ある魂の物語 #1 プロローグ
その少女は土の上に跪き、長い睫毛の目をじっと閉じ、小さなお墓の前で一心に祈っていた。この世に生まれた時からの大切な相棒をなくしたのだ。一緒に風の中を駆け、時を刻んだ日々や、共に、輝く水を浴び、太陽に全てを委ねた瞬間を思い出して。この数日、たくさんの涙を流した。それまで、涙の存在など、考えたこともなかった。これは悲しみなの? 一緒にいるのに目に見えないなんて、なんて不思議なのだろう。
その時の彼女に知る由もないが、愛でできた彼女の涙はやがて宇宙に昇り、美しいクリスタルとなり、やがてこの地球に再び戻ってくるのである。
宇宙に戻った少女はかつて自分の涙であったクリスタルの成分達と出逢うであろう。そして、再び地球へ行く時の約束をする。
地球の法則によると、クリスタルになるには少し時間が必要なので、クリスタル達は、約束と共に先に地球へ行き、クリスタルとなって彼女を待つことになる。クリスタル達は決して約束を忘れない。地球へ赴く場合、人間として転生する場合のみ、一度約束を忘れてしまうのだ。
さて、ここで、クリスタル達との再会へ至るまでの道のりのために、今回選んだ彼女の転生への魂エッセンスを確認してみよう。
ー新しいことに物おじしない勇敢さ。(必要エッセンス=好奇心)
ー多くの人間と関わること。(必要エッセンス=共感能力)
ー良きパートナー相棒と愛を分かち合うこと。(必要エッセンス=持久力)
彼女の望みはシンプルであったが、ある存在が、彼女にたくさんのギフトを持たせて、地球に送り出した。そのギフトの使い道、使い方はクリスタル達と出逢い、気付き、学んでいく事になる。
そして今、地球に散りばめられたクリスタル達は彼女を呼んでいた。宇宙での約束を彼女に伝えるため。彼女はその持ち前の勇敢さと行動力、いつも外に向けられている興味と好奇心、そしてどんな逆境にも決して諦めない最強の持久パワーによって、クリスタル達の呼びかけに応える事になる。クリスタル達一つ一つが大切なメッセージを宇宙から運んできていることを忘れたまま。
彼女の名前は「NAO」
さて、どのように彼女がクリスタルたちと出逢い、地球の経験を積んで行くのかは次回の章にお任せしよう。