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isskau
耳に棲むもの
著者 小川洋子
講談社
ひとつのテーマを中心に描かれた短編集。
中に「棲むもの」が奏でる音。
中と音。
男は中に入れられたモノたちの音を聞く。
中に棲むものたちに新しい安全な場所と音色を与える。
男の耳に棲むカルテット。
砂場に埋もれたダンゴムシの死骸。
小鳥のブローチ。
カルテットとドウケツエビたち。
おもちゃのラッパ。
カルテットは男の涙を音符にして演奏する。
男は何を思って泣くのか、物語の中では語られない。
補聴器を売るためにあちこち渡り歩き、物を拾った場所に残る空洞を自身の足跡だという男は、どんな悲しみを抱えていたのだろうか。
序章のような第一話に続く4編がそれぞれ独特な世界観でカルテットのように響き合っているような本。
明るい暗い、のような分け方のしようのない、まさにカルテットの音楽。
不思議だけど魅力的な音楽でした。