厄年は、わたしのプレミアチケットだった〜滋賀・立木観音にお詣りした話〜
厄年、恐るるに足らず!
わたしは、実年齢31歳、数え年33歳の女性。
本厄の真っ只中だが、今、晴れやかな気持ちだ。
さて、なぜそんなにHAPPYなのか。お話ししよう……。
2018年を迎えてすぐ、初詣のために訪れた神社で、わたしは自分が厄年だと知った。厄年にあたる年齢を書き出した、大きな看板を見たのだ。
運気だとか、あるいはパワースポットだとか、そういうものを気にするタイプではない。だから、それを知って焦ったり落ち込んだりはしないけれど、知ってしまうとどうにも気になる。
「いつかそのうち、厄除けしといた方がいいかな」と思った。
……思ったまでは良かったが、のんびりしていて2月になっていた。
厄年、このままスルーしても構わないけれど……
「何かやっといた方がいいんでしょうか?」
会社の先輩たちに雑談がてら聞いてみた。
「そりゃやっといた方がいいよ!」
上の世代の方々はやはり、「何かやっとく派」が多いようだ。
そもそも厄年とは何だろう? 早速ネット検索してみる。
「厄災が多く降りかかるとされる年齢のことである」「陰陽道由来とされるものの、出典は曖昧である。しかし、平安時代にはすでに存在し、根強く信じられている風習である」
……あれ? 思ったより、起源はふわっとしている。
よく考えると、厄除けのお祓いとか奉納とかいう案内は、いろんな神社やお寺で見かける。仏教や神道の別に関わらない風習なのだろう。
そういうわけで、どうもそもそも、ふわっとした風習だ。
「何かやっとく派」の人に「なぜやっとく方がいいのか?」なんて聞くのはナンセンスだろう。
会社の先輩はオススメの場所を教えてくれた。
「立木さん、ってのがあるよ」
滋賀県大津市にある通称、立木観音。立木山安養寺。
滋賀に住むわたしにとってはほど近い。厄除けに由縁のあるお寺として有名らしいが、滋賀在住歴6年のわたしは知らなかった。
……ほう。どうせ行くなら、厄除けに専門性のあるところに行ってみたい。
よし、ちょっくら行ってみるか! と軽い気持ちで、早速次の日、立木さんにお邪魔することに決めた。
さて立木さん、立木『山』安養寺という名の通り、山の上に建っている。
滋賀県名物・琵琶湖から流れ出る瀬田川には、夏場にラフティングが楽しめるくらいの急流ゾーンがあるのだが、その急流が美しい渓谷を作っている。
まさにその渓谷を望むような形で、なかなか険しい立木山は、そびえ立っている。
つまり何が言いたいかというと……
お詣りする以前に、お寺にたどり着くのが大変なのだ。ふもとの駐車場に車を止めて、いざ石段を登る。
その石段の数、800段。
普段会社ではオフィスワーク中心で、特に運動もしていないわたしだ。
当然のごとく、たった20段登ったくらいで動悸・息切れが起こる。
「や、厄除け、遠いわ……」
『楽してお手軽に厄をどうにかできるなんて、甘いわ!』
立木さんは、どうやら厳しいコーチらしい。
渋々、山林の中に続く石段を、また登り始める。
何度もくじけそうになるが、登る人がいれば降りてくる人もいる、ということで、時々お詣り後と思しき人たちとすれ違う。
「こんにちは」
「こんにちは」
見知らぬ人と挨拶を交わし、何とも清々しい。
けっこう年配の方もいらっしゃって、その姿を見ていると「自分にもきっと登れる!」と、むくむく元気が湧いてくる。
登り続けて、何分目まで来ただろう。
「厄除け、厄除け……」
酸素が十分に脳みそまで回っていないのか、わたしは一段一段、ただそれだけ考えて踏みしめる。
今、わたしのモチベーションを、「厄」がキープしてくれていると言っていい。「厄」がなければ、とても800段、登れそうにない。
「着いたーーー!!」
ようやく、登り切ると、急に辺りが明るくなった。
山林を抜けて、開けた場所に出たのだ。
本堂と、ここを創設したという空海の像が見える。
空海はここで不思議な霊木を見つけ、そのとき自身がちょうど厄年だったこともあり、人々を厄から助けたいとお寺を作ったのだという。
早速、厄除け祈願!といきたいところだが、何せ800段、登りたて。
疲れた参拝客を見越したように置いてある、腰掛けに座って、一息つく。
しかも、日本茶、ゆず茶、昆布茶のポットが置いてあって、自由に飲んでもいいのだ!
飲んだゆず茶が体に染み渡る。それはそれは美味しかった!
『よくやったな、お前。よくやったよ!』
立木コーチが優しく褒めてくれているかのようだ。
その後は、受付で厄除け祈願の申し込みをした。だいたい10日後に、自宅にお守りを届けてくれるとのことだった。
これまで、身近にこんな歴史スポットがあるなんて知らなかった。
思えば、厄年のおかげで立木さんを知り、興味を持った。
普段なら諦めてしまいそうな長い石段にも、くじけず、登った。
もちろん、厄除け祈願をするのが当初の目的だったのだけれど、いつの間にかわたしは、そこまでたどり着く過程に夢中になっていたのだった。
これだけ頑張ったのだから、何かいいことがありそうな予感。
立木さんは参拝者のそんな気持ちを見透かして、山の上に建てられたのかもしれない。
……そういうわけで、
一生に数回しか訪れないそれは、わたしにとって、楽しい体験のプレミアチケットだった。何事も、きっかけだ。
800段を登りきったわたしには、厄年、恐るるに足らず!
晴れやかな気持ちで2018年を過ごせそうだ。
あ〜〜厄年が心配だ! というアナタは、ぜひ滋賀県大津市にある立木さんで、800段を登ってみてほしい。
厄除 立木観音 立木山安養寺
http://www.tachikikannon.or.jp