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第2回【まるっと大公開!VRChatアバター『藤守』ができるまで!モデリング編】


こんにちは!
この記事はVRChatアバター『藤守』を作る記事の第2回です。
まだ第1回を見てない方は、先にそちらを見てからのほうが楽しめると思います!↓↓↓
第1回【まるっと大公開!VRChatアバター『藤守』ができるまで!デザイン編】

第1回ではアバターのデザインを決めました。
今回はそのデザインを元に、3Dモデルを作っていきます!

3Dモデルを作る工程のことを『モデリング』と呼びます。

モデリングは個人的に一番楽しい工程ですが、一番時間のかかる工程でもあります。

3DCGに触れたことがない人にもモデリングの楽しさと魅力を伝えることが出来たら嬉しいです!
それでは、今回もよろしくお願いします!

2022年9月、スカルプト1

次から次へと横文字が出てきてスミマセン……。

『スカルプト』
とは、モデリングの手法のひとつで、まるで粘土をこねるように立体造形ができます。

藤守のようなリアルで細かな造形もスカルプトなら楽勝です!

まずは頭から作っていきます。理由はいくつかあって、

  • 頭は作り慣れているので、作業のエンジンをかけるのに最適だから

  • 頭を作っておくと身体のバランスを整えやすくなるから

  • 早くそのイケメンを拝みたいから

などがあります。
特にイケメンを拝むことで得られるメリットは凄まじく、眼精疲労を軽減し、やる気を向上させる効果があります。
モデリングは時間のかかる工程なので、最初からやる気を出せるようにするのは重要です。
ボケじゃなく、結構マジで言ってます。


球体の粘土をコネコネして、アゴや鼻、目のくぼみを作り、顔っぽくしていきます。

おおよそ、顔と呼べるものが出来ました。

今後も顔のバランスは調整することになるため、耳はまだ添えるだけです。
それにまだ眼球も入っていないので、わかりやすいように赤ペンで下書きをしておきます。
同じように鼻や眉のラインにも下書きをしておきます。こうしておくと「どこが重要なラインなのか」が一目でわかるため、後からバランスを調整しやすくなります。

3Dモデルをデザイン画と同じ角度にして、お互いの印象を見比べながら調整します。
「デザイン画と全く同じにすればいい!」というわけでもありません。
あくまで3Dモデルのための2Dデザインなので、デザイン画に印象が引っ張られすぎないように気を付けます。

とりあえずイケメンを拝むことが出来たので、次は胴体を作っていきます

胴体を作るときは、まずこのようにシンプルな形を仮置きします。
全体のバランスを確かめるためです。それに、こうやってはじめにパーツ分けをしておくと、後から身体のバランスを調整するのが楽になります。

身体のバランスを整えたら、だんだんと細かい造形をしていきます。

藤守のモチーフはヤモリなので、細マッチョな体系にしたいです。
偏見だけど、藤守はヤモリだったころが忘れられずに、コンクリートの壁に張り付いて外灯に集まる虫とか食ってそうです。
作者の言う偏見は、それはもう『設定』なのかもしれない……。

かなり身体っぽくなってきましたね。
わたしは筋肉や骨に疎いので、身体のモデリングをするたびに美術解剖学の本とにらめっこしています。

でも美術解剖学に載っている筋肉をそのまんま真似して作ると上の画像のように、

「あれ?ひょっとして……ボディビルとかやられてます!?」

って体系になってしまいます。
実際の身体はもっと脂肪があって、筋肉もこんなに角ばっていません。
そのため、もっと自然な印象になるように削ったり伸ばしたりして馴染ませます。

モデリングを始めてからここまで来るのに約1か月。
イラストも描いていたとはいえ、集中すればもっと早く終わっていました。反省です。

あっ、今更ですが、記事の見出しに付いている日付は、その工程が終わった日付を表しています。
つまり、この工程は9月に終わりました。

5月から製作を始めたと思えば、もう9月。夏もそろそろ終わりです。
でも、せっかくなら時間をかけて丁寧に作りたいし、仕方ないか!
12月の完成を目指して頑張ります!

2023年1月、スカルプト2


おわかりいただけただろうか。


12月どころか、気づけば年が明けていたのである。


理由を語れば、またもやマンガとイラストの『マルチタスク』で、全然こちらに集中できなかったからです……。

どうやらわたしはマルチタスクをすると効率が一気に悪くなるみたいです……。
今までも薄々感じていましたが、流石に今回のことで確信しました。
マルチタスク、ダメだお前は。

「マルチタスクから逃げなきゃ!!」

そして、このころからマルチタスクを避けて行動するようになりました。
合同誌のご依頼はすべてお断りし、Skebの募集も3月を最後にやめてしまったので、収入は激減しましたが、やっと本命であるアバター製作に集中できるようになりました。

そして集中して取り組んだ結果、前回のところからわずか10日でここまで仕上げることができました。
むしろ今までどんだけスローペースだったんだ……。

残念ながら集中していたせいで途中のスクリーンショットを撮り忘れてしまいました!
ですが、製作過程については先ほどお伝えした通りなので、これからは『こだわりポイント』を紹介します!

まずは手足!
ガッシリとした人間の手とヤモリの手をミックスしたような造形にしました。

足の親指が小さいのは、ヤモリの指を観察したらそうなっていたので、そうしてみました。

ウロコの表現は作っていて楽しかったのですが、全体的にウロコを入れたら『人外』というよりも『クリーチャー』に近い見た目になってしまい気持ち悪かったので、必要なところにだけに入れることにしました。

ちなみに、血管は自分の腕と脚を縄でしめて、それを観察しながら作りました。

裏側はこんな感じ。
指のヒダヒダはヤモリが壁に張り付くための吸盤です!かわいい!

手足の大きさは一般的なアバターと比べてやや大きめです。
VRChatでは手を動かすことが多いので、手が大きなアバターはよく映えるんですよ!

お次は顔!
顔の掘りを少し浅くしました。でも、そのせいでまぶたと眉の段差が一体化してしまって、まぶたと眉を区別するのに苦労しました。

あと、藤守の顔のイメージは『美しい』というよりは『耽美』です。
『耽美』を口で説明するのは非常に難しいのですが、私の解釈では『美しさの中にちょっとした気持ち悪さやグロテスクさが混ざっている』ってイメージです。解釈が間違っていなければいいのだけど……。
そのため、木の生え際の皮膚を盛り上げてみたり、まぶたを厚くしてみたり、私なりに耽美を表現してみました。
結果、ちょうどいい具合に落ち着いたと思います。

ちなみに、耳が長いのは藤の豆の『鞘』を意識しているんですよ!言われなきゃ分からないやつ!

目もとをクローズアップして見てみます。
実は、眼球の虹彩もすべて彫り込んだものなんですよ!

そして、目の周りにもワンポイントでウロコを入れました。
このワンポイントがいい『人外味』を出してくれています。

お次は服です!
服はわたしが着ている『作務衣』や『甚平』を参考にして作りました。
普段からわたしはそういう服しか着ないので、よく使い込んだものが手元にありました。
ヨレヨレになった生地の質感やシワなど、とても参考になりました!

腰飾りはこんな感じです。
藤ヅルとしめ縄を巻いて、そこにワンポイントでヒモをだらんと垂らしてみました。
重力に従ってヒモが垂れている様子や、ヒモ同士が干渉して引っ張られている様子を加えることで、3Dモデルっぽさを感じさせないようにしています

瓢箪は実際に栽培したものを参考に作りました!!
ですが、栽培する品種を間違えてしまい、あまり大きくならなかったし、理想の形にもならなかったので、最終的には全部無視して作りました。

瓢箪を本当に育てる必要があったのかはずっと疑問です。

あ、それでも3Dモデルに色や質感をつける作業では役に立ちましたね。

あと、細かいところですが、首飾りの勾玉を作るために、実際に自分でも作ってみました。これは翡翠ではなく、ただの滑石ですが。
「削った時にどこにどういった傷が入るのか?」などを観察しました。

わたしはヤスリを使ってツルツルになるまで磨きましたが、3Dモデルのほうは粗さが残る感じに仕上げてみました。
藤守がヤスリを持っているとは思えないので……。
それと、博物館で縄文時代に作られた翡翠の勾玉も見に行ってきて、これもなかなかいい資料になりました。

そして、藤守のアイデンティティともいえる『藤の花』なんですが、実はまだ作っていません!
スクリーンショットにちょくちょく写っているのは、九州大学『持続可能な社会のための決断科学センター』の鹿野雄一さんが公開しているフォトグラメトリデータです。
印象確認のために仮置きしています。使用させていただきありがとうございました!

花もそうですが、髪の毛もまだ完成していません。
こういった薄かったり細かったりする形状はスカルプトだと作りにくいので、またあとで作っていきます。
それに今回、花と髪の毛はいつもとは違う作り方をしたので、次回の工程で一緒に説明したいと思います。

これにて、スカルプトが終わりました!ですが、まだモデリングは終わっていません!!

2023年3月、リトポロジー


それでは、先ほど作った3Dモデルをもう一度作り直していきます!!!

「え?なんで?」と思うかもしれませんが、スカルプトで作った3Dモデルはとても重たいので、そのままだとVRChatのアバターとして使うことが出来ないのです……。

ご覧ください。これが先ほどまで触っていた3Dモデルの正体です。
拡大して見てみてください。この黒く見えるものはすべてポリゴンです。400万もあります。

以前、スカルプトを『粘土をこねるように造形ができる』と説明しましたが、それは単純にポリゴン数をめちゃくちゃ増やしたから、粘土みたいに造形ができるようになったにすぎません。なんという脳筋。

こちらの400万ポリゴンに対し、VRChatが推奨しているポリゴン数は7万以下です。
とてもじゃないけどこれをVRChatにアップロードすることはできません。

いや、正確にはアップロードすること自体は可能なんです。
しかし、そんなヤバいアバターでお友達のところに会いに行けば、間違いなくその場にいる友達全員を気絶(クラッシュ)させる『VR覇気』を披露することになるでしょう。
そんな残念シャンクスにはなりたくないので、これからポリゴン数を削減していきます。

ポリゴン数を減らしたり、ポリゴンの流れを整えたりする作業のことを『リトポロジー』と呼びます。

難しそうな言葉ですが、やることはとてもシンプル。
3Dモデルの表面を包むように、新たな面を貼っていくだけです。
時間はかかりますが、やればいつか終わります。

ですが闇雲に貼るのはNGです。筋肉の流れを意識して面を貼ります。
こうしておくことで動かしたときにきれいに動いてくれます。

淡々と、黙々と、面を貼って貼って貼り続けて、頭から足先まで全部包めたら完成です!

服や装飾品も同じようにやったら、リトポロジーは終わりです!

ポリゴン数は400万から6万まで減らすことができました!やったー!

「あれ?でも、最終的にこうなっちゃうなら、初めからこうやって作ったほうが良くない……!?」

「せっかくスカルプトで作った質感も、こんなにポリゴンを減らしたら消えちゃうよね!?」

と思われた方、いると思います。
でも大丈夫です!スカルプトで作った3Dモデルは、次回の『3Dモデルに色や質感を付ける工程』で大活躍するんですよ!

藤の花と髪の毛がまだですが、モデリングは一旦これで終わりです!!

第2回まとめ

今回、全体を通して気を付けたことは『3Dモデルっぽさを感じさせない造形』でした。
それは例えば、

  • 直線的な形状を避ける(ポリゴン感をなくす)

  • 連続した形状を避ける(コピペ感をなくす)

  • 重力を意識する

  • 左右対称を避ける

などです。
『SEKIRO』の3Dモデルを観察したら、このあたりを徹底して作っているようだったので、わたしも真似してみました。
作業量は増えましたが、結果的に上手くいったので良かったです!

そして、今回の反省点はやはり『時間をかけすぎたこと』です……。
「時間をかければかけるほど良いものが出来る」という意見を耳にすることがありますが、それはちょっと違います……。
実際は「時間をかければ良いものはできるけど、自分の実力以上のものはできない」です……。無職のわたしが言うので間違いないです……。
ちゃんとスケジュール管理をしようと思いました……。


では、そろそろ締めます。
今回はモデリングがどのようにして行われるのかを紹介しました。
見にくいところもあったかと思いますが、ここまで見てくれた皆さん、本当にありがとうございました!

次回は3Dモデルに色と質感をつけていきます!
それは無機質だったキャラクターに命が宿る瞬間です!!

次回もお楽しみに!!それでは、ばいちゃ!

第3回【まるっと大公開!VRChatアバター『藤守』ができるまで!テクスチャリング編】


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