ついに|ちいさなお店の記録 最終回
店名決めに苦戦し、そっと胸を撫で下ろした前回はこちら。
2023年12月13日正午。
スマホ片手に手を震わせ、「かみつれ文庫」の誕生日を告知する瞬間を迎えた。
遡ること1週間前、手元に届いたかみつれ文庫のショップカードを眺めながら工作をしていた。千代紙から作り出したのは、小さな封筒と小さな枠。ハサミとのりを使って作業したものを、次はノートの上で細かく動かしてみる。
というのも、告知動画は温かみのあるものにしたく、コマ撮り動画にしようと密かに決めていたから。
偶然観ていたテレビ番組で知ったコマ撮りアプリに助けられ、ひとつの動画が完成する。
その動画を、ぷるぷる震える右手を左手で支えながら、えいっとかみつれ文庫のInstagramに投稿した。どんな反応が来るのだろうか、そわそわドキドキが止まらなかった。
おかげで、その日は1日中Instagramに張り付いた。観てくれた人が1人増える度に喜んで画面に向かって手をあわせて「有難うございます、、」と拝み、ハートマークの反応があれば、踊って喜んだ。
するとその数時間後、ロゴをデザインしてくれた友人が、かみつれ文庫の制作事例の投稿をしてくれた。その投稿にある「制作への想い」を読み進めていくと視界がどんどんぼやけ、目頭は熱く、頬にはつうっと雫が落ちた。友人が、真剣に文章を練ってくれたことがひしひしと伝わり、本当に嬉しかった。かみつれ文庫と私を想い、応援してくれている人がいるんだと、初めて実感した瞬間でもあったと思う。
そして、仕入れた4冊の本がひとつ、またひとつと手元に揃い、その度に感謝のメッセージを出版社さんへ送る1週間を過ごすと、かみつれ文庫の誕生日が刻一刻と迫っていた。
2023年12月20日 12:00
「開店しました」の投稿と同時に、webショップを非公開から公開に切り替える。その指がまたもやぷるぷる震えていたことは想像に難くない。
そして1冊ずつ本の紹介の投稿をする。(その後現在の投稿は、本の写り方なども含めて再度投稿し直している)
まずひとつ目の投稿は恐縮ながらも、自分のZINE。「自分の作品をお店の最初の商品にしたい」という想いは、お店の準備中一度もブレなかった。おかげで制作過程にかみつれ文庫は振り回されたのだけれど、開店から約1ヶ月経った今も、これで良いのだとしっくりしている。
そして投稿した後の私の動きは、落ち着きを見せてくれるかと思いきや、告知した13日と全く同じだった。画面に拝んだり、踊ったりしながら、「おめでとう!」という言葉のシャワーを浴びる1日。なんて幸せなんだと思った。
しかしその反面で、もう逃げ場はないぞと、腹を括った瞬間でもあったのは、とても面白いと思う。
やりたいことをする。好きなことをする。自分の思いを貫いたからには、決断には責任が伴うんだと、誰かが言った言葉が身体の中心の奥深いところに沁み渡った気分だった。
こうして「かみつれ文庫」はついに誕生し、私は本屋としての日々を過ごしている。まだ始まったばかりの本屋ライフ。どんな出来事が待っていて、どんな景色に出逢っていくのだろうか。
予想できない日々も、内なる声に耳を傾けながら、ほっとひと息つく時間を大切に楽しんでいきたいと思う。
お店の始まりまで全5回のお話にお付き合いくださった皆さま、有難うございます。
ついに、ようやくかみつれ文庫は開店しました。これからいろんなことがあると思いますが、どうぞ宜しくお願い致します!
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▼かみつれ文庫note誕生しました!
お店のあれこれはこちらで綴っていきます。
https://note.com/kamitsurebunko
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