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五稜郭の桜を思い出した

先日、はじめて、夫の仕事先の人を紹介してもらった。
結婚して10年。紆余曲折あったものの、仕事があり、お給料をいただき、そのお金で生活ができてるのは、感謝感謝の気持ちである。

そもそも出会った頃から、夫は人付き合いがほぼないタイプ。
毎晩直帰し、休みの日は100%家にいるおうち大好き人間だ。

そんな夫が、まぁまぁそれなりに社会という荒波にもまれ、会社という組織に属し、チームで仕事をしている。

…嘘だろ笑。

って感じで、なんとなく、フィクション的に思っていたのは、
職場の人たちにあったことがないし、
仕事の話をほとんど聞いたことがなかったからだ。

そんな夫が、初めて、
職場の人と会わないか?と提案してくれたので、
喜び勇んでお会いしてきた。
娘達を連れて。

その会は、和やかな雰囲気で、
みなさん子供達にも優しく、
私は柄にもなく緊張をし、盛り上げ隊長になれなかったことを悔い、
それでも、とっても楽しく過ぎたのだった。

子供は我が家の娘2人しかいなかったので、
もしかしたら娘達は退屈だったのでは?と思い、
帰りの車の中で
「楽しかった?」
と聞いたところ
「すっごく楽しかった!」
とか
「みんないい人だった!」
と、口々に話してくれたので、
そうか、子供達にとっても、そーゆーもんなのか。

と思った瞬間、
ビュンと、私の頭の中に、まるで走馬灯のように、ある光景が浮かんだ。


あれは、私が小学生の頃だ。函館に引っ越してきて、多分初めての春だったんじゃないかな。だとしたら、小学校1年の春だ。
“お父さんの会社の人と、五稜郭公園で花見をするらしい”
という話が私の耳に届いた。
花見かぁ、どんなもんだろう?
桜を見ながらご飯を食べるってどんな感じだろう?
と、想像を膨らませながら、当日を迎えた。


まず、初めて見る、五稜郭公園の桜に、すごくすごく驚いた。あれは、本当に、すごい光景で、今でも鮮明に色まできっちり覚えてるんだけど、
見渡す限りの桜!
そして、記憶の中の五稜郭の桜は、ピンクの色がとても濃くて、まるで雪が降ってるかのように常に花びらがひらひらと舞っている。
「綺麗!」

大人たちはチューリップが咲いても、絶対にチューリップの前でお花見はしないのに、
どうして桜が咲くとお花見を咲くのだろう?と、小さな頃から疑問に思っていたのだけど、
その疑問が解決された瞬間だった。

桜ってこんなに綺麗なのかぁ!と、
あの瞬間に知った。
小1ながらに“感動”したのだ。


あちこちで、大人達がブルーシートを広げ、
陽気に宴会をしている、その様子も衝撃的だった。
ふらふらと鳩を追いかけていると
鳩の餌をやってるお爺さんが私に話しかけてきて
「おい、1000円で1羽、鳩取ってやるぞ、いるか?」
と聞かれたので、母に聞きに行ったら、
恐れ慄いた顔をした母が
「結構です」
と断りに行ってくれた記憶…

あの、桜満開の五稜郭公園は、そんな大人にも寛容で、今考えるとやばいおっさんなんだけど、
なんかすべてをハッピーな雰囲気にしてしまうのだった。


お父さんの会社の人たちは、すでに花見を始めていた。
私がしっかりと記憶してるのは
“ワカマツさん”
という人のこと。
ワカマツさんだったと思うんだよなー。
マツワカさんかも。
若い感じの男の人で、おそらくお父さんの直属の部下だったんじゃないだろうか?
名前を聞いた時に、すぐ頭の中に
“おそ松さん”が浮かんで、
ワカマツさんはおそ松さんに顔も似てたから、
すぐに覚えた。

私が大人になったからわかるけど、多分ワカマツさんは
“いじられキャラ”ってやつで、
子供の私もなんとなく、それを察知して
「ねーねーワカマツー」
なんて、呼び捨てで呼んでいた気がする。
本当に失礼なヤツ!
それなのに、嫌な顔ひとつせず、
本来ならどつきたいくらい腹が立つ子供のそーゆーノリにも、快く答えてくれて、
優しかったからすぐ好きになって、
たくさん遊んでもらったのだった。

たった一度、あの花見の日に、遊んでもらった大人の名前を(うろ覚えだけど)今でもちゃんと覚えていて、こうやって、何かに書き記したくなるくらいの思い出になってるって、すごいなぁ。

子供ながらに、
五稜郭の公園の桜の美しさに感動したり、
ワカマツさんに遊んでもらったことがたのしかったり、
お父さんの会社の人たちに
「何年生ですか?」とか
「可愛いねー!」とか言われて
特別扱いしてもらえた時の、喜びとか、
あとは非日常感とか、そーゆーのを感じていたのだと思う。

大人って優しいし、花見って楽しい、そして、桜ってすごく綺麗。
そんなことを知った春の日の思い出。

あの日の五稜郭公園が、真空パックに入れて冷凍していた魚のように、
鮮度そのままに急に今解凍されたのは
娘達が夫の職場の人のお宅で良くしてもらって、楽しそうにしていたからだ。

「パパってさぁ、仕事の人の前ではよく笑うんだねー!」
と、話す娘達をみて
どうしてあの日の花見が特別だったのかをもうひとつ思い出した。

家にいる時のお父さんとは違う、お父さんの姿を見ることができたのも、嬉しかったのだ。
顔を真っ赤にしてビールを飲んで、ケタケタ笑ってたっけな。
そして、嬉しそうに、私のことを紹介してくれたんだった。


夫の職場の人たちに会えてよかった!
子供達を連れて行ってよかった!

私の、初めての花見のことを思い出せたことが本当に嬉しい。

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