『還暦からの底力』がなぜ1位なのかを考える
本屋をぶらつくのが趣味なのだが、複数の書店で出口さんの『還暦からの底力』が1位になっているのを観測した。
Amazonでも講談社現代新書で1位、新書で2位になっている。
電車で広告を見かけたときから売れそうな本だなあと思っていたけれど、改めてなぜ売れているのかを推測してみる。
ちなみに中身は読んでいないので、あくまでタイトルと表紙から受ける印象だけで考えてみる。
出口治明ブランド
本屋に行けば必ず1冊は平積みされているのを見かける、出口さん。
昨今流行りの歴史、教養系の本をコンスタントに出しており、安定して売れている印象。
トンデモや過激なことは言わないし、語り口は柔らかく、夫婦別姓法案に賛成など現代的な考え方。よく考えたら、同じようなポジションの人っていないかも。
(個人的には、ライフネット生命の代表をされていた頃は若者から遠すぎない柔軟な考え方が好きでちょくちょく読んでいたけれど、最近は「ひたすら売れる教養本を出す人」みたいになっていてあまり手に取っていない…)
「還暦からの」 = ターゲットを明言
本を手に取るきっかけのひとつは、「自分ごととして捉えたから」だと思う。
タイトルの「還暦からの」は5, 6, 70代に刺さる。そしてそれは人口および(おそらく)本の購買層のボリュームゾーン。
新書という手軽さもあって、自分がその層だったら一度は手に取ってしまうだろうな。
「底力」 = 潜在能力への期待
「底力」という言葉のチョイスがとてもいい。
底にひそんでいて、いざという時に出る力。
あなたは今以上の力を出せますよ、まだまだこれからですよ、と自分への期待を持たせてくれる。
特に還暦近くとなれば、一般的には働き盛りは過ぎて老後へのソフトランディングを目指すイメージがある。
そんなところへまだまだこれからですよ、あなたにはもっとできることがありますよと言われたらとても嬉しいと思う。
人生100年時代
LIFE SHIFTをきっかけにバズり、すっかり定着した感のある「人生100年時代」だが、2, 30代の口からこの言葉を聞いたことはあまり無い気がする。
会話や雑誌の特集を見ていても、強く意識しているのはちょうど5, 60代以上の世代だという印象。
あまりに早くからソフトランディングを目指してしまっては、延びた20年分の過ごし方がわからない。まだまだがんばらねば。
そういうことを考えている人にもこのタイトルは刺さりそう。
うまいタイトルだなあ。