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青屍 警視庁異能処理班ミカヅチ


■ 感想

「青屍 警視庁異能処理班ミカヅチ」内藤了(講談社タイガ)P240

青屍 警視庁異能処理班ミカヅチ」内藤了(講談社タイガ)P240(ISBN)9784065373408

「怪異を救わず祓わず隠蔽する」を仕事上のルールとして動く警視庁異能処理班ミカヅチが、放置することで後の業務に多大な支障が出る為、可及的速やかに怪異の元を絶つと判断する事件が発生する。

猟奇的な事件に見える連続殺人事件の凶器は中世拷問器具アイアンメイデンに始まり、異端者のフォーク、ファラリスの雄牛、濡れ衣の針と、凶悪な拷問処刑具揃い。誰が一体何の目的で拷問器具を使った殺人を行っているのか。そしてその殺人の傍らには、ヨハネ黙示録の四騎士・蒼ざめた馬に乗った第四の騎士が。

前作では日本の呪物で魅せてくれたミカヅチの今回は、中世の拷問器具を巡って聖書や異端審問の過去とも繋がり、あの世とこの世を繋ぐ多層世界を自在に駆ける広目天としての使命を背負った広目くんの役割も深みを増す。

人には見えない世界が見える目を持ち、知りたくもない感情や苦しみを抱えながら寡黙に耐えてきた広目の、語らない強さと優しさに胸が締め付けられる。言葉として紡がれる想いばかりではなく、秘めることで大切に支えとなっていく想いは強い。広目に課せられた大きな使命が完了する時、孤独が少しでも癒える形であって欲しいと願ってしまう。

人間を契約で縛る悪魔の目的のヒント的なものや、まだ謎多き怜くんの背後への伏線?と思われる箇所も点在するが、「サタンも光の天使に偽装する」との一文に不安が増す。悪魔と人間の子「ネフィリム」は既に生まれているのか、それとも目的のひとつなのか。

「人を騙して寝返らせるのがサタンの本性」であるならば、そのサタンは誰とどう繋がっていくのか、小さな少女の姿で「覚えておけ」とぞっとする高笑いを残して消えた少女は誰なのか。ああ、次巻が待ちきれない。

■ 漂流図書

聖書 | フェデリコ・バルバロ

ヨハネ黙示録や悪魔の系譜も登場した今作。続くシリーズよりを楽しむためにも聖書もしっかりと読みたい。

理解を深める為にイラスト530図、歴史地図142図も収録された本書でじっくりと学びたい。

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