アコスタ九州進出の期待と課題(後編)

 アコスタの母体は、貸しスタジオ大手のハコスタジアム。メインのシェアスタジオ事業は船橋、大阪、名古屋で展開している。そしてアニメイトのコスプレ部門のブランド、アコスとの合弁事業がイベントのアコスタだと記憶している。
 そのアコスタのイベントエリアはハコスタジアムの営業エリア、つまり三大都市圏だ。今回の福岡はハコスタジアムが無い地方都市への進出となる。
 福岡県下のイベントはそれ自体少なく、北九州のシェアスタジオによるイベント、北九州と福岡の中間に位置する鞍手町の廃校イベント、福岡市の今年中の閉鎖が決まった遊園地でのイベントの3つしか無い。
 そこに進出を果たすことになるが、ハコスタジアムの営業エリア外にこのタイミングでわざわざ進出するには、それなりの理由が有る筈だと読んだ。情勢次第ではキャンセルやリスケを強いられる上、日本三大都市の西端大阪からでも500キロ以上離れた福岡への移動費と云うコストが嵩み、コストだけがのし掛かる。
 その最大の理由として読んだのは、ハコスタジアム福岡の開業に備えたPRだ。尤もこれは、それならアコスタと同時に開業の告知をする筈だと知り合いから言われたが。
 例えば、今年末か来年あたりに福岡でハコスタジアムを開業する。このスタジオとイベントは、チケット購入の際に会員登録が必要な事実上の完全会員制であり、開業までに福岡での会員を増やし、且つアコスタを通じてハコスタジアムのPRをする、となると、その先行投資としては有り得る。
 一方、先の知り合いは寧ろ、ハコスタジアムの開業の可否の判断材料としてアコスタを使いたい、それなら辻褄は合うと言っていた。ただ、スタジオ無関係に営業エリア外に飛び出してくる理由は、やはり見当たらない。

 これは完全に憶測だが、その場合のスタジオ候補地はこの記事を書いている時点で3箇所思い浮かぶ。まずは来年の春にオープンする三井不動産系のららぽーと福岡。ハコスタジアム東京が入居するビビット南船橋の管理は同じく三井不動産系で、船橋での実績を元に入居契約をする可能性は有る。
 2つ目は今回のアコスタでは撮影禁止だが入店は可能なマークイズももち。マークイズは三菱地所の管理だが、池袋のアコスタでお馴染みサンシャインシティの株主に三菱地所が入っていて、その関係を上手く使う可能性は有る。尤も、今の時点で空きテナントは無いし、十分な広さが無いとダメだが。
 そして最後は、今回の更衣室に設定された建物、イーゾ。福岡ソフトバンクホークスがドームと共に管理するこの場所も、何処か空きスペースが有れば入居しそうな気がする。
 他に適した空きスペースを持つビルや、1棟丸ごと空いたビルで、且つアクセスがよい場所と云うのが福岡では思い浮かばない。

 これはまた別の機会に触れるが、アコスタは緊急事態宣言下でもイベントを開いている。それがテレビ局に盗撮されたのだが、理由は事業と企業の存続のためだ。
 イベントを開けない場合の補償はコスプレや同人については対象外で、収入は無いがスタジオないし事務所の賃料や人件費と云う固定費は掛かる。今までは休業でもどうにかなったが、最早イベントを強行して少しでも売上を出すしか存続の方法が無い状態にまで財務的に追い詰められていると云うのが判る。
 ハコスタジアムの場合は存続の為に、クラウドファンディングにも手を出した。だが、それでも限界が来たと言えるだろう。そして、他のイベントが緊急事態宣言下でも開くのは、今までキャンセルとリスケを続けてきた結果、これ以上落ち着いた時まで待つだけの資金力は無く、強行してでも稼ぐ必要が有り、それしか方法が無いと云う、同じ理由だ。
 イベントがなくなっても、コスプレや同人はその文化が途絶えるワケではなく、ただニュースタイルが生まれアップデートを重ねていくだけだろう。以前提案したダウンロード販売の普及もその一環だ。

 しかし、イベント会場とワクチン接種会場が屋外と屋内と分かれているとは云え重なったこと、感染者数が右肩上がりであること、ノーマスクでフィジカルディスタンスが近くなりがちなことに対する世間体……テレビ局による盗撮問題も有る……からして、タイミングがあまりも悪すぎる。
 正直、ロケーションそのものは特に面白くないのだが、そもそもイベントが少ない……特に福岡市内は全滅状態……ため、撮影にこだわるよりフォロワーとのオフ会感覚と云う需要は見込めた。ところが、今回は様子見で次回以降検討すると云う判断が相次いでいる。
 前編でも書いたが賢明な判断ではある。ただ、これで来場客が少なければ、その程度……採算性や赤字幅……によっては一度のみで福岡からの撤退やハコスタジアム進出計画の見直しも余儀なくされる。それはイベント側にとってもレイヤー側にとっても縁と運が無かった、アコスタとハコスタジアムなら東京や大阪などへの遠征で、となる。尤も、自身はそれでも飛行機や新幹線で行くが。

 初回が始まる前から窮地に立たされた感が有るアコスタ。今回は本業の都合も有るため、フォロワーに感想を聞き出す形で高みの見物といこう。次が有るなら行ってみたいが、その時はスタッフになりたい。サポートカメラマンとしてではなく、中の人として。

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