COLD警察庁特捜地域潜入班 鳴瀬清花
■ 感想
過去に起きた未解決事件から共通項や不明な点を探し出し、それらが同一犯の仕業である可能性を検討したり、不可解事件の真相を解明したりする、警察庁特捜地域潜入班。
今回の端緒となるのは、怒るとヤマンバのように恐ろしい万場さんの見事な洞察力と閃き。「死亡診断に係る講習会」に参加した万場さんは、「偶発性低体温症による死亡の診断」の講義で見せられた凍死体の資料写真に違和感を覚える。その違和感とは別の勉強会で見た凍死体と同じ位置にある丸くて赤い痣のようなもの。
他にも同じ痣を持つ凍死遺体があれば何かが見えてくるはずと調べていくうちに、事件だけでなく地域潜入班メンバーの過去の謎とも繋がっていく。全国の凍死体を徹底的に調べていくうちに何体かの遺体に同じ痣が見つかり、その遺体の発見場所の近くでは必ず雪女のような女性の目撃情報が。これは祟りなのか、それとも連続殺人事件なのか。
幼少期に昔話で読んだ「雪女」。雪女の存在の怖さというよりも、雪女を包む得体の知れない「何か」に恐ろしさを覚えたことを今でも鮮明に覚えている。子供心に今までに読んだ幽霊話とはお化けとしての質の違う怖さを感じ、雪女に対してはトラウマに近い体感があった。
大人になるまで読み返せなかったけれど、今回雪女の物語を思い返してみて、「哀しい」という激情に恐怖を覚えたんだと今更ながらに腑に落ちた。諸説ある雪女の話で、雪女が「雪女郎」とも呼ばれるその背景に、家の主が屋敷へ呼び込んだ女郎さんを「雪女」が出たと苦しい言い訳として使ったという一説もあり、一気に興ざめはしてしまうものの、これが土着由来の面白さでもある。
怪異としてだけでなくいろんな側面を考えさせられるこのシリーズとチームへの愛おしさが増した今作の本質は、愛。小泉八雲の「雪女」のように、強い想いを抱え泡沫に消えていく無償の愛の狂おしい程の激しさが胸に焼き付いた。
■ 漂流図書
■怪談 | ラフカディオ・ハーン
著:八雲 × 画:ヤン・シュヴァンクマイエル × 翻訳:平井呈一。最高過ぎる組み合わせで生まれたこの本が刊行された日の興奮を今も鮮明に覚えている。
身を引く女の凍えるような焔が身を焦がす、「雪女」を久しぶりに開いてみよう。