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急性期医療に対して思うこと

 私、10/3で50歳を迎えました。
 半世紀の生涯のおそらく3分の1は病院にお世話になってるんじゃなかろうかと思います。
 そんな中で、最近何かと話題の急性期医療に関して思うことをつらつらと書いてみたいと思います。ノープランなので、とりとめもなくつらつらとタイピングしますから興味がない方はスルーで。あ、ノープランはいつもか。

急性期医療とは何ぞ

 簡単に言うと傷病の始まりで且つ全身が安定しない24時間看護を必要とする重篤患者に対する医療ということになります。病床数が多く、先端機器を導入していたりするので大学病院や総合病院の多くがここに当てはまると思います。
 ……とは言っても、分野によっては個人医院のほうが売りにするために最新設備を導入していることもあるので設備事情に関してはこの限りではありませぬ。あしからず。お金がどこに流れているか、で病院の設備の質は変わってきます。
 あくまで私の肌感であったり、急性期医療に関する書籍や現場の話を聞いた上でのことなので間違ってたら申し訳ない。
 個人的にこれまで両手両足では数えきれないほどの病院にかかりましたが、その中で最も設備が優秀だと感じたのは麻生飯塚病院(福岡県飯塚市)です。ソフト面(マンパワー)的にも優秀な人材がそろっており、総合診療科は全国でも十指に入ると言われる私立の総合病院です。
 場所と名前を見たらピンとくると思いますが、麻生太郎氏の一族が運営しています。
 逆に大学病院は設備面ではなかなかいい病院にあたりません。どこにお金が流れてるんですかね。
 ただ、どこの病院にも言えるのは慢性的なナース不足。ランニングコストを抑えるためなのか、単に人が足りないのかはわかりませんが、特に夜勤はあと二人増やしてもいいと思います。急変が多いのに一人で対応しなくてはならないのでとても気の毒です。
 そんな感じでばたばたしてる現場なので、当面の命が助かれば2週間ほどで追い出されます。いや、書き方が悪いですね。退院を促されます。
 事情はよく知ってるんですよ。急性期病棟の役割を考えるとだらだら置いとけないし、特にコロナ以降病床は常に満床に近い。だから命の心配が無くなったら「じゃ、退院で」となるのは本当によくわかります。

急性期病棟は万能ではない

 急性期病棟と救急病棟はよく混同されがちなのですが、全く違う代物です。
 大雑把な話になりますが心筋梗塞、脳内出血、脳梗塞などの緊急性の高い患者や突発的な事故などによる重傷患者が担ぎ込まれるのは救急病棟で、症状の重篤化、もしくは重篤な初期症状が通常の診察で診止められた場合に担ぎ込まれるのが急性期病棟。これ以外にもハイケアとかいろいろあるんですが、ややこしいので脇に置いときます。
 救急病棟は突発的な傷病に見舞われた患者さんを当直の医師が診察します。当然専門外の患者さんでも受け入れなきゃならないので、どうにもならない場合は専門医がたたき起こされることもしばしばです。耳鼻科のお医者さんが脳出血の手術なんてできませんからね。
 お医者さんは医学部で一通りのことは学びますが、あとは専門となる診療科で経験を積みます。だから、嘔吐と熱と下痢とで救急センターに行くと「僕、皮膚科が専門なんだよねえ」と言いながら困った顔をして「インフルの検査しとく? あと脱水症状が怖いから吐き気止めの点滴打っとこうか」みたいな会話はよくあることです。それで落ち着けばよし。落ち着かなければ一晩様子を見て専門医の到着を待ちます。
 では急性期病棟はどうなのか。それぞれの診療科で入院するので専門医がいないことを心配することはありません。ただ、落ち着いたと判断されればたとえ回復にほど遠かろうが退院せざるを得ないこと、そして”専門外の急変”には全く対応できないことがあるという懸念点が常に付きまといます。
 前者については、急性期病棟は二週間ほどの入院が大体限度なのでそれを目安に何とか病状を改善しようとしてくれます。改善しなくてもとりあえず何らかの目途をつけて転院なりかかりつけへの引継ぎなりはしてくれます。病棟の特性上、これは仕方のないことです。
 ですが、後者の場合は非常に問題です。
 具体例を出しますね。私の父はガンを患っていたことから胃などの一部の臓器がありません。胃がないということはどういうことかと言いますと、胃を切除した後は食道を十二指腸の切除面に付けるのではなく、十二指腸の切除面に近い部分に穴をあけてそこに食道の出口を縫合するという術式を行います。これは胃の切除術式では一般的なものなのですが、父のように臓器周りの筋肉が固くなってしまっていると少しでも形がある食べ物はつなぎ目に詰まって吐き戻してしまったり、腸閉塞を起こしてしまうことがままあります。そこで、普段は完全液状の介護食を経口摂取しています。そんな父が骨折をしたりで入院をすることがあります。大体重症なので決まった医大病院に入院するのですが、そこで問題が発生するのです。外科の病棟では通常食が出されます。父のカルテには胃がないことなどが記載されているはずなのに、です。そこで父は病院の栄養士さんと大喧嘩をして自主退院をするか、無理やり食べて(よく噛んで食べれば大丈夫ですと言われちゃうわけです)腸閉塞になり他の病院に転院ということになります。どうして転院かというと、父の胃の手術を施した病院でなければ対処ができないから、とのことでした。これにはさすがの私も「そんなことってあるの?」って大きな声を出してしまったわけですが。
 そんなわけで、父の例は少々特殊にしても、急性期病棟は万全で安心かというとそうでもないよ、という話で。

急性期病院とかかりつけ医

 急性期病院に紹介状なしに行くと別途手数料がかかるようになってずいぶん経ちました。この前後というのは本当に医療機関にとっては過渡期で、病床を削って規模縮小せざるを得ないクリニックが増えたり、逆に資金力があるクリニックは設備投資したりなど、様々な変化がいわゆる”かかりつけ医”にも表れました。特に少子高齢化ということで眼科は自院で白内障の手術ができる設備を整え、日帰り手術ができるクリニックが増えたのもこの頃のように思います。あくまで私の肌感覚なので特に統計などのソースはありませんが。
 昔は気軽に駆け込めた総合病院は夜間休日救急のみの利用に限定されたり、わざわざ近所の行ったこともないクリニックに診てもらってからとかなり回りくどいことになりました。
 少子高齢化の現代、お年寄りの憩いの場にされてはかなわないという意図はよくわかります。軽い風邪(と言っても馬鹿にできませんが)でもっと重病の患者さんを押しのけて来られても、という意図もわかります。
 急性期病棟としての役割を持つ以上、様々な病変に対応できる総合病院がいわゆる軽症患者をかかりつけ医にフォローしてもらう仕組みは大事だと思います。近年は個人のクリニックもより専門化しており、例えば内科でも呼吸器内科、循環器内科、消化器内科などの自院の専門分野を標榜するケースが増えてきました。また、設備投資が難しい個人のクリニックは少し規模が大きい病院と連携してCTやMRIのみ外部委託するというケースも増えているようです。私のかかりつけの呼吸器内科もそうです。
 ここまでくると、かかりつけ医と急性期病棟の境は非常にあいまいになり、入院できるかできないかの差しかなくなってくると思われます。検査を行う病院の規模は同じなのに紹介状をもらって受診するとまたそこで同じ検査を受けさせられる、というのもままあることです。私はこれについては強く苦言を呈させていただきたいと思います。一日何回針を刺されるのよって、慣れてても言いたくなります。特に看護師さん泣かせの血管をしてるので……。


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あやね@乙SUN倶楽部
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