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”居場所”のデザインが重要な時代がくる

リノベーションプロデューサーという仕事柄、場所の使われ方を考える機会の多い私が、ずっとキーワードとして心の中に持っている”居場所”という概念について整理したnoteです。少しでも何かの参考になれば…

普通の人が普通に過ごす”居場所”のデザイン

私は普段、ReBITAという会社で使われなくなった建物の魅力を引き出し、現代に即した新しい価値を提案・実現する、リノベーションプロデュースという仕事をしています。

リノベーションは単純に建物を使えるようにキレイにする、というだけではなくてそこに新たな”活動”が生まれるように考え、しっかりお金も生むように企画するのがおもしろいところだなと思っています。

もう少し噛み砕いて言うと、
今まで使われていなかった場所が、誰かにとっての”居場所”になり、そこに”価値”が生まれるように企画する
という感じ。常日頃からそんなことを四六時中考えています。

例えば、

使われなくなった企業の独身寮
⇒多様な住民が一緒に生活し、日々の暮らしを楽しむシェアハウス

広さが中途半端で使いにくいオフィスビル
⇒みんなでシェアするコワーキングスペース といった要領。

そうした中、最近思うのは、普通の人が普通に過ごす”居場所”のデザインがこれからさらに重要な価値を持つのではないか?ということ。
なぜそう思うのか、少しまとめてみました。

”居場所”とは?

居場所(いばしょ)とは、居るところ、また、座るところのことであり、自分が存在する場所のことである。自分の持っている能力を一番発揮できる分野を指すこともある。出典:広辞苑 第二版補訂版第五冊

辞書によると、こんな感じ。

ここでは、
”普通の人がおしゃれぶったり、緊張し過ぎなくても等身大の自分で居心地良く、普通に過ごせる場所” という風に定義します。

それでは、なぜ”居場所”のデザインが重要になると考えるのか、その3つの理由を説明します。

理由①【オフィス以外で働く機会の増加】

本日(2019/4/1)から順次施行される働き方改革関連法でも推進され、厚生労働省令がこんなガイドブックを出したりと、何かと話題のテレワーク。

2017年と比較して、2020年には導入企業は約2倍、導入率も大企業、中小企業共に増加というデータも出されています

働く場所を選ばないため、育児中人材の活用やより柔軟な働き方という意味でメリットもある一方、カフェでは電源も取れず落ち着かない、コワーキングスペースはハードルが高くて利用し辛いという人は今後さらに増加すると予想しています。

そうした時に、カフェ以上、コワーキングスペース未満の、作業スペースとしての”居場所”が社会的ニーズを帯びていくと考えています。

理由②【人間の仕事量の減少】

AIの発達によって、現在人間が行っている仕事の半数がなくなると話題になりました。「仕事がAIに奪われる!」という論調もありましたが、私は、

「余計な仕事を人がしなくて良くなる→働かなくてもある程度の収入を得られるようになる→可処分時間が増加する」

と考えています(落合陽一さんが『デジタルネイチャー: 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂』で述べているところのAI+VC型とAI+BI型の2タイプに分かれるというのが感覚的には近いです)。

そうなった未来、人はやることがなくなり「何をしたらいいんだ?」となるのではないでしょうか。

これまでは仕事をしていれば過ぎ去っていた数時間が、急に暇になる。多趣味な人や交友関係の広い人はむしろ幸せですが、(私も含めて)世の中そんな人ばかりではありません。

そんな時に、心地よく時間を過ごし、適度に人と交流を持てる、家でもオフィスでもない日常の中の”居場所”を求める人は今後増加していくと考えています。

理由③【”Co”と”こ”の両立の重要度の高まり】

シェアハウスを事業として見るようになって7年、シェアハウスに住んだ2年の経験から、

人と何かを共有したり、一緒に取り組む
=”Co(Community、Communication)” 

と、

自分自身と向き合ったり、1人の時間を過ごす=”こ(個、孤)”

のバランスは人それぞれ違っていて、その調整装置としての”居場所”の役割は重要だなと思っています。

シェアハウスを企画する時も、プライベート=「個室(こ)」は当然設置しますが、コミュニケーションの場=「シェアラウンジ(Co)」の中にも、1人になれるようなカウンターやソファを設置してみたり、会話しなくても良いように距離感が調整できる大きなテーブルを置いてみたり、”Co”と”こ”の間のスペースを意識して企画してきました。

うまく説明しづらいんですが、群衆の中の孤独感というか、1人でいたいんだけど、周りに人は居てほしい感覚というか…わがままですが、そういう場所って大事だなぁと思っています。

人とのつながり方は0⇔1ではなく、グラデーションだなと思っているので、
つまみを30や70にした時にいたい場所(家でも、オフィスでも、カフェでもないどこか)=”居場所”のデザインは、今年考えるべき大きなテーマの1つです。


”居場所”はおしゃれ過ぎない方が良い

「”居場所”は家でもオフィスでもカフェでもない」と書きましたが、人によってはそのどれかかもしれませんし、最近話題の銭湯やスナックなんかも、要素を分解してみるとそれなのかなーと思っています(これに関しては別のnoteでまとめます)。

リノベーションや建築をやっていると、どうしても空間へこだわりが出てしまう(それ自体は悪いことではないし、むしろ好きな部分)んですが、実際、日々を過ごす場所がその人にとって”おしゃれ過ぎる”と疲れちゃうと思うんですよね。

心理的安全性の高い、自分にとっての”居場所”はおしゃれ過ぎない方が良い。それが現時点での”居場所”の1つの要素だと思っています。


その人の尺度で、心地よく快適に振る舞える場所。自分も含めた世の中の”普通の人”にとっての、そうした”居場所”にとって必要な要素はなんなのか?

まだ明確な答えを持っているわけではありませんが、これからもいろいろな事例を見て、実際の企画で検証し、世の中に提案していこうと思っています。

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