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LGBTQ事情#7 平田高校の先生たちの理解の深さ。

 10月、出雲市の平田高校で、「LGBT研修会」と題して、先生方にお話をする機会を頂いた。

 私はLGBTの専門家でも何でもないので、何が話せるだろうかと悩んだけれど。このコラムでひたすら自分の記憶や感情を掘り起こして文字にすることで、新しい気付きを得たり、過去の自分の苦しみを慰められたりととても充実している。「自分を深く知ること」が他者の理解につながるのでは? このコラムを書きながら私が今一番思っていることを伝えた。

 へらへらしゃべる私の話を、先生方が真面目にメモしていて・・・。いったい何をメモしているのか謎だったが、なんとか終えることができた。

 この日は、平田高校の先生だけでなく、他校の先生や島根県の教育委員会の方々もいた。「こんなもの作ったんです」と教育委員会が作成したカラフルなLGBTの資料をもらった。性的少数者への対応について、具体例が挙げられていた。

 制服は?トイレは?合宿などでのお風呂はどうする?カミングアウトされたらどうする?

 当事者ではない先生からしたら、マニュアルのようなものはありがたいと思う。だけど、なんとなく違和感があった。

「この内容や対策は、どのように決めたんですか?」と聞くと、「自分の知り合いの当事者と相談しながら作りました」という。続けて、「ですが、これが全ての人に該当する答えではないので、そこが難しいところなんです」と言われて、安心した。

 私が感じた違和感は、まさにそのことだった。これが完璧なLGBTのマニュアルだと思ってほしくなかったから。それをわざわざ言わなくても感じてくださっていたこと、こんなに理解の深い方が教育委員会で取り組んでくださっていることにうれしくなった。

 マニュアルがないと困る人もいるが、これがあることで勘違いや視野が狭くなる恐れがあるなど、作成時の悩みを聞くことができ、深く共感した。私なんかが声を上げるよりもずっと前から、きっとこうやって理解を深めてくださっていたのだと思うと、頭が下がる。

「教員は答えを教えるのが仕事だから、LGBTに関しては、答えが一つじゃないから難しい」
という言葉も印象的だった。先生が1人で何十人もの生徒と向き合うわけだから想像するだけで難しい・・・。私自身、友達よりも、先生の言葉に影響され、頑張れる時もあれば傷つくこともあった。だからこそ感じる、教師という職業の偉大さよ!

 帰り際、ある先生から、こんな質問をされた。

「気になる生徒がいて、LGBT関連の本で紹介したいものがたくさんあるんだけど、それはおしつけにならないだろうか」

 その時は、気の利いた答えを出せなかった。今も考えているが、何が正しいんだろう。分からない。そうだ12月だし。靴下にこの問題を入れておいてクリスマスまでいい子でいよう!北欧はLGBTにはとっても優しい地域ですしね。サンタクロースならなんて答えるんだろう。こっそりクリスマスを祝うカップルたちがいつか堂々とクラッカーを鳴らせる日が来る事を祈って。少し早めのメリークリスマス!

2020年12月1日火曜日
山陰中央新報 掲載分
写真 いしとびさおり

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