそっと溶け込んでみたいと思った。

もし、この完璧に整った景色にほんの少しでも自分の居場所があるなら、まるで“帰る場所”が見つかったような気がするのかもしれない。

だけど、風がさらりと吹き抜けた。木々のざわめきがリアルを呼び戻してくれる。

ここはまだ、あたしの“家”とは言えない場所。思わず息をのみ込んで、歩き出そうと一歩踏み出した。

その瞬間、心の奥で、あの子が小さく囁いた。

「……帰りたい」

その声を聞いた途端、足がかすかに止まる。

いつかあの街に、自分だけの“ただいま”を言える日が来るのかな……

なんて、ほんの少しだけ期待しながら。


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