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フランスから、食関連ニュース 2020.11.04

今週のひとこと

お世話になっているカメラマンさん、吉田タイスケさんからのお誘いで、オンラインの「対話型美術鑑賞」を体験させていただきました。開催者は「EMIWA」チームの方々。「絵を観て輪」になり、自由におしゃべりをするというコンセプトから、名前を「EMIWA」にしたということです。「対話型美術鑑賞」は、子供から大人までが、アートのスペックではなく、表している色や形、物語を自分なりに感じ取って、自由に言葉を交わし合うという、美術鑑賞のあり方。2018年にニューヨークのMoMAが教育プログラムとして開発したヴィジュアル・シンキング・ストラテジーズ という鑑賞法だそうで、アメリカの小学校での実証も得て、世界でも教育現場や企業などでも採用されていることで知られています。答えのない問題を皆で共有して、多角的な視点を育てるという訓練となり、クリエイティブな力を育てることができると、ビジネスサイドからのラブコールが絶えないメソッド。さまざまな組織が取り組んでいますが、「EMIWA」では、特に、認知症の方やその家族に向けたプログラムを用意していらっしゃいました。チームの方は皆認定コンダクター。同時に介護福祉士でもいらっしゃり、2名のコンダクターの方の道先案内で、参加者は五人まで。オンライン1時間30分の教室で、それぞれの視点を自由に平等に引き出して下さいました。普段、鑑賞する絵は自分で選び、好きなものにしか対峙しないことが多いと思うのですが、選んでくださった絵を、じっくり眺めることから、正解のない、いろいろな答えを引き出すことができる、また他の参加者の意見から、自分が見つめていなかった視点に気づかされる。家族の方の助けがあれば、誰でも気軽に、このオンラインプログラムに公平に参加できる。このご時世、実物の鑑賞会から、ネットの開催に踏み切ったとおっしゃっていましたが、オンラインだからこそ社会貢献のできるあり方だと感じました。私自身、思考を希薄にしてしまうネットサーフィンをしばしOFFにしたいとも反省しました。https://emiwa.club/

その授業のなかで3枚の絵を鑑賞しました。最後の種明かしで鑑賞絵画のテーマの1つは黄色でした。その中にパウル・クレーの1930年の作品「兄弟姉妹」がありました。無論、授業ではその作者も年代も物語も示されず、感想を言い合います。私はその絵のタイトルに、どうしても「融合」を選びたくてしかたなく、その絵に離さない力のようなものを感じて、彼の思想を辿ってみました。「芸術の本質は、見えるものをそのまま再現するのではなく、目に見えないものを見えるようにする」というクレーの言葉は、サン・テクジュベリーも思い浮かべる名言として知られていますが、クレーの場合は造形的な思考に因るものでした。透視図法に至っては、消失点に向かう2本の鉄道線路を思い浮かべたとき、電車が手前に向かってくるとしても、逆方向でも、危なっかしい感じがすると、つく。自身の目は、静止しているわけではなく、常に動いている。そして客体にも主体にもなりうるということを教えてくれます。また、個性と解釈されるindividuelは、分割できない有機性であり、融合体なのだもと示唆しています。無理にでも引き離せば、その部分は死滅してしまう。最近叫ばれる「リベルテ/自由」や「ソリダリテ/連帯」には、どうしても、動体、客観にはなれない、主観や分断の力を感じてしまいます。

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