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中三(NAKASAN)の記憶と記録

8月29日に、シソンヌのじろうさんのXで、

というつぶやきが流れてきて、
「なかさん」てまさか。。。
と思ったら、やっぱり中三だった。

私の祖父は、中三の会長だった。
歴史のことは正直そこまで詳しくは知らないのだが、
呉服店から株式会社中三になった時からの社長は祖父であり、
百貨店へと大きくしていったのも確実に祖父である。

小さな頃から夏休みには五所川原に遊びに行き、中三で買い物もした。
私が幼い頃は、街のデパートとして栄えており、
会長である祖父と店内ですれ違う時には、
私がだらしのない格好をしていると素通りもされた。笑

夏休みの福引券も楽しみにしていたし、
商店街もそこそこ栄えていて、夏休みだけ行く本屋さんや、
二本立てで見られる映画館なんかも、思い出に残っている。

私には中三は、祖父の会社であり、町の人たちに愛されていたという印象が強かった。

なぜ、「愛されていた」と感じることができたかというと、こんな出来事があったからだ。

祖父が亡くなった時、祖父は中三の会長以外にもいろいろな役を持っており
葬儀場に向かう際に、霊柩車とそれを追う親戚が乗るバスは
中三の前や、市場、商工会などをぐるりと立ち寄って行った。

祖父を乗せた車を見送るため、道路沿いに関係者の方々が並んでいるのをバスの中から見つめていると、涙を流して祖父との別れを惜しんでいる方々の姿が目に入ってきたのだ。
決して、「並ばさられた人たち」ばかりではなく、別れを惜しんでいる人たちがたくさんいる、ということを感じ、
いつもデパートの中や、町を、色んな人たちに声をかけながら歩き回っていた祖父の姿を思い出した。

祖父が亡くなった年は、私が社会人1年目の年で、
自分が起業をしてからは、何度も何度も、
もっと「仕事」や「経営」について話を聞いておけばよかったと思っていた。
叶うことは当然なく、祖母や母から少し聞く話はあったものの、
私の中にある祖父からの教えはほとんど増えることはなかった。

今回の破産は、民事再生後のものなので、私の親戚はすでに2011年で経営からは離れているから関係がないといえば関係がないのだが、やっぱり寂しいものだな、とは思う。

永遠に続くものはないとは言え、祖父の理念のようなものをもっと感じ、学びたかった。

そんな時に、Wikipediaを調べてみたら、知らなかったことが書かれていた。

「しかし、五所川原店で中村伸太郎会長が開いた勉強会をきっかけに大局的な見地からの考えを持つようになった商店主たちが自ら第三セクターを設立し、」

Wikipedia「中三」

とある。
この言葉が気になり、もう少しネット上で調べてみたところ、こんな記事が出てきた。

五所川原市の商業者らによると、中三の故中村伸太郎会長の存在も大きかった。株式会社化した当時から社長を務め、県内外への店舗展開を積極的に進めた人物である。

 一九九〇年代前半、五所川原市の近隣地域に郊外型大型店が進出するなど、商業環境は大きく変化。同市の商業者も対策を迫られた。中村会長らが先導役となり、五所川原店の会長室に地元商業者を集め、街の将来について勉強会を開いた時期もあった。

 このことについて工藤会長は「寺町、本町、大町などの商店主たちが参加した。各商店街は互いにライバル意識が強く、交流の機会も少なかったが、次第にまとまった」と振り返る。

 その場を契機として、消費者が市外へ流出してしまうことだけは避けなければならない―と、大局的見地から、エルムの街ショッピングセンターを市郊外に整備し、第三セクターで運営する発想も生まれた。

中心街のあすは・五所川原中三閉店(上)2006年1月20日(陸奥新報)


いろいろな見方ができるだろうが、Wikipediaと陸奥新報の記事を読むと、
祖父は「みんなで学ぼう」と対立する人たちをも集めてまとめあげ、一大プロジェクトを立ち上げていったようにも読める。
と同時に、そこで積極的なチャレンジをしたことで、
はじまりの地である五所川原店にも打撃を与えるという結果をもたらしたようにも思える。

真実は、よく分からない。
五所川原店が閉店した頃の母は、今の私より10歳くらい年上で、見えていたことがあっただろうが、経営には全く関わっていなかったので、詳しい話を聞く機会はほとんどなかった。でも知っていたことはあったはずだ。しかしその母ももういない。

ああ、私は何をしてしまったのだろう。
もっと広い視野で家族を見て、興味を持っているべきだった。
「経営」について経験のある人がこんなにも身近にいたのに。

そうだ。経営に関わっていた伯父に、祖父の話を聞いてみるということもできる。そうしよう。

何かをきっかけにちゃんと聞いて、残しておけることは残しておきたい。

とりあえず、後悔先に立たず。
ほんと、おそいよ、自分。

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