CanvaかAdobeか そんなことより気にしたいこと
ちょっと待って。今タイトル画像をAdobe Expressで作ったのだけれど、むちゃくちゃ進化してるじゃない……!!!!ちょっと進化しすぎてて引いたわ←
ごほん。
今SNS上で話題になってる論争をご存じでしょうか?ってもおそらく私の検索に合わせたフィルターがかかっているので、知らない人は知らないと思うのですが。そうです!結婚式に小紋の着物で行っていいか!です(違う
いや、これも着物警察&デシャバリーゼVS着物自由民権運動みたいな形で傍観している分には、面白いしいろいろな着物が見られるし勉強になるんですが。
違います。(あたりまえだ)
タイトルにあります「Canva」。要はCanvaを使ってデザインする人の事はデザイナーと呼ばないという風潮はなんなんだ?というもの。そしてAdobeのアプリを駆使して今まで通りのデザインを行っている人を「古い人・偉そう」という事で、謎の争いが起きています。(たぶん。私のトレンドだとそう)
Canva、実は今回東京学芸大学で開催されたTokyo Education Showというイベントのスタッフとして参加しており、ほぼほぼすべての印刷物がこのCanvaでの制作という縛りがありました。それは後援してもらってるから、というのがあるんですが。
なので半年以上付き合ってきて、なるほどこれはこうするのね、ほうほうこういう時はこうしたらいいのね、とか使い方はわかってます。あと、この経験から職場での制作物でもデジタルサイネージとか、RGBで使うデザインにはCanvaを使う事もでてきました。
が、さっきExpress使ってみて、ちょっと以前と使い勝手が変わっているのでこれは政権交代するかもしれないぞ(自分の中で)
んで、もちろん広告やグラフィックデザインの仕事の時はIllustrator、Photoshop、今は24ページものの冊子もやってるのでInDesign使っています。結局、Canvaは便利だし、素材探さなくていいし、体裁整えるのは取っても楽だからいいんですが、人様が作った素材をバリバリ使いたくない・色味に意味があってぶれるとマズい・文字詰めや袋文字などで「ちゃんと作りたい」・最終的に何かブツになるものには、向かないというのが私の使い分けの分かれ道です。
うーーん。言ってしまえば、Canvaは80%の物を作ることはできるんです。動画とか、文字情報の少ないショップカードとか、DMとかならいいかな。
とある先生がTESで自分で持ち込まれたチラシを置いて欲しいと持ってこられたので手に取ったときに、
・紙の厚さ、おそらく125kgだけどこれ90kgでよくね?
・わぁ袋文字汚い
・この何とも言えない行間、気持ち悪い
・きっとこの先生の写真、もう少し鮮やかなんだろうな
ってのを一瞬で見てしまったんですよ。で、Canvaだコレ、と。
TES公式のチラシも、CMYKでPDF書き出しして入稿しても、やはり色のニュアンスが変わります。せっかく決めたブランドカラーもぶれる。文字詰めが1文字単位でできないので、文言で改行してカーニングで調整したくてもできない。やはり、諸々の事を考えると、チラシやパンフはIllustratorやPhotoshopの「上位アプリ」を使ってやるべきじゃないかなと私は思っています。生成AIだって回数制限ないし。
あと、最後の決め手は「ブツになったときに、求めていたものができているかどうか」なんですよ、結局。チラシでもなんでも、手に取ったときに「お!いいねこれ!」と見て、隅々まで見て反省会すると思うんです。その時に、さっき上げたような袋文字だったり、文字詰めみたいな基本的なことよりも、もっと写真の使い方や色の使い方みたいなクリエイティブな方での反省会をしたいじゃないですか。基本的なことの反省会が始まっちゃう時点で、その制作物はせいぜい80点。依頼者の意図をもっと伝えたかったな、とか、もうすこし色数増やしても良かったな、とか、文字の級数押さえても可読性は取れたし、スペースもとれたな、とかそっちの反省会ができて、デザインの振り返りと積み重ねになると思うんですよね。
もちろんCanvaだって付属の袋文字が汚いので、レイヤーで下に線を太らせたものを敷いて作ることだってできます。でも、Canvaで作業している人でそこまでしている人、いるのかなぁ。だったらIllustratorのアピアランスで作業しちゃった方が絶対時短なんだよなぁ。
あとCanvaでの違和感は、配置画像についてのカラーモードや解像度についての言及がないこと。イラレ&フォトショだったら、絶対解像度と大きさは揃える、みたいなのがあるじゃないですか。要は印刷データを作る、という意識がないことなんですよね。ティーチャーキャンバサダー主催の講習会にもお邪魔した時に、そこを振ってみたんですよ。「CanvaはブラウザベースのRGB処理だけど、印刷に持って行くときは絶対CMYKにしなければならないはず。このあたりを意識して使っているのか?」と。答えられた人、いません。そりゃそうだ。学校の先生やってて印刷の版下データ作った事ある人なんか早々いないし、いたらAdobe使ってる。
RGB対応のオンデマンド印刷だってある!とSNSで書いた人に対し、「あれはオペレーターが色変換をしますよって意味で、RGB対応だからそのまま色がでるわけじゃない」と印刷所の中の人が答えてました。
基本的なことになりますが、RGBはR=レッド G=グリーン B=ブルーの「光」の三原色を混ぜ合わせると「白い光」になる原色を示します。
そしてCMYKとはC=シアン(蛍光ブルーぽい青) M=マゼンタ(ドピンク) Y=イエロー K=黒・墨 の「色」の三+一原色を混ぜ合わせると「黒」になる原色です。黒を入れないとドドメ色になります。
どんなに赤と緑と青のインクを練っても、白にはならないじゃないですか。だって光じゃないから。なので、RGBからCMYKへの色変換って、モニター上のデザインを、現実世界のブツに落とし込むには絶対不可欠な作業なんですよ。
私は、デザイナーか否かの分かれ道ってここだと思っています。
印刷データが作れるか、そうでないか。
どんなに素敵な、おしゃれでかっこよくて誰もが手に取りたくなるものをつくったとしても、それが制作意図と同じ色と形で手元に来なければ意味がないんです。
私自身年間24本の新聞広告、2つのノベルティ、その他雑誌広告などを作っています。内製化でコスト削減★かかるのは私の人件費(給与支払い済み★)だね!な状況で手掛けていますが、外に出す分責任は持ってやっています。ブツとして出てきたときにチェックして、ああこの新聞社さんのこの紙色だったら背景に濃い色を置かないと目立たないな、とか。ノベルティ作成の時にはもらう人がしまい込むんじゃなくて使ってもらうために、どうしたらいいかなとか。絶対に載せなきゃいけない文字情報が実際に掲載されたときにどれくらいの大きさ、可読性はどうかなどチェックします。
作って、渡して、あとはお好きにどうぞ、は一見相手に自由に使う権利を渡しているようで、実は無責任なんじゃないかなと思うんです。
Canva、CMもやっているし、エデュケーションは無料で使えるし、生徒のまとめに使わせている学校も多いみたいで、それは結構なことだと思います。使い方でおしゃれにできるし、素材は豊富だし、とっても便利です。
でも、ブツにするならCanvaでは賄いきれない部分があることを、ちゃんと知っておいて欲しいなと思います。
このあたりAdobeさんははっきりしています。Adobeのイベントで教育の担当の方とお話しさせていただく機会がありました。その時に「Expressにこういう機能はつけないんですか?」と聞いたら「DTPとか、プロとしてデザインを起こしたい場合は、それはもうIllustratorとか上位アプリを使ってもらう方が絶対にいいんです。Expressはデザインに対して分からない・苦手という人に気軽に扉をたたいてもらうものですから」と自信満々に言っていました。うん。そういう事なんだと思います。
今回Adobeは2025にアップデートされて、ほとんどのアプリに生成AIが入りました。いやーーー!便利!これは絶対手放せない!!アプリの代金、高いのは高いです。Canvaの無料、が魅力的なのも分かります。でも、プロで仕事をしたいのであれば、それは設備費と一緒です。ペイできるだけの仕事をもらえるように努力するしかありません。
Canvaか、Adobeか、そんなことより気にしたいこと。
それは「そのデザイン、最終完成形にしたとき、大丈夫ですか?」ということ。
デザインはDe+Signです。図で説明したり、自分の所有物であるマークを創ったりするところから始まっています。説明する=意図がつたわらなければデザインじゃないし、伝わるものが作れなければデザイナーではない。
使うアプリなんてどうでもいいんです。制作物に責任を持てる、それがデザイナーでだと私は考えています。