デス・ヘッド Death's Head
序 章
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二〇〇三年の東京は、春先に寒い日が多かったせいか、いつもの年より桜の開花が遅く、三月の末になってようやく蕾がほころびはじめると、人々は待ちかねたように花見にくりだした。
ここ武蔵野市でも、JR吉祥寺駅から井の頭公園へと続く道は一日中ごった返し、午後五時をまわってからは夜桜見物にむかうサラリーマンが加わって、たいへんな人出であった。
自転車に乗って駅前を通りかかった城戸加奈子は、その人込みを避けて車道に降りると、渋滞する車をスイスイと追い抜いて、公園通