『新ハムレット』をより楽しんでいただくために①SCOTサマー・シーズン 桃太郎の会編
2024年、トレモロでは早坂彩演出の『新ハムレット』を上演します。
『新ハムレット』をより楽しんでいただくために、連載記事を書いて行きたいと思います。
『新ハムレット』は、シェイクスピアの『ハムレット』を太宰治が戯曲風小説(レーゼドラマ)として創作した作品。
この一文だけで情報量多いですよね。
それだけサブテクストの多い作品なんです。
また、2022年の初演から、利賀・豊岡という個性豊かな場所での創作を経て、この作品は育ってきました。
その過程についても、知っていただけたら思っています。
今回は、『新ハムレット』が初演を迎えた利賀村について、そして桃太郎の会について、ご紹介したいと思います。
演劇の聖地「利賀村」
演劇の聖地=富山県南砺市利賀村。
海外でも広く知られている劇団SCOTの本拠地です。
野外劇場や、合掌造りの劇場など、複数の個性的な劇場があります。
毎年夏には、フェスティバルが開催され、花火劇「世界の果てからこんにちは」をはじめ、SCOTの珠玉の作品を中心に上演が行われます。
ぜひ、一度訪れてみることをおすすめいたします……!
私は2013年、若手演劇人対象の研修で初めて利賀を訪れ、2015年、利賀演劇人コンクール2015の上演審査にて、演出作品『イワーノフ』を上演させていただきました。
それから、7年ぶりの2022年『新ハムレット』を利賀で上演することになったのでした。
2022年より始まった「桃太郎の会」
『新ハムレット』は、「桃太郎の会」の一員として、SCOTサマー・シーズンに参加しました。
まず「桃太郎の会」とは何なのか、詳しい説明を引用してみます。
説明文には、各地を拠点に活動されている名だたる演劇人の名前が並んでいます。
「桃太郎の会」の由来は、皆さんご存知のおとぎ話『桃太郎』からきています。
鬼ヶ島へ鬼退治をしにいく、あの桃太郎です。
「演劇には悪いものを退治する力がある!」
鈴木忠志さんのおっしゃるその強い思いの下に、次世代の日本の演劇人が、偉大な先輩演劇人の下で作品創造をするのが「桃太郎の会」です。
桃太郎の会2022 ラインナップ
2022年度の桃太郎の会は下記のラインナップでした。
【利賀】島貴之さん 『紙風船』
【静岡】石神夏希さん 『弱法師』
【豊岡】早坂彩(私) 『新ハムレット』
【鳥取】伊藤全記さん 『胎内』
各作品は、SCOTサマー•シーズン内で上演されると共に、各地で開催される演劇祭内でも作品を上演しました。
これらの作品は、各都市での滞在制作で作られました。
創作期間中、4都市からオンラインで繋いで、互いの創作について話す機会がありました。
各々なりに町や自然と共生しながら、演劇と向き合っているさまを共有しあい、個人的には非常に刺激を受けました。
ちなみに、私はこの夏、ずっと太宰治と『新ハムレット』のことを考えて過ごしていたので、今でも豊岡(というかなぜか特に城崎)を歩くと太宰治のことばかり想ってしまいます。
そんな、それぞれなりに、各地で演劇と向き合い、創作された作品が、SCOTサマー・シーズン内で一堂に会したのでした。
利賀山房で初演
『新ハムレット』は、演劇の聖地・利賀で初演を迎えました。
合掌造りの劇場・利賀山房の舞台は、観客として観ていても、背筋がすっと伸びるようなシンとした空気感があります。
利賀山房に入ってから1週間、劇場での稽古、調整の時間を積み重ねて、作品を深めていきました。
自身の上演の前後で、SCOTの上演を観たり、鈴木忠志さんのトークを拝聴したり、桃太郎の会の別演目を観たり、自然の只中で演劇と向き合い、座組みの皆と過ごした利賀での日々でした。
我々は豊岡での稽古のあと、利賀での本番を迎えたのですが、豊岡・利賀での稽古〜本番を通して、作品と腰を据えて向き合えたと思っています。
東京で、日常生活の只中で行う創作活動には、忙しなさと過剰さがどうしようもなく付き纏って離れない。
一定期間、豊岡で集中して座組みの皆さんと作品作りに取り組めた時間は本当に貴重だったと思っています。
桃太郎の会は、各地での創作・発表と利賀での発表を枠組みとしていますが、地域で創作することの厚み、魅力に改めて気づかされました。
桃太郎の会についてもっと知りたい方は……
桃太郎の会は、2023年も継続し、4都市で作られた作品が利賀にて発表されました。
来年以降についても、個人的にとても楽しみです。
『新ハムレット』が参加した2022年の桃太郎の会(自然と共生する舞台芸術ーー世界の未来に向けて)のダイジェスト映像がYouTubeでご覧いただけますので、ご興味お持ちいただけた方はご覧になってみてください。
次回は…
次回の『新ハムレット』をより楽しんでいただくためにシリーズは、豊岡での創作について書いていこうかと思っています。
また読んでいただけたら嬉しいです。
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