フランスから、食関連ニュース 2020.04.07
フランスにおける旬でコアな食関連のニュースを、週刊でお届けします。
⒈ 今週の一言
ロックダウンとなって3週間。それぞれが可能な限り自宅に身を潜めていますが、アルコール依存症、および離婚率が高まるのではないかという、冗談のようで冗談ではないような情報が多々流れています。静まり返った街中で見かけるのは、配達人。外出を禁止されている人が頼るのは、自宅まで運んでくれる配送で、食材を始めとした日常的な必需品であったり、あるいは暇つぶしかもしれない本など、様々。
ある早朝、必要な外出で街に出た時に、初老の男性がたった一人、スマートフォン片手にうろうろしていたので気になりました。観察していると、デリバリーの商品が乗った自転車バイクがそばにある。そうか、配達人か、と理解しました。今までの配達人といえば、体も鍛えた若者ばかりだったので、ショックでした。明日の生活に不安を感じて、慣れないデリバリーを始めたのでは。彼自身がコロナウィルスの危険にさらされる確率も高いかも知れないのに、優先すべきことが、彼にとってはこの仕事にあった。こうしたやるせない光景を見ますと、いくら国民を守ると保証を公言しているフランスであっても、弱者へのしわ寄せがさらに拡大していくのでは。その後の世界を今から考えて準備をしていかなければならない、と切に感じてしまいます。
今週のトピックスでも紹介していますが、Make.orgというプラットホームのあり方が、なかなか斬新で、今後の民主主義を支えていく発言力になるのではと注目しています。民主主義が弱体化していくという世の中を変えていこうと立ち上げられ、「若者にチャンスを与えるには」、「高齢者へのより良い環境を考える」、「より良い食生活のために」、「ハンディーキャップのある人の社会参加」など、取り組むべき社会的な様々な問題をテーマに立てて、企業から団体、民間に幅広くオピニオンを求めるというもの。現状に対するアンケート調査形式で、提案もそれぞれ出すことができます。「どうしたら、それぞれが文化に近くなると思うか」という多くの人々への問いかけはもちろん、「メディアは社会をよりよくできるか」なども。テーマによっては1万以上の提案が集まることがあり、その後には討論会なども準備。今や政府への提言、大企業が指針を立て直すのにも一役買っていて、見逃せないプラットホームとなっています。このプラットホームが良いのは、ニュートラルな立場を厳守することでもあり、「投票して、提案し、行動しよう」というスローガンの通り、より多くの人が参加していくことを望んでいます。
あるフードメディアでも、こうした方式を真似て、コロナ後のポジティブなレストラン業界を推進していくために、関係者たちはどうしていくべきかというアンケートをオープンしたばかりです。「政府に対しても効力のある、新しい組織を構築すべきか?」、「ホテル・レストラン、食全般に関する独立した閣外省を設けるべきか?」「その場合、誰が相応しいと思うか?」など。アラン・デュカス氏、全国ホテル・レストラン独立事業者団体ディディエ・シュネ氏、現農業食品省大臣のディディエ・ギヨーム氏、ローラン・ヘギ氏など13名、および他の名を挙げよという質問でしたが、今のところ、私も一票を投じた3つ星料理人のレジス・マルコン氏がトップを走っています。
*この度、フランスから、食関連ニュースは、公開ページ掲載とさせていただきます。このロックダウン下、クレジットカード更新時期に重なり、郵便のままらなぬ状況で、自宅で新カードの到着を待っている状況です。新カードの登録が完了次第、改めて連載ページへ移行いたします。ご迷惑をおかけし、申し訳ありません!
2. 今週のトピックス
【A】2020年度版「世界のベストレストラン50」中止の発表。
今年6月2日にアントワープにて開催されるはずだった、2020年度版「世界のベストレストラン50」ですが、中止が発表されました。世界的に困難に陥っているレストラン関係者へのサポートに力を入れるということです。また、ミシュラン・ガイドのインターナショナル・ディレクターであるグウェンダル・プレネック氏も、来年のガイド出版を憂慮するシェフたちからの声をリスペクトし、レストランが通常通りに稼働した時に初めて、正当で公平な方法で評価することを約束。同時に、レストラン経営者や料理人はもちろん、影響を受けている生産者たちの困難にも言及。この非常時にこそ、フランスのシェフたちの連帯が、世界で最もダイナミックであり、互いに力を合わせて戦う証となるだろう、との声を寄せています。
【B】ロンドンのホテル・リッツ 売却される。
ホテル王と呼ばれた、スイス人のセザール・リッツが1906年開業した、イギリスを代表する高級ホテルのロンドンのホテル・リッツ。ロイヤル・ワラントを受けるホテルで、130室に450人の使用人を抱えるなど、手厚いサーヴィスでも評価を得ています。1995年に英国の資産家で、メディアも所有する双子のバークレー兄弟が7500万ポンドで取得していましたが、おおよそ8億ポンド(100億円相当)でカタールの投資家に売却したばかりとのニュースが入りました。投資家の名前は今の所明らかにされていませんが、コロナウィルスによるロックダウン下にある従業員を支援しつつ、再開に備えたいと約束しているそうです。
【C】秋開催、国際食品見本市SIAL、世界環境の未来を考える食料について、民間調査を行う。
2年に1度パリで開催される国際食品見本市のSIAL。今年は10月18日から5日間に渡って開催されます。今回SIALは、プラットホームMake.orgと組んで、「世界的な人口増加に対し、どのような方策で体にも環境にも良い食料を約束できるか」という民間調査を行なっており、4月6日が締め切りで、多くのプロやアソシエーションなどの参加を仰いでいました。結果は会期に発表される予定です。
Make.orgは、より良い民主主義を実現するために、3年前に立ち上げられたサイトのプラットホーム。様々な社会問題に関するテーマを投げかけ、多くのフランス国民の言葉を調査し、より良い市民生活のための解決策を皆で探し、アクションに結びつけるというもの。多大なネットワークから、ヨーロッパ機関、政府、企業などへ指針構築へも導いており、様々な結果を出しています。
【D】クリームチーズ「キリ」で知られる「ベル」が、ビーガンチーズのマーケットに食指。
クリームチーズ「キリ」、フレーバーフレッシュチーズ「ブルサン」で知られるチーズメーカー「ベル」が、スタートアップ企業であるAll in Food Saint Nazaireの株を80パーセント取得しました。All in Foodはビーガンチーズを専門としNature&Moiなどの商品で評判を高めてきました。All in Foodの母体はもともとインダストリアルチーズの製造で知られていた企業でしたが、ビーガンに転身。「ベル」はビーガンチーズの需要に期待をし、2024年までにAll in Foodの全株を取得するとのことです。
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