見出し画像

MMTは思考をも変える

ゼロサム思考・プラスサム思考

ゼロサム思考とは

一方が得すると、もう一方が損するという考え方です。交渉や競争において、誰かが得をすると、誰かが損をするという場合で、得られる利益の総和がゼロになる状態をゼロサムと言います。
この考え方は、資源が限られている環境にあると生まれやすい。
財源は税以外あってはならないという国債を許容しない税財源論を前提にすると財源という資源は税収に依存してしまうと、「財源」という資源が限られるということになるため、どこかの予算を増やすならどこかの予算を削減しなければならないという競争的な考え方に至ります。

プラスサム思考とは

限られた利益の総和を奪い合うのではなく、全体を拡大することで、各々も同時に利益を得る考え方です。税財源論ではなく、国債を財源にするという考えであれば、予算のパイを拡大することができます。必要なものは労働力や材料の調達が可能な限り必要なことは全部できます。
この考え方は、創造性や協調性を発揮できるようになります。

MMTがどうやって思考を変えるか

MMTの概要

MMTの特に大きな特徴は、貨幣の起源や制度に焦点を当て、管理通貨制度の下で政府が独自に法定通貨を発行している国家を前提としている点である。

政府に通貨発行権があれば、通貨発行で支出ができる。政府が通貨発行で支出できるのだから、政府が自国通貨財源の不足や枯渇に直面することはありえない。さらに財源のために徴税が必要という理屈も成立しない。MMTは税の役割を財源として捉えておらず、これは主流派経済学の見方に挑戦するものである[10][11][9]。MMTにおける税の役割は、法定通貨による納税義務を国民や企業に課すことで、法定通貨の基盤的な通用力と流動性を確保し、さらに経済や富の分配の調整弁としてインフレや格差を調整する手段である[12]。つまり税の役割は財源調達の手段ではなく、通貨の徴収と消却を通じたマクロ経済政策の一つである。

また自国通貨建てであれば、政府債務がどれだけ増加しても、政府は通貨発行で当該債務の償還が可能なため債務不履行(デフォルト)には陥らない。この構造によって政府債務の償還能力に対する市場の信認も磐石なため、政府債務の拡大が信用リスクの拡大や通貨の信認の失墜につながることもない。したがって、通貨発行で支出できる政府は、自国通貨建て財政収支の均衡や黒字を政策目標にしたり、支出の際の財源を問題にする必要がない。政府は税収や債務残高に制約されずに、通貨発行を使った財政拡大や減税が可能である。

一方、自国通貨建てである限り、政府支出が税収や債務残高に制約されないからといって、政府が財政規律なく財政政策をすることや無税国家が可能になるわけではない。政府が国民経済におけるサービスの供給能力を無視して、通貨発行権を使った野放図な積極財政を行えば、供給に対して需要が無秩序に拡大し、インフレが加速していく。財政規律の基準は国民経済の有効需要に対する供給能力である。政府が財政支出の拡大や減税が可能なのは、需要と供給のバランスが適切に保たれインフレ率が高まりすぎない範囲であるというのが、MMTの理屈である[13]。インフレ率が低い状況であるほど積極財政の余地は大きくなり、インフレ率が高まるほど積極財政の余地は狭まる。したがって、主権通貨国における適切な財政は、常に税収や政府債務の大きさではなく、足元の国民経済の状態で決まる。

MMTは、自国通貨を発行することができる政府について主に以下のように説明する。
1.徴税や国債の発行による財源を確保する必要なしに、支出することができる。
2.自国通貨建ての債務で債務不履行を強制されることはない。
3.経済の実物的な資源(労働資本資源)の利用が限界に達した場合に発生する、インフレ率の上昇が財政の制約である。
4.徴税で貨幣を経済から取り除くことで、ディマンドプルインフレーションの抑制が可能である(ただし、それを実行する政治的意思が常にあるとは限らない)。
5.国債の発行が民間部門の資金を締め出すことはない(クラウディングアウトは起こらない)。

上記の見解のうち、信用創造とインフレの動きにおいて主流派経済学と対立しているわけではない。例えば、連邦準備制度(FRB)第13代議長アラン・グリーンスパンは、「アメリカ合衆国はいかなる負債も支出することができる。なぜなら我々は常に通貨を発行することができるからだ。従って、デフォルトになる確率はゼロだ。」と述べている[14]。しかし、MMT論者は金利の影響力に関して主流派経済学の見方には同意しない[15][16][17][18][19]

MMTの理論的バックグラウンドは次の5つにまとめられる[20]
1.最近の貨幣史研究を踏まえつつ、貨幣を国家の創造物と捉える表券主義の立場を取る。
2.主流派のマクロ経済学が金融政策を重視する傾向にあるのに対し、MMTはケインジアンの原点にたちかえり、財政政策の有効性を再評価する。
3.財政政策の方針としては(1940年代にアバ・ラーナーが提唱した)機能的財政アプローチを引き継ぐ。
4.インフレなき完全雇用を実現する政策手段として、「就労保証プログラム(JGP)」の導入を提唱する。
5.政策目標としては、雇用と物価の安定だけでなく、(ハイマン・ミンスキーの金融不安定化仮説を踏まえて)金融の安定化も重要だと考える。

また、MMTは以下のような事実解釈に基づいている[21]
1.政府の支出は租税収入によって賄われているのではない。政府の支出に租税収入は必要でない。それどころか、政府が先に貨幣を創造しなければ、誰も租税を支払えない。
2.政府は貨幣を創造できるのだから、支出を行う際にそもそも借入などする必要がない。したがって、国債は財源調達ではなく金利調整手段である。
3.貯蓄が政府の赤字をファイナンスするのではない。政府の赤字が貯蓄を創造するのである。
4.政府は、自国通貨建てで売られているものなら何でも購入する「支出能力」がある。
5.銀行は、集めた預金、金庫の中の現金、あるいは中央銀行に保有している準備預金を元手に貸出を行っているのではない。それどころか、貸出が預金を創造するのである。

これまでの主流な経済理論では、「政府の財政赤字が累積して政府債務が増大していけば、通貨の信認が失墜することによる通貨暴落や、クラウディングアウトと国債の信用リスク増大による金利上昇が発生し、それに伴う高インフレを招く」という見解が主流だった。そのため「国債発行の増大や政府債務の拡大は望ましくなく、基本的に税収の範囲で支出を行うべきだ」という均衡財政が主張されてきた。他方、MMTではこれを「法定通貨の発行権がない家計の制約と法定通貨を発行している国家の財政制約を混同している」と批判し、「財政赤字・政府債務の拡大が自国通貨建てである限り、主流派経済学者が主張する信用リスクや通貨の信認の問題は発生せず、有効需要が増大した場合にインフレ圧力がかかるのみ」という論拠で「政府は足元の国民経済を健全にするための財政運営に専念すべきで、財政赤字や政府債務の増大をまったく懸念する必要はない」と主張している[22]

MMT論者が主張する政府債務とインフレ率の関係については、MMTが登場する以前にも類似する主張は見られた。ジョン・F・ケネディ大統領の下で大統領経済諮問委員会委員を務めたジェームズ・トービン回顧録の中で、ケネディに政府債務の大きさについて経済的な上限を問われた際に「唯一の制約はインフレである」と返答し、ケネディもそれに同意したと記している[23][24]

税財源論による財源は限られているという前提を打ち砕く

税財源論は税収だけが唯一の財源だとしているため、財源を税とするため財源の制約を作ります。これが限られた財源を巡ってゼロサム思考が展開されるわけなのですが、MMTの理論ではこれが否定されて自国通貨建ての国債発行で財源を作れるということになるのですから、財源のパイを大きくすることができるということを意味します。これによってプラスサム思考に移行できるわけです。
これによってゼロサム思考からプラスサム思考に移行できるという有益な理論でもあります。

ゼロサム思考続けたくてMMTを否定する人もいる

共産党がMMTを否定し、税財源論に固執しているのは財政法第4条をクソ真面目に遵守しているのもあるのですが、このゼロサム思考を維持するために不都合な理論は許せないからでもあります。
そもそも共産党の政策はどこかの政策のための財源は他の政策を切ることで確保するという予算の付け替えによって実現しようというものではあるのですが、それは前提としてゼロサム思考にあるからのもので、必要ならどれもすればいいというプラスサムの発想にはなれない。
これは財源の制約を根拠にして対立構造を作ってその対立構造の中で勝機を見出そうという考え方がこびりついているのが問題ではないかと見ています。
本質的に憲法に基づきすべての国民のために尽力する政治をするのであれば、財源を理由に見捨てる理由を作ってはいけない。
共産党がこれに真摯に向き合わないのは税財源論によるゼロサム思考を背景に対立構造を作って一方に付くことで票を固めようという姿勢が見えるわけでもあります。
共産党が先鋭的なフェミニストと結託して男女間の分断を煽っているのも、女性の利益のためには男が犠牲になるべきというゼロサム思考の産物です。

トップ画像の話

メイプル楓さんの画像を使うことが割とあるのですが、結構主題とかみ合うものが多かったりしてありがたいです。

今回の「人は平和を望むのに、なぜ対立を繰り返すのか?」

これは深い問いでもあります。
対立を作っている要因が、ゼロサム思考にあるのではないかと思った次第でもあり、この投稿でもありますし、あたしがゼロサム思考に疑問を持つことができたのもMMTを介してプラスサム思考に移行できる要素を見出したからでもあるのです。

いいなと思ったら応援しよう!