Waiting for daylight of Doha
00.Prologue
2022年11月20日、中東の地カタール・ドーハにてFIFAワールドカップが開幕された。
テレビの前で輝くように素敵な開会式に釘付けになっていた私は、まさか自分がこの素晴らしい大会を現地で観戦する日が来るとは思っていなかった…
2022年9月16日金曜日、私は定時から数十分立ったころにオフィスを飛び出し、成田国際空港へ向かい、イングランドのプレミアリーグを観るためにロンドンへと飛び立った。
あれからちょうど3ヵ月後の12月16日金曜日である今日、あの日とまったく同じ時間の同じ便でドーハへ向かっている。
3ヵ月前と全く同じことをしているなんて、まるでデジャヴだ。
あの時は私の25回目の誕生日プレゼントとしてプレミアリーグを観に行っていたのだが、今回はクリスマスプレゼントとしてワールドカップを観に行く。なんて贅沢なプレゼントだ。
01.Decision
この旅を決行しようと決めたのは前日の話だ。
まさか急に行けることになるとは思わなかった、と同時に、自分がこんなにもサッカーが好きなんだと改めて思い、ちょっと驚いた。
まさに『Crazy of Football』の言葉がよく似合う。
今大会が始まってから、ほぼ毎晩オンタイムで試合を観ていた。
流石に長期で仕事は休めないので、時差と闘いながら熱い試合を楽しんでいた。
また、弊社はクロアチア戦の日は翌日が午前休になり、祝日のない12月に突然サプライズ祝日が爆誕した。
特に、サッカー日本代表の試合には何度も心を動かされ、沢山涙を流した。
正直、今大会は決勝トーナメント進出は難しいと思っていたし、
強豪ドイツとスペインとの記念試合になればいいだろうと思っていた。
しかし、良い意味で期待を裏切るように何度もゴールを決め、勝利を収めたあの試合はドーハ行きの1つのきっかけになった。
日の丸を背負った彼らの激闘は日本サッカー界の歴史を忘れる国民はいないだろう。
日本だけでなく、他の試合もほぼ全部観ていたので、毎回感動するような番狂わせや、強者のメンタリティを見せつけられた流石と思わせるプレーに毎度毎度感銘を受けていた。
特に、同じアジア枠から出場していた韓国、サウジアラビアの番狂わせは本当に忘れられない。あの試合から粘り強さと諦めない気持ちは裏切らないことを学んだ。
また今大会はVARの判定も大きく試合を変えた。
賛否両論あるし、私はどちらかというと、導入された当初から反対派ではあったが、正直我らが日本もVARにより相当救われたところがあったので、これからは変化に柔軟に対応しようと思った。
サッカーに技術だけでなく『運を味方につけられる力』と『VARにジャッジされても良いようなプレーをする力』も同時に必要であることを学んだ。
そんな感じで、11月20日から毎晩19時から明け方6時まで狂ったようにサッカーを観続けていた予選を終え、決勝トーナメント以降は0時から6時の生活にシフト。
そのまま仕事をし終えて帰宅しまた同じようにサッカーを観る、の生活を繰り返し、日常をワクワクさせていた。
特に私はサッカーが好きな友人が多くいる上、普段はサッカーを観ないけれど、今大会は注目しているような人も多かったので、毎日誰かとワールドカップに関してLINEやSNS、電話で話をしていた。
また幸いにも私のトレーナーであり、マネージャーでもある上司も同じくサッカーが好きなので、毎朝出社しては前夜の試合の話で持ち切りだった。
さらに理解のある上司は、ワールドカップ参戦のために、フライト当日は空港でのリモートワークを許可してくれた。(以前もプレミアリーグ観戦のために長期休みを許可してくれた)
こんなにたくさんのひとととサッカーの話ができる日が来るなんて思っていなかったので、とても嬉しく、毎日幸せに過ごしていた。
毎回試合も楽しんでいるし、今回はこれでいいかなと思っていた。
ところが、準決勝を終え残り2試合になったとき、ふとこう思った。
『この素晴らしい大会期間を日本だけで過ごすので本当に良いのか?』
『この感動を現地で味わいたい』
『次回は48ヵ国参加になるからレベルの低い試合が頻発する可能性もある』
ただ、カタール入国にはHayyaというビザの申請、チケットの入手など必要なことが沢山ある。
※Hayya:https://hayya.qatar2022.qa/
実は、もしかしたらと思い、12月の頭にHayyaを申請していた。
ただ、出発当日になっても下りていない上、チケットは入手できていなかった。
気が付いたら12月16日。この日の21:55のドーハ行きの飛行機に乗れなかったら、試合には間に合わない。
既に正午を過ぎている。
急に決めたとはいえ、このままワールドカップを観に行かず終えてしまうのは絶対に嫌だと思った。
夕方16時ごろだっただろうか。
たまたまTwitterで3位決定戦のチケットを譲ってくれるという大学生の男の子を見つけ、取引が完了し私のFIFAのアカウントにワールドカップのチケットが送られてきた。
このチケット番号をHayyaに入力し、再度申請した。
が、待っても待っても申請が下りない。
焦って18時頃、カタールのHayyaお問い合わせセンターに何度も電話で催促して、ようやくビザが下りたのを確認できた。
気が付いたら出発まで3時間30分をきっていた。
通常、Hayyaが下りるのは5日程度かかる。
その他の国のビザが下りるのも当たり前だが1週間程度は要する。
今回かなり運が良く、たった数十分で下ろしてもらえたが、他では絶対通用しないので、皆さんは余裕をもって申請して欲しい。
(あの青汁王子でさえ2日かかっていたとのこと)
そんなこんなで、仕事が終わってすぐに電車に飛び乗り、
なんとかフライトに間に合ったのだ。
ちなみに、Hayyaが下りてから航空券を購入。
直前だったこと、また3位決定戦の関係で価格が一気に高騰し、
支払った額は約40万ほどだった……。
02.Dark Red
臙脂に染まった機体に、青い日の丸の入ったユニフォームを着た女が乗り込む。
ここから、私の人生初のワールドカップ旅が始まる。
13時間のフライトを終え、カタール・ドーハに到着。
3か月ぶりのカタールは、さらにワールドカップ色に染まり、盛り上がっていた。
時刻は午前4:30。
日が昇っていないし、何をしたらよいかわからなかったので、いったん空港でメイクをする。
もろもろの準備が終わり日が昇ったころ、
行動を開始しようと、今回の会場であるKhalifa International Stadium(ハリーファ国際スタジアム)の近くにあるAspire Parkというところで朝ご飯を食べることにした。
ほぼ誰もいないAspire Parkのベンチで朝日を浴びながらパンを食べてぼーっとする。
正面には今夜の決戦の地、ハリーファ国際スタジアムが佇んでいる。
まだ試合まで12時間以上あるのにも関わらず、
テンションが上がりすぎてアドレナリンが止まらない。
日本が勝てなかったクロアチアの真の強さをこの目で観てみたい。
アフリカ勢未踏のベスト4入りを果たしたモロッコの強さをこの目で観てみたい。
その勝負強さとは?メンタリティとは?戦術とは?サポーターの強さとは?
日本がいつか在りつくべき場所はどんな所なんだろう。
彼らから何を得て何を持ち帰ることができるだろう。
いろんなことを考えながら12時間を過ごした。
カタールの国土は11,427平方キロメートル(秋田県よりもやや狭い面積に相当)、人口は約280万人(外国人居住者を含む)の小さな国で、主要産業は原油と天然ガスというリッチ大国だ。
参照:https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/quatar/data.html
なので、今回のワールドカップは
①めちゃくちゃ移動がしやすい
└1日に2試合以上のはしごもできる
└Hayya保有者はQRコードを提示すれば公共交通機関(バス・メトロ)がすべて無料で利用できる。
※後日談、1日料金は6リヤル(約240円)とのことで、たいして得でもないとないことに気が付いた。長期滞在者なら最長7,200円得するが。
②基本的にどの施設、設備もきれいで整っている
└オイルマネーで潤っているカタールは、公共施設からショッピングセンター等のお手洗いまで本当にきれいだし、スタッフを多く導入しているため、どこで迷子になっても大体助けてもらえる。
現地に行った人は分かる「Metro this way」が良い例だ。
試合前、スタジアム近くのショッピングモールでモロッコとクロアチアのフェイスステッカーとフラッグを購入した。
03.Heaven
メイク直しをして完璧になった状態で、いざ、ハリーファ国際スタジアムへ。
スタジアムに入ると、DJがEDMをガンガン回しており、
学生時代をクラブで過ごしていた私にとっては最高の空間でしかなかった。
試合前も、アップ中も、入場の直前まで、
MC、サポーター、DJが最高の空間を創り上げてくれていたおかげで
まったく退屈せず1時間ほど過ごした。
壮大な演出とともに選手たちが入場した時点で涙が止まらなかったのは言うまでもない。
自分が求めていた光景はまさにこれだったからだ。
キックオフからの90分間、めちゃくちゃ良い内容のゲームが続いており、
サポーターの熱もすごく、心から感動し、楽しんだ。
これを求めて8,273km離れた地まで飛んできたのだと思うと、
自分のサッカー愛は計り知れないと感じた。
結果は2-1でクロアチアが勝利。
日本を倒した赤白チェッカーの集団が最後まで強さを見せつけた。
04.HEART
日本があの時勝てなかった理由も同時にわかった気がした。
彼らは、「勝者のメンタリティ」を持っている。
それは、どんな形でも絶対に負けないという強い意志と、
落ち着きを併せ持っているところだ。
日本の勝利を妨げたのは、まちがいなく「どうしよう」という不安感情に違いない。
サッカーは、11人とサブメンバー、監督、スタッフ、サポーター、全員で闘う。
当たり前だが、1人が焦るとすべてが崩れてうまく機能しなくなる。
実力や技術ではなく、チームを落ち着けたり、
安定させる「気持ち的な部分」をフォローできるメンバーが招集されるのは
このようなことを防ぐためだ。
4年後、いやそれ以前にアジアカップ、親善試合、オリンピック、ワールドカップ予選……これから超えるべき闘いは沢山ある。
改めて日の丸を背負って闘うべき人はどんな人か?
サポーターが求める選手はどんな人か?
サポーターのできることは限られているが、支えることは絶対にできる。
どんな時も、諦めずそばで共に闘うことはできる。
その期待を超える選手たちを、私たちは求めている。
今大会、日本代表は勝てるはずのないと言われていた強豪ドイツ、スペインを倒し、クロアチアに対しても延長後半戦までドローで乗り切った。
正直、私自身は薄っすらの希望と、現実味を持った期待をしていた。
恐らく同じような気持ちでワールドカップを観ていたひとは多かっただろう。
でも、彼らは期待を超えた。
いままでもベスト16、決勝トーナメントに進出することはできた。
だが、今大会ほど期待を超えたのは初めてだったと思う。
これ以上に感動と歴史を創り出せる選手たちが、
4年後に再集結することを望んでいる。
そして、私たちサポーター自身も、
強くいなければならない。
勝者のメンタリティはサポーターにも必要とされていることである。
これはカタールの地で触れて学んだことだ。
05.FROM HERE TO THE WORLD
ここまでつらつらと旅の思い出と自分の想いを綴ってきたが、
私は改めてサッカーを愛しているんだと気が付いた。
そして、ありえないくらいの行動力と、サバイバル能力があると思っている。
世の中、できないことは"そんなに"ないと思っている。
そんなに、の部分をあえて強調したのは、
当たり前だができないこともあるからだ。
ただ、7割くらいはできちゃうこともあると思う。
意外と、できちゃった。みたいな。
今回の私に関しては、前日に本当にワールドカップへ行くいう夢を、ありとあらゆる手段と戦法で24時間以内に叶えてしまった。
時間がないとか、お金がないとかそういうのは案外理由にならないなとおもっている。
言語の壁だって、いまではGoogle翻訳機能を駆使すればどうにかなる。
(正直、あまり使う機会がないためどれくらい役に立つものなのかはわからないが。)
ここまで読んできた皆さんにとっては、本当に何も参考にならない記事だったかもしれない。
だが、前日に願ったこと、思ったことは1日で叶えられることだけは覚えておいてほしい。
もちろん、強行突破した関係で、だいぶ無理に渡航した。
Hayyaのカスタマーサービスの方も相当困ったと思う。
是非、計画的に旅の準備をしてください…
でも、沢山の人に感動を与え、新しい景色を見せてくれて
カタールへ行くきっかけになったサッカー日本代表の存在は
今後一生忘れることはない。
4年後、日本代表と共に、私たちサポーターも成長して
次大会に臨めたら本望だ。
Ayaka Otty
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