高林あやか

エッセイスト（元小学校の国語教師）。２０２２年２月、９４歳で他界。生涯に一冊の自伝と日記（大学ノート十数冊分）を遺す。日記の内容と未発表エッセイをこの場で公開（編集：息子）。その内容は、後期高齢者の飾らぬホンネであり、高齢化社会を考えるヒントに満ちている。

エッセイスト（元小学校の国語教師）。２０２２年２月、９４歳で他界。生涯に一冊の自伝と日記…

マガジン

日記より（２０１９～２０２２年）

157 本

母は、９１歳の冬から、意を決したように毎日日記を付け始めた。それは、９４歳の死の前日まで続けられた。そこに綴られた内容は、粉飾のいっさいない偽らざる後期高齢者のホンネである。それは、老境のわびしさや長年の持病の苦しさを抱えながらも、常に季節の移ろいに寄り添い、社会の動向に目を向け、周りの人たちへの気配りを怠らず、自分を厳しく律し続け、日々何かしら楽しみや目標を見出しては、その日一日を充実させようとする姿勢である。後期高齢者とは、若年層との対比で存在する特殊な年齢層ではない。そこには、幼女の純粋さも、血気盛んで好奇心旺盛なティーンエイジャーも、人や社会に対して厳しい批判の目を向ける成年も、悠久の時の流れに身を任せる最晩年の穏やかさも、すべてが混然一体となっている。もちろん母は公開を前提に書いていない。だからこそこの日記は、これから私たちが高齢化社会を生き抜くうえでのヒントに満ちている。

ギャラリー

67 本

母が描いた絵を展示します。

未発表自伝原稿より

18 本

母が自伝として書いた原稿のうち、出版されたのは約半分。残りの原稿をここに未発表エッセイとしてまとめる。そこには、戦前の田舎の暮らし、思春期の娘時代に体験した大戦、復興の担い手として駆け抜けた戦後の暮らしが凝縮して描かれている。これは貴重な昭和史であり、また「おばあちゃんの昔語り」としても楽しめるだろう。