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第7回 中山道・木曽路ウルトラウォーキング103kmに参加しました。

全国に数ある旧街道を歩いて旅する『街道歩き』。
歩くことを楽しむ人の多くが、一度はその響きに興味を持ったことがあるのではないでしょうか。

江戸時代に整備された五街道のひとつ『中山道』は、江戸の日本橋と京都の三条大橋を内陸経由で結ぶ500km超の道程。
比較的険しい山道が多く、さらに冬場には厳しい寒さに襲われることから難路であると言われます。

中山道の山を越え、12の宿場町を旅人気分で巡る103kmの旅路。

もう病みつきになってしまうくらい、たっぷりと堪能してまいりました!





【大会概要】


大会名 :第7回 中山道・木曽路ウルトラウォーキング
開催日 :2024年10月12日(土)~13日(日)
開催地 :岐阜県 / 長野県
距離  :103km
制限時間:30時間
※完歩率 77.3%

JR岐阜駅からJR南木曽駅まで、旧中山道を中心に歩きます。
市街地から徐々にゆたかな自然と宿場町の色が濃くなっていき、
ナイトハイクあり終盤にかけて激しさを増すアップダウンの連続ありとなかなか刺激的な本コースは、数あるウルトラウォーキング大会の中でもトップクラスの難易度を誇ります。

ただ、峠と宿場町を繰り返してゆく当時の旅人気分を味わえたり、風情ある宿場町の景観がとにかくすばらしかったりと、その過酷さを補って余りある見どころが詰まっているんです。

私は、もうすっかりその魅力の虜になってしまいました。


なんと、チャンネル登録者数180万人超えの有名YouTuber『カズチャンネル』さんも参加されていたようです。



【今回のウォーク方針】


・せっかくの中山道なので、しっかりと街道の雰囲気を味わうことを最優先にする。

・特にタイムは意識せず、上記以外の方針は当日赴くままに決める。

ある意味、「作戦を立てないことが作戦」とも言えます。
現地での偶然の出会いやハプニングだって旅の醍醐味なわけですから、ここは気ままにいきましょう。

それなりに計画的に歩けるようになってからの、あえてのノープランスタイル。
大会前日に緊張感ゼロなのははじめての経験で、このゆるさもコース進行によい結果をもたらしたように思います。



【大会当日】


1.スタート


当日朝の新幹線で東京→名古屋、在来線に乗り換えてJR岐阜駅へと向かい、8:30過ぎに受付を済ませます。

スタート時気温23℃、最高気温27℃。
日差しがキツい快晴ですが、2023年は雨天開催だったことを考えれば、多少暑くても気象条件は良いほうだと言えるでしょう。

参加者は約230人。
今回の参加者層を見ると、トレイル多めのコース設定ゆえか、他大会よりもトレイルランナー風の身軽なスタイルの方や若い方が多いように感じました。

開会式では、プログラムとGoogleマップ両方に誤表記があり、第1エイドが15km→20kmに変更になるとの案内を受けます。
5kmの差は地味に大きいですね。
また、ここで改めてウルトラウォーキング大会屈指の難易度である旨を聞き、チャレンジャーとしては期待に胸が躍りました。

さて、この先どんな難路が待ち構えているのでしょうか。

10:05 第2ブロックから旅がはじまります。

限定6個のオリジナルタンブラー、買っちゃいました(左下)



2.第1エイド 鵜沼の森(20km)まで


今回は珍しく後方からスタートし、どんどんペースを落として最後尾へとスライドしていきました。
ちょっとした目的であえてこの位置どりをしたのですが、特に元気な出だしにキロ14-15分ペースはかえってキツい。
今思い返せば、このとき私の前を歩いていたのが先述のYouTuberの方だった気がします。

2-3kmで最後尾縛りを終え、ここから第1エイドまでは『ほどよいペース』を取り戻すための追い上げの旅路。
まだ市街地中心のコースで、信号で足止めを食らいながらも8:00-8:20/kmで進み、エイド着までに全体ペース9:00/kmほどまで巻き返しました。


✔️加納宿 

✔️鵜沼宿

少しずつ宿場町の雰囲気が増してきた。



13:07 第1エイド 鵜沼の森(20km)到着。

この時点でたしか10位くらい。
塩おむすびときゅうりの一本漬け、定番セットをいただきます。



3.第2エイド ファミリーマート可児今渡店(30km)まで

『鵜沼の森』の自然あふれる道を抜けて国道へ。
木曽川に出ると、第2エイドまではほぼ川沿いのコースとなります。
美しい自然に触れて、おのずと足取りが軽くなりますね。


✔️太田の渡し
江戸時代、木曽川にまだ橋梁がなかった頃に「木曽の桟(かけはし) 太田の渡し 碓氷峠がなくばよい」と謳われ、『中山道三大難所』のひとつとされた場所。
現在は太田橋で難なく渡ることができます。橋のフォルムが美しい。


14:46 第2エイド ファミリーマート可児今渡店(30km)到着。

エイド間が10kmと短いのであっという間。
3種類の中から選べる菓子パンを1ついただきます。



4.第3エイド 細久手公民館(50km)まで


第2エイドを出てすぐ、本来は右折すべきところを勢いよく直進してコースロスト・・・。
後々確認すると、往復約2kmのロスでした。
ノー警戒で進んでしまう安全そうな道こそ危ないです。

遅れを取り戻すべく向こう約5kmはややペースを上げ気味に、気づけば数名を追い越していました。


✔️伏見宿


✔️御嶽宿


徐々に自然が増えると楽しくなってきますね。


オレンジ色の陽に包まれて郷愁を感じていたら、あっという間にナイトハイクに突入です。
先を行かれる方が歩き慣れているようすだったので、勝手にペースを合わせさせてもらい慎重に進みました。


18:21 第3エイド 細久手公民館(50km)到着。

エイド食はカレーメシ、カップヌードル、そばから選べたため、温かいそばをいただきます。

コース上唯一の屋内エイドですが、靴の着脱が億劫に感じて外のベンチで過ごすことに。
第4エイドまでは全然休憩できる場所もなく、本格的な山道を突き進むことになるため、この先の戦いに備えてきちんと休んでおきましょう。

ここでは長めに20分ほど滞在し、少し先に出られた方の後をついていく形で出発しました。



5.第4エイド ファミリーマート恵那高校前店(70km)まで

しばらく舗装路の坂が続いたあと、石畳の路へと足を踏み入れます。
整備された石畳かつ乾いた状態のため、思っていたよりも歩きにくさはありません。
(雨の場合は、また大きく難易度が変わることと思います。)

ヘッドライトのみではやや心許なく、ここで手持ちのサブライトが大活躍しました。
ヘッドライトでやや遠くを、手持ちライトで足元やスポットで見たい場所(標識を探すなど)を照らす。
夜道をある程度の速度で歩きたい方は必携だと思います。


基本的に、標識はライトが点滅して目立つ仕様になっていますが、標識とGoogleマップを慎重に確認しながらゆっくりめに進んでいきます。
(安全面でも、気持ちの面でも夜の山道でのコースロストは絶対に避けたいと強く思い、おかげで完璧に歩き通せました。)


✔️大湫宿

完歩後、他参加者の「野生動物に追いかけられた」などの声を耳にしましたが、私は特に気配を感じることもなかったです。
ただ、獣臭がする路はたしかに存在しますね。ワイルドなコースだ。

ひとたび慣れればワクワク感のほうが強くなり、結構クセになる楽しさでした。

この区間では、慎重に進んでコースロストを防ぐ・できるだけ複数人で行動するなど、安全を第一に考えるのが無難かと思います。

細かなアップダウンが続く山道を抜け、徐々に市街地へと戻っていきます。


✔️大井宿

人里に戻ってくるとホッとしますね。


22:07 第4エイド ファミリーマート恵那高校前店(70km)到着。

温かいお茶漬けをいただきます。
山道の終盤で数名追い抜くことになり、この時点で3着でした。

今回は自分比でラクなペースで進んでいるため、特に疲労感なし。
「平地ならゴールまで8:30/kmペースで歩き続けられる」と思える程度の余力があり、ひそかに手ごたえを感じました。



6.第5エイド 馬籠宿じんばバス停横(91km)まで

しばらくは比較的フラットな市街地や住宅地が続きます。
お茶漬けを食べた直後で若干胃の違和感を感じましたが、概ね9:00/kmペースで足どりは軽く。


✔️中津川宿

約80km地点。
いよいよ大きな見どころとなる観光地の宿場町にたどり着きます。
趣深い景観に、しばらくの間数歩進んでは写真を撮っての繰り返しでした。

なお、中津川は栗きんとん発祥の地で、
朝8時以降の通過となるように調整し、老舗の名店『川上屋 本店』の栗きんとんを食べるという案もありました。


✔️落合宿

約85km地点。

落合宿を抜けて指定コンビニを過ぎると、まもなく舗装路の急登が待ち構えています。

坂の傾斜を写真で伝えるの、かなり難しい。

さすがに面食らうほどの激しさでしたが、脚に余裕があったおかげでさほど苦には感じずにクリアです。
なお、ここまで来ると基本的に日中の通過を想定しているためか、標識にライトが取り付けられていないので見落とさない集中力が求められます。

ふと空を見上げると、普段東京では拝めないような美しい星空が広がっています。これもまた暗い道中の心を支えてくれました。
スマホのカメラでは収められないのが残念。



さあ、坂を乗り越えた先には『馬籠宿』が待っています。

この先の『妻籠宿』とあわせて木曽路を代表する観光名所で、コース中の大きな見どころでもあります。

目の前に広がる風情ある街並みは、まさに江戸時代にタイムスリップしたかのよう。
さらに、日中とは打って変わって観光客のいない夜中だからこそ味わえる特別な静けさ。
この雰囲気が、どうにも”ひとりさすらう旅人気分”を掻き立てます。最高ですね。

街をひとりじめする感覚、これはぜひ一度実際に歩いて味わってみていただきたいところです。
(ただ、写真を非ウォーカーの知人に見せたところ「不気味に見える」と評され・・・ゴーストタウン感は確かに否定できない。)


山の尾根に沿っている急斜面が特徴の馬籠宿。
エイドに向かう間も石畳の坂が続きますが、すばらしい景観に吸い込まれるようにして脚が前へ前へと進みます。


01:37 第5エイド 馬籠宿じんばバス停横(91km)到着。

春雨スープの提供がありましたが、パスして先に進みました。



7.ゴール 南木曽駅(103km)まで

エイドを出て2-3km進むと『馬籠峠(標高790m)』の標があり、いよいよ長野県南木曽町に入ります。
ゴールが近づいてきました。

もはや見慣れてきた「熊注意」の看板を横目に、下りのトレイルを進んでいきます。
熊除けの鐘もいくつか見かけましたが、深夜に使うのが適切なのかどうか迷い、結局一度も鳴らさずじまいでした。


✔️妻籠宿

坂を下っていくと、コース中最後の宿場町にたどり着きます。
妻籠を抜けてJR南木曽駅までの道のりを示す看板が現れれば、残りはあと3km。

淡々と歩き進めていき、03:40 楽しい旅は終わりを迎えました。
お疲れさまでした!


タイム    :17時間35分13秒
順位     :総合3位・女性2位
累積獲得標高:2,176m(Garmin計測)


・・・アクトレップ社の主催大会は万年3位説?
(※過去参加した3回ともすべて3位)

名古屋方面行きの電車が05:47始発のため、着替えを済ませたあとは駅の待合室にてのんびりと過ごしました。
1回乗り換えで名古屋まで約2時間、帰りの移動には少々時間がかかりますね。
名古屋駅到着後は、食事とプチ観光をして新幹線で東京へと帰りました。



【雑感】


・市街地の平坦ロードコースから徐々にトレイルや坂が増えていく変化に富んだコース設定で、最後まで飽きることがない。
スリルのあるナイトハイクや困難を乗り越えた先の宿場町など、印象に残る展開が多く、
「噛めば噛むほど味が出る」良いコースだと感じた。
完歩後数日経ってもなお余韻に浸り続けている
、いや、むしろその魅力を再認識することになるのは他大会では味わったことのない経験だ。

・アップダウンの多いコースにもかかわらず、完歩後まだ数十km歩けそうなくらい脚の調子がよく驚いた。
「色々な筋肉を使うため、ずっと平坦な道を歩き続けるよりもかえって疲れにくいのでは」という意見を見かけて納得。
それに加えて、登りではペースを上げない分適度に足休めできる(?)ことがプラスに働いたのだと思う。

・過去、完歩後同じくらい好調だったのは7月に参加した「日本平と駿河東海道ウルトラウォーキング 105km」。
こちらも3つの峠越えを含むタフなコースで、私はアップダウンがあるコースが得意らしい。

・上記の脚の好調さ・最後尾から無理なく歩いてキレイに3位まで追い上げたこと・夜間のコースロストなしで歩きこなせたこと。
これらを踏まえて、一番うまく歩けた大会と言っても差し支えない。

・当初目的の「街道の雰囲気を満喫する」は果たせたと思う。
400枚近く写真を撮り、X(旧:Twitter)にて適宜道中の実況も行うことができた。

・速さと引き換えに見落としてしまうものがあるのは事実だが、観光と距離(ペース)が両立できるギリギリのラインを攻めるのが自分の『観光ウォーク』の基本姿勢なのだと思った。
どちらも欲張りたい。もっと精進する。

・ナイトハイクや夜の宿場町の楽しさを存分に味わってもらいたく、個人的に、ある程度脚に自信のあるウォーカーさんにはぜひ夜明け前ゴール(20時間切り)を目指していただきたい。

・同じ気象条件であれば17時間切りは十分狙えると感じた。
でも、チャレンジャーとしてはより過酷な雨の中山道に挑んでみたいとも思う。

・最後まで足を残せる自信があれば、比較的平坦な前半40kmを飛ばし気味に進んで貯金を作っておくと他と差がつくかも?

・制限時間30時間をフル活用して、日中の中津川宿以降で観光や食べ歩きを満喫する参加スタイルも間違いなく楽しい。



灼熱の8月に開催された、本コースの続きを下諏訪駅まで歩く「第1回 信州木曽路12宿ウルトラウォーキング 100km」。
私は不参加でしたが、来年(7月開催予定)は必ず参加すると心に決めました。

諸般の事情を考慮せずに一参加者の願望を述べるなら、2ヶ月連続開催で中山道を満喫できたらいいのにな。
・・・できることなら、もうすぐにでも歩きたいくらい。

中山道、おそるべし!

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